本内容は研究室で行われる抄読会にて、学生が論文を読みまとめたものです。内容は必ずしも正しいものではなく、著者の見解と異なる場合もあります。
タイトル
線維化と不整脈
Fibrosis and Cardiac Arrhythmias
雑誌名
Journal of Cardiovascular Pharmacology
著者名
Sanne de Jong
発行年
2011年
書籍情報
DOI: 10.1097/FJC.0b013e318207a35f
はじめに
本論文は線維化と不整脈の関係をまとめたレビュー論文である。心筋の正常な構成要素であるコラーゲンやナトリウムチャネルの変化がどのように不整脈発生に繋がるのかを示した。また、コラーゲンの組織構造による伝導遅延や不整脈発生リスク、分裂電位や異常なインパルス発生などについてのデータも提示する。レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の阻害による線維化および不整脈誘発性の低減や、線維化評価のためのMRIについても論じた。
線維化と不整脈
さまざまな研究により、線維化が不整脈発生に関与していることが示されている。心筋線維化メカニズムは不明だが、TGF-βなどの成長因子や、ホルモン、神経伝達物質が関与している可能性がある。マウスにおいて、加齢によって線維化の割合が増えるとともに心室性不整脈を誘発しやすかった。免疫組織学的解析では、3ヵ月齢と22ヵ月齢を比較するとCx43およびSCN5Aの発現が50%減少していた。
コラーゲン沈着の増加やコネキシン発現の低下によって細胞間結合が弱まると、異常なインパルスが周囲へ伝播しやすくなり、不整脈の発生を助長する要因となっている。線維化は、特に横方向の伝導や不応期に影響を及ぼし、伝導ブロックを引き起こす可能性があり、これらは不整脈の発生を助長する要因となる。
コラーゲンの量が不整脈の発生率と相関していることを示す研究はいくつかある。斑状線維化はびまん性線維化よりもコラーゲン線維が長いため、伝導遅延を起こしやすく、その結果、心室性不整脈を起こしやすい。一方、心筋が欠如している緻密性線維化が最も不整脈が起こりにくい。また、電気的に不活性な組織と活性な組織が混在することで伝導の非同期が生じ、線維化心筋の顕著なマーカーである分裂電位が形成される。線維に対して垂直方向に伝導する場合に最も分裂電位は顕著になる。
不整脈誘発性において線維化は重要な因子であるため、コラーゲン沈着の防止や線維化の逆リモデリングを通じて不整脈リスクを低減させる研究が進められている。マウスにおいて、エプレレノン、ロサルタン、その両方を36週間投与した結果、レニン・アンジオテンンシン・アルドステロン系の阻害による線維化抑制が有意に示された。臨床報告でもACE阻害薬やロサルタン、スピロノラクトンで心筋線維退行の報告がされている。
最後に、ガドリニウム造影MRIを用いたいくつかの研究は、心臓内のコラーゲンを非侵襲的に検出することが、心疾患患者の不整脈脆弱性を評価する上で有用である可能性を示唆している。一方、ガドリニウムはコラーゲンそのものではなく細胞外空間の増加を間接的に検出している点や、微細な線維化や、心筋と線維化組織が混在していると検出不十分になるという点が問題である。そこでコラーゲンを直接造影するEP-3533が線維化評価法として期待されている。
まとめ
線維化によって、伝導速度の低下、細胞間結合の低下、伝導ブロック、不応期の不均一化が起こり、不整脈を促進する。
線維の分布(びまん性や斑状など)によって、不整脈リスクが変化する。
心筋と線維化組織が混在している領域は分裂電位を起こしやすい。
コラーゲン沈着の抑制や線維化退行に効果のある薬がある。 MRIによる線維化評価は今後の不整脈リスク判定に有用である可能性が示唆された。
抄読会担当者 D2大学院生
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