神経科 Neurology

神経科では2名の神経専門医を中心にして、犬や猫の神経疾患に対して高度医療機器を用いながら検査、診断や治療を行っています。

てんかんや脳炎などの疾患に対する内科治療や、脳腫瘍、脊髄腫瘍、ならびに椎間板ヘルニアなどの疾患に対する外科治療を行っていますが、特に脳腫瘍や脊髄腫瘍に対するマイクロサージェリーに力をいれています。

●検査について

【MRI検査】

強い磁場を用いて脳や脊髄(中枢神経)を描出することができる画像検査になります。X線検査やCT検査では周囲を骨に囲まれている中枢神経は明瞭に描出できないため、神経疾患の診断にMRI検査は必要不可欠です。欠点としては、頭蓋骨や脊椎を描出することができません。

通常、MRI検査は全身麻酔を実施して行う検査になります。小動物のMRI検査は人と違って対象物が小さかったり、特殊な撮影を行ったりするため時間がかかります。また、1回の撮影で脳や脊髄全体を評価することができないため、複数個所の撮影が必要な場合にはさらに時間が延長することもあります。当日は1日がかりの検査になることをご理解ください。

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【脳脊髄液検査】

脳脊髄液は、脳や脊髄(中枢神経)やその周囲を循環している透明の液体です。脳や脊髄の病気(特に髄膜炎や脳炎)を診断する際に、脳脊髄液検査が必要になります。検体の採取方法は細い針を使用して、頸部もしくは腰部(病気に近いところ)から皮膚を通じて採取します。患者さまが動いてしまうと危険ですので、基本的には全身麻酔下で行う検査になります。

【電気生理学的検査】

神経の病気によっては電気生理学的検査が必要な場合があります。てんかんの患者に対する脳波検査、難聴の患者に対する聴覚検査、そして筋肉の病気を疑った患者に対する筋電図検査などが代表的な電気生理学的検査になります。これらの検査も基本的には全身麻酔下で行われます。

●神経科へはじめて来院された患者ご家族様へ

当日の検査の流れ(精密検査を予定してる患者さま)

-午前:神経学的検査、血液検査やX線検査などにより、どのような病気を疑うかを考えて精密検査の必要性を判断します。また全身麻酔が受けられるかどうかの評価も行います。これら検査結果を踏まえて主治医から結果を伝え、今後の相談をします。

-午後:MRI検査、CT検査や脳脊髄液検査などによる精密検査。検査が終わり、画像診断が終わり次第、主治医からの説明と治療方針について相談します。一部、検査結果は後日報告になるものもあります(外注する脳脊髄液検査や血液検査など)。

精密検査にあたって一部毛刈り(剃毛)のご理解

*全身麻酔や精密検査を行う場合は基本的に、肢、胸部、頚部/腰部の一部毛刈りが必要になりますのでご理解ください。

【毛刈りの目的と場所】

・肢の毛刈り:点滴や薬を静脈内へ注射するために留置針を前肢や後肢に設置します。留置針を設置する部位は、消毒のため毛刈りが必要です。

・胸部の毛刈り:MRIは磁場が強い検査機器です。安全に全身麻酔が維持され、MRI検査が進んでいるかチェックするために専用のモニターを胸部に着ける必要があります。その際、被毛があると正しくモニターできませんので安全上、ご理解ください。

・頚部/腰部の毛刈り:脳脊髄液検査の際に患部消毒のために必要です。

●よく遭遇する神経の病気について

脳の病気

【特発性てんかん】

脳に起因するけいれんなどを伴う発作(てんかん発作)を主徴とする疾患。MRI検査、CT検査や脳脊髄液検査を行っても異常が認められない。

簡単に‘てんかん’ということもある。病気というよりも遺伝的な背景などにより、脳のコントロールができなくなり症状が生じる。犬・猫ともに発症し、生後6ヶ月齢~6歳齢くらいで初めての発作を経験することが多く、発作以外の神経症状は認められない。

【脳炎(髄膜脳炎)】

脳やその周囲の髄膜が炎症を起こす病気。原因はおそらく免疫介在性と感染性に大別される。MRI検査では脳や髄膜に炎症があることを確認できるが、原因までは特定できないため脳脊髄液検査が診断に重要となる。おそらく免疫介在性が原因の脳炎(髄膜脳炎)はトイ種(チワワ、ヨークシャ・テリア、トイ・プードル、マルチーズなど)やパグなどの犬種に好発する。発作や視覚障害、異常行動などを呈することがある。

【水頭症】

先天的(生まれつき)あるいは後天的に何かしらの要因で脳の中に脳脊髄液が過剰に溜まった状態。学習障害、発作、視覚障害や異常行動などの神経症状を呈することがある。先天性の場合、これらの症状が1歳未満で認められることが多く、頭部が体に比べて大きくドーム状になる。MRIやCT検査で診断を行う。

【脳腫瘍】

脳あるいは周囲組織(髄膜など)から発生する頭蓋内腫瘍。犬や猫ともに発生する。犬では髄膜腫ならびにグリオーマの発生が多く、猫では髄膜腫が多い。髄膜腫は10歳を越えてから発症することが多いが、グリオーマはより若い年齢(7歳齢~)でも発症することがある。フレンチ・ブルドッグ、ボストン・テリア、ボクサーなどはグリオーマの好発犬種である。MRIおよびCT検査により診断する。発生部位やリスク等を踏まえて積極的な治療(脳外科手術や放射線治療)を提案する。

脊髄の病気

【椎間板ヘルニア】

背骨(脊椎)と脊椎の間にある線維軟骨および髄核組織から構成される椎間板がヘルニアを起こし、神経(脊髄や神経根)を圧迫することにより患部の痛みや肢のしびれ(麻痺)を引き起こす病気。頸部椎間板ヘルニアの場合、前肢・後肢ともに症状が生じ、胸腰部椎間板ヘルニアの場合、後肢の症状が生じる。肢が完全に動かなくなった場合は緊急性を要する。MRIやCT検査で診断し、臨床症状の重症度や椎間板ヘルニアによる脊髄圧迫の重度によって外科手術、または内科療法を提案する。

【脊髄空洞症】

脊髄の内側に脳脊髄液が貯留する病気。生まれつきの骨格が要因となり脳脊髄液の循環障害が生じて発症することが多い。キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、チワワ、トイ・プードル、ミニチュア・ダックスフンドなどの犬種で好発する。脳脊髄液が貯留する部位は頸部、胸部、腰部の脊髄と様々で、発生した領域に疼痛や異常な掻痒感、肢のふらつきなどが認められる。MRI検査やCT検査で診断する。

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