犬および猫のリンパ球由来腫瘍に対する臨床試験

犬および猫のリンパ球由来腫瘍(リンパ腫・形質細胞腫・多発性骨髄腫・慢性リンパ球性白血病など)に対する新規治療に関する臨床試験を行っています。

*診断に係る検査(病理組織・細胞診検査など)は日本大学動物病院で行います。

概要

犬および猫のリンパ球由来腫瘍に対する治療は、抗がん剤を用いた化学療法が一般的に行われています。しかし、治療効果が得られなかった症例や、稀な病型の症例に対する治療法は確立されていません。私たちは犬および猫のリンパ球由来腫瘍に対する新しい治療選択肢の確立を目指して研究をしています。

本試験は日本大学動物病院倫理委員会の承認を得て実施しています。

適応症例

  • 病理組織検査・細胞診・PCRクローナリティ検査でB細胞性リンパ球由来腫瘍と診断した症例
  • 治療期間中の通院が可能な症例
  • 試験開始前(1週間)に先行治療内容の変更がない症例
  • 摂食や排泄などの日常生活の維持が可能な症例

治療薬

人のリンパ腫等の血液がんの治療で認可・使用されているプロテアソーム阻害薬を使用します。プロテアソームは細胞周期に重要な役割をもつことや、細胞内の不要になったたんぱく質を細胞外に排泄する役割があることが分かっています。この薬剤は、プロテアソームを阻害することで、腫瘍細胞のアポトーシス(自滅)を誘導し、抗腫瘍効果を発揮するとされています。

これまでに猫の多発性骨髄腫症例に対してこの薬を用いた治療を世界で初めて行い、その抗腫瘍効果が認められ国際的な学術誌に掲載されました  [Tani H, et al. A feline case of multiple myeloma treated with bortezomib. BMC Vet Res. 2022;18(1):384. ]。このようにプロテアソーム阻害薬は、犬や猫のリンパ球由来腫瘍に対する有望な新規治療薬となる可能性があります。

【左図】がん細胞が産生する異常蛋白の濃度が、プロテアソーム阻害薬に切り替えたことで顕著に低下しました。【右図】異常蛋白の電気泳動波形(モノクローナルガンモパチー)も治療後には消失し、正常化しました。

注意事項

  • 本研究のデータは今後の獣医療の発展のために使用させて頂きます。
  • 確実な治療効果を約束するものではありません。
  • 重篤な副作用がでた際は、治療前よりも状態が悪化する可能性もあります。
  • 試験後に残念ながらお亡くなりになってしまったわんちゃん・ねこちゃんの死後検査をお願いすることがあります(任意)。今後の獣医学の発展のためにとても重要なことですので、こうしたお願いをすることにどうぞご理解下さい。
  • いかなる理由でも飼い主様からの要望があれば即時薬剤の投与と試験実施を中止することができます。

※詳しくは当院の腫瘍内科(担当獣医師 谷)にお問い合わせ下さい。

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