交流磁場を用いたがん治療(臨床研究) 当院では、交流磁場を用いたがん治療(臨床研究)を行っており、研究に参加していただける患者さん(中〜小型犬)を募集しています。 1. 交流磁場療法交流磁場とは、IHクッキングヒーターなどにも用いられている磁場です。交流磁場は周波数により特性が変化し、交流磁場療法ではIHクッキングヒーターより少し高く、また、電子レンジよりも低い周波数の磁場を使用していますので、調理器具のような発熱はなく、また周囲の人体にも影響はありません。これまでの交流磁場に関する研究で、特定の周波数の交流磁場が、抗腫瘍効果を持つことを発見しました。交流磁場は、コイルに電流を流すことで発生し、これをがん治療に使います。同じような原理を用いた治療方法として、人の脳腫瘍では、電場を用いた治療装置があり、その治療には保険の適用が認められています。 図1 交流磁場の周波数による特性の違い 2. これまでの基礎研究これまでの基礎研究において、特定の周波数の交流磁場が、抗腫瘍効果を持つことを発見しました。実際に様々な種類の培養がん細胞に対して増殖抑制効果を認めています。この効果は交流磁場そのものの効果と考えられ、発熱媒体などの物質や薬剤などは不要です。つまり、交流磁場の刺激のみで抗腫瘍効果が期待できる治療です。一方、正常細胞ではこの効果は認められておらず、動物実験でも交流磁場による明らかな副作用は認めておりません。この現象をがん治療に応用し、副作用のない、体に負担が少ない治療を行います。本研究は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の2021年度~2028年度の創発的研究支援事業(研究代表者: 横浜市立大学医学部 准教授 梅村将就)です。 図2 特徴:交流磁場の作用腫瘍を縮小により 3. 治療装置の開発交流磁場によるがん治療を動物に応用する目的で、中〜小型犬用の交流磁場がん治療装置を開発しました。本臨床研究では、自然に発症したがんに罹患する小型犬に対する治療効果を確認し、数年後の製品化を目指しております。 4. 対象とする疾患犬の頭部、口あるいは首に発生した悪性腫瘍 例:悪性黒色腫(メラノーマ)、 鼻腔内腫瘍、脳腫瘍 5.治療日治療は、基本的に月と水曜日に行います。 6.治療回数治療回数は週2回 x 3週の6回を目安に行います。 7. 治療にともなう検査について本治療にご協力いただく場合、治療前に採血や画像検査(CT、 MRIなど)を行います。また、治療終了後にも、効果を評価するために再度検査を行います。 8. 費用について本臨床研究を行うにあたり、治療ための検査と治療に関わる費用は無料です。またこの治療への参加に謝礼はありません。 9. 治療のながれ麻酔導入後、十分に不動化したことを確認した上で治療を開始します。円形コイルの中に患部(頭部)を入れ、約30分間交流磁場を当てます。治療中に痛みなどはありません。麻酔中は心電図、酸素飽和度をモニターします。さらに、患部の表面温度を測定するため、特殊な温度測定センサーを複数個所設置し、安全に治療を行います。 図3 治療のながれ 図4 交流磁場コイル(円形部分) 図5 交流磁場コイルの装着(左斜め後ろより) 10. 予想される有害事象・副作用今のところ、交流磁場そのものの有害事象や副作用は可能性は低いと考えていますが、麻酔にともなうリスクがあります(呼吸循環抑制、肝・腎機能障害など)。 11. 治療のご相談この治療について知りたいことや、心配なことがありましたら、遠慮なくお問い合わせください。ただし、他の研究者等の個人情報や、研究者の知的財産権の保護等の観点から、回答ができないことがあります。その場合は、担当獣医師から説明をいたします。 12. 治療成果の公表について 治療成果については、今後の治療に役立てるため、学術集会や論文などで発表・公表させていただくことがございます。しかし、お名前等の個別の情報は、一切公表されることはなく堅く守られることを保証します。 お問い合わせ先日本大学動物病院放射線科 中山智宏