日本大学 生物資源科学部
食品経済学科
Department Food Economics

「食」で人を幸せにしたい

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高橋ゼミ詳細

地域経済論研究室 紹介
〜持続可能な“農”と“食”、そして私たちの社会の未来に向けて〜
【私たちの暮らしと“食”を取り巻く環境】
「地域経済論研究室」は、“農”と“食”の問題に広く注目しながら、それを通じて、様々な地域経済・地域社会の問題を研究しています。 具体的には、「持続可能な農と食」のために必要な「持続可能な社会、経済、そして組織のあり方」を考えることを目標にしています。
食料自給率が40%を割り込み、輸入食品等で様々な問題が起こる私たちの“食”の実態。一方で進む環境破壊と、厳しい農業生産現場の現状。その背景には、全てを「お金」に換算し、市場を通じて全ての問題を解決しようという、経済・政策・社会のあり方と世界的な動き(グローバリズム)があります。
もちろん、市場による効率化など経済的な効果や「成果」は否定できませんが、それに目を取られ議論や政策を単純化したとき、人々の間から助けあいのつながりを弱め、不安をあおって人々を競争に駆り立てる傾向を強めることになります。こうしたあり方が、“食”の安全への不安のみならず、社会保障など生きる上で必要な地域社会の「セーフティネット」を破壊し、ひいては「格差」をはじめとする今日の様々な問題を引き起こしている根源にあると考えます。
その中でも、この研究室の大きな課題としてあるのが、「高齢化の進む地域農業の様々な問題」です。皆さんはまだ実感が湧かないかもしれませんが、日本は今、急速に高齢化が進んでおり、65歳以上の高齢者の割合は、すでに総人口の約2割を超えています。こうした中で、食料の需給問題から雇用の問題、さらに福祉に至るまで、地域経済のあらゆる場面で様々な影響が出てくるものと思われます。 この高齢化により、食料生産の「川上」である中山間地域などでは、農業の担い手が不足し、農地が荒廃することなどが問題となっています。
そうした中で、様々な階層の人々が支え合って生きていくための方途は何なのか、そのための具体的な政策や地域組織(農業協同組合など)のあり方はどのようなものであるべきか、それを持続させていくためには、どのような取組みが必要なのか。。。といったことを幅広く考えていく必要があると思います。
基本的には、“農”と“食”の間をつなぎ持続可能な社会をつくるためには、中山間地域の農業や、農業が環境を支える機能への評価、「多様な担い手」への支援や高齢者福祉など、市場では評価できないもの(非市場的価値)に、もっと大きな光を当てるべきであると考えます。
さらに、「持続可能な社会」において最も必要なことは、平和な社会づくりと環境問題への取組みです。これらの課題解決を抜きに、「食料自給率の向上」も実現できないと思われるのです。
【調査研究の方向性】
では、具体的に地域ではどのような取組みが行われているのでしょうか。ここに注目していくことが、当研究室における調査研究のポイントです。
全国各地に目を向けると、資源と組織を有効に活用しながら、地域社会と経済を活性化させているケースが数多くあります。たとえば、高齢者の方々が、都市でサラリーマンとして勤めた後故郷に帰り、力を合わせて生き生きと農業に取り組むことによって、地域の農業を活性化させているという例が増えています。これによって仕事の場が拡がり、若者の就業機会がつくられるケースも多くなっています。
また、都市住民の間に「安全な食」と「豊かな緑の中での安らぎ」を求める声が高まる中、新鮮で安全な農産物が安く購入できる「農産物直売所」が大変な賑わいをみせるほか、「農作業体験」「農家民宿」など都市・農村交流の「グリーン・ツーリズム」も広がっています。さらに最近では、市場システム(民間サービス)で賄いきれない「高齢者の助けあい活動」などには、「地域通貨」を活用して、自主的な取組みを効果的に展開している例もあります。
こうした新しい活動や動きの特徴と意義は何か、その組織的なポイントは何か、その取組みはどこまで社会的に一般化できるのか。こういったところに着目しつつ、地域に入って実態調査をしながら研究していくことが重要になります。私たちの生存を揺るがす現在の様々な問題が拡大しないよう、明日の社会を担う皆さんとともに、現場の実態を把握し、様々な地域経済の問題をみつめながら、新しい「持続可能な社会と未来」を考え、勉強していきたいと思います。
【ゼミの活動紹介】
以上のことから当ゼミでは、1年から4年まで、現場に入る「フィールドワーク」を重視していくこととします。具体的には、以下のとおりです。
1年次「食品経済基礎演習」(前期のみ)では、まずは大学生活に慣れてもらい友人をつくることを第一にしながら、同時に「大学のゼミ」のイロハを学ぶ場にしていきます。基礎的な入門テキストを利用して、私たちの「食」がどこから来て、日々どのようなものを食べているのか、それを支える農業や環境問題の実態がどのようなものであるのかについて、包括的に学びます。また時間を見て、農場見学会なども行います。
2年次の「フィールドリサーチ」では、何より「農村の風に吹かれて農村生活を体験する」ことを重視し、農家民泊(分宿/ファームステイ)をしながら、本格的な農作業体験、農家調査を実施します。過去2回の実施では、農村・農作業など全く縁のなかった都市生活者のゼミ生たちも、驚きながら、しかし感動を持ってそうした「土とふれあう体験」を楽しんでいました。卒業後、食品産業等に進路を取ることが多い当学科の学生諸君にとっても、コメや野菜等がどうやってできるのか、農村・農家という生産現場の実態はどのようなものかなどを見聞し、実体験しておくことはとても大切なことだと思います。
3年〜4年次ゼミ(「食品経済演習」)では、3年次の前半においては、“農と食”に関する共通となる文献・資料を定め、参加者が輪番で報告を行い検討することとします。後半では、それぞれの報告者が自ら選定したテーマに基づいて発表し、参加者全員で意見を述べあい討論していくというスタイルを基本とします。また合間を見て、ゼミ全体での現地見学会やリクリエーションなども実施します。
4年次は、卒業研究(卒論作成)に向けての指導を重点的に行います。文献・統計の分析だけでなく、ゼミのモットーである「現地調査」を踏まえた実証的な論文作成が期待されます。
これまでの卒論テーマの例は以下のとおりです。
環境から考える日本の農業の重要性に関する研究
地場農産加工と地域特産物に関する研究〜駅弁を通じた地産地消の実態分析を中心として〜
日本人と和菓子
日本の食料自給率に関する研究
近年の大豆市場の変化とそれを取り巻く環境に関する研究
埼玉県における地産地消の現状と展望
新規就農と新規学卒就農者についての研究
日本における小麦生産の重要性に関する研究
学校における食育への取り組みについて−広島県での学校農作業体験を中心として−
高齢社会を取り巻く食についての研究
米粉の可能性についての研究−新潟県の事例を中心として−
地域の食についての研究−茨城県産小粒大豆と水戸納豆を事例として−
食品のトレーサビリティシステムと品質保証についての研究−パルシステム生活協同組合連合会の事例を中心として−
都市近郊農家における農業構造の変化についての研究―仙台市近郊の事例を中心として―
【卒業生の主な就職先】
JA神奈川県信連、JA越後ながおか、生活協同組合ドゥコープ、エーコープみやざき、日立電線ネットワークス、中村屋、スターゼン、ユーハイム、シャトレーゼ、三浦藤沢信用金庫、亀有信用金庫、三島信用金庫、中南信用金庫、水戸信用金庫、百瀬、しまむら、システム情報、玉川大学、東京都小学校教諭、など (2009年3月以降で進学先を含む) 
※ゼミのより詳しい内容・活動報告は、研究室オリジナルHPとブログをご覧ください。
研究室HP http://www.geocities.jp/tiikikeizairon/index.html
研究室ブログ http://blogs.yahoo.co.jp/iwashizemi

教員紹介

氏名: 高橋 巌(たかはし いわお)

教員紹介詳細

ポスト: 准教授
学位: 博士(農学)
担当科目: 地域金融論、グリーン・ツーリズム論、フードシステムインターンシップ
所属学会: 日本協同組合学会、日本農業経済学会、日本フードシステム学会、
日本国際地域開発学会、日本村落研究学会、日本農村生活学会、
日本有機農業学会
社会活動: 日本有機農業学会 理事・常任編集委員、農林水産省 優良繁殖雌牛促進事業及び馬産地再活性化緊急対策事業 審査委員会委員、(社)日本共済協会 共済理論研究会委員、(社)日本共済協会 『共済と保険』編集委員、(社)全国酪農協会 酪農研究会専門部会委員
主要業績
[01] 「高齢社会における持続可能な地域農業のあり方」『桜門春秋』120号, 2009年
[02] 「グローバリゼーション下における総合農協の現段階−共済事業の問題を中心として−」『文化連情報』368号, 2008年
[03] 「協同組合とソーシャル・キャピタル−総合農協の特質との関連で−」『協同組合研究』第27巻1号、2008年
[04] 『明日を目指す日本農業−Japanブランドと共生−』(共著)幸書房、2007年
[05] 「有機農業の地域展開とその課題−埼玉県小川町の取組み事例を中心として−」
『食品経済研究』第35号、2007年
[06] 『農に還るひとたち-定年帰農者とその支援組織-』(共著)農林統計協会、2005年
[07] 「地域社会におけるセーフティネットと共済事業」『共済と保険』第46巻11号・12号、
2004年
[08] 『高齢者と地域農業』家の光協会、2002年
[09] 『農と食とフードシステム』(共著)農林統計協会、2002年
[10] 『新時代のJA管理者』(共著)日本経営協会、2002年
[11] 「地域農業における高齢者営農の役割とその意義−大分県日田市大鶴地区の
事例を中心として−」『開発学研究』第11巻第2号、2001年
[12] 「過疎山村における高齢者農産加工組織の重要性と維持・存続条件−高知県池川町を事例として−」『村落社会研究』第7巻第2号、2001年
[13] 「地域農業と高齢者に関する研究の動向と今後の課題−1960年代以降を中心
として-」『総合農学』第47巻第1・2合併号、2000年
[14] 『JAの高齢社会への貢献』(共著)家の光協会、1998年
[15] 『フードチェーンと食品産業』(共著)筑波書房、1995年


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