麻酔科 Anesthesiology
麻酔科では伴侶動物、生産動物、海獣類あるいは展示動物の麻酔や痛みの管理を担当しています。動物では手術だけではなく、CT検査、MRI検査、内視鏡検査あるいは放射線治療など、多くの検査・処置のために全身麻酔が必要となります。麻酔科では個々に適した麻酔薬を選択し、麻酔中は呼吸循環機能を常に看視・治療することで、より安全で質の良い麻酔管理を実践しています。
また、手術の際には想定される痛みに応じた適切な鎮痛薬をあらかじめ処方するとともに、術後には動物が痛みを感じていないかを見守りつつ、必要に応じて追加の鎮痛処置を行っております。

●麻酔にあたって絶水・絶食のお願い
麻酔前には絶水・絶食をすることにより、胃の中を空にしておく必要があります。胃に食べ物や水分が残っていると、麻酔中にそれらが逆流し、窒息や誤嚥による肺炎や肺水腫の原因となることがあります。そのため、麻酔下での検査を予定している診察日には、絶水・絶食をお願いしています。絶食・絶水をしていない、あるいは絶食・絶水していても胃に食べ物や水分が残っていると、当日は麻酔がかけられないため、検査や処置の日を改めることがあります。絶水・絶食の期間は、病気の内容や実施する検査・処置によって異なりますので、各診療科からの指示に従っていただきますようお願いします。
●麻酔科での取り組み
局所麻酔
麻酔科では術後の「痛みの緩和」のため、全身投与(経口、注射・点滴)の鎮痛薬に加えて、局所麻酔を積極的に取り入れています。例えば、局所麻酔の1つである末梢神経ブロックは、痛みを感じる知覚神経の周囲に局所麻酔を満たすことで、痛みの信号が脳への伝達されることを遮断するため、強力な鎮痛が得られます。かつて全身投与の鎮痛薬だけでは、術後に十分な痛みのケアが難しかった組織侵襲の大きな手術に対しても、局所麻酔の発展により術後早期から安全で良好な「痛みの緩和」を目指すことが可能となりました。

一側肺換気麻酔法(分離肺換気)
胸部外科手術の1つに、開胸手術と比べて低侵襲な胸腔鏡手術があります。胸腔鏡手術では胸腔に挿入したスコープ越しの画像を見ながら胸腔内操作を行いますが、操作スペースの確保と良好な術野を得るためには片側(右あるいは左のいずれか)肺のみで換気を実施することがあります。通常の換気法(両側肺換気)よりも一側肺換気麻酔法を用いることで、ずっと胸腔鏡手術がやりやすくなります。ただし、この方法は肺の一部を使用できなくなるため、呼吸管理は難しくなります。このため、一側肺換気麻酔法に習熟した麻酔専従獣医師が入念なケアのもと実施しています。
-325x400.jpg)
教育
研修医およびStudent Doctorは、麻酔専従獣医師の指導のもと麻酔管理の理論と技術を学んでいます。麻酔科研修プログラムに基づいて研修医1期は麻酔管理の基礎的な知識を学び、麻酔技術を習得して、安全な麻酔管理を滞りなく遂行できるよう麻酔科ローテーションでトレーニングします。研修医2期では、安全な麻酔管理に加えて良好な疼痛緩和を目指すために欠かせない局所麻酔法をトレーニングします。