【抄読会】イヌにおける末梢α2受容体拮抗薬のデクスメデトミジン投与における影響

本内容は研究室で行われる抄読会にて、学生が論文を読みまとめたものです。内容は必ずしも正しいものではなく、著者の見解と異なる場合もあります。

タイトル

デクスメデトミジン鎮静下のイヌにおけるMK-467(末梢α2アドレナリン受容体拮抗薬)の血清グルコース、インスリン、遊離脂肪酸、乳酸及びコルチゾールに対する影響

Plasma glucose, insulin, free fatty acids, lactate and cortisol concentrations in dexmedetomidine-sedated dogs with or without MK-467: A peripheral α-2 adrenoceptor antagonist

雑誌名

The Veterinary Journal

著者名

F. Restitutti, M. Raekallio, M. Vainionpää, E. Kuusela, O. Vainio

発行年

2012年

書籍情報

DOI: 10.1016/j.tvjl.2011.12.010

論文の背景

α2アドレナリン受容体作動薬であるデクスメデトミジン(DEX)は、優れた鎮静・鎮痛作用を持つ一方で、血管収縮による高血圧や徐脈といった副作用、さらにインスリン分泌抑制による血糖値上昇などの代謝的副作用を引き起こすことが知られている。これに対し、MK-467は血液脳関門をほとんど通過しない「末梢性」のα2受容体拮抗薬である。このため、脳内での鎮静作用は維持したまま、心血管系や代謝系における末梢の副作用のみを打ち消すことが期待されている。本研究の目的は、DEXによって誘発される血糖、インスリン、遊離脂肪酸(NEFA)、乳酸、およびコルチゾールの濃度変化に対し、MK-467の同時投与がどのような影響を与えるかを評価することであった。

材料及び方法(研究手法)

実験には、健康な実験用ビーグル犬6頭が用いられた。ランダム化クロスオーバーデザインを採用し、各実験の間には14日間の休止期間を設けた。投与内容は、①デクスメデトミジン単独群(DEX:10 μg/kgを静脈内投与)と、②デクスメデトミジンとMK-467の併用群(DMK:DEX 10 μg/kg + MK-467 500 μg/kgを同一シリンジで静脈内投与)の2群であった。血液サンプルは、投与直前(ベースライン)および投与後35分、60分、120分に留置された中心静脈カテーテルを介して採取された。測定項目は、血漿中のグルコース、インスリン、非エステル化遊離脂肪酸(NEFA)、乳酸、およびコルチゾールの濃度であった。統計解析には反復測定分散分析(ANOVA)が用いられた。

結果

DEX群では、投与35分後および60分後に血漿インスリン濃度が顕著に低下し、120分後には血糖値が有意に上昇した。一方、MK-467を併用したDMK群では、これらのインスリン分泌抑制と血糖上昇がほぼ完全に抑制された。NEFAに関しては、両群ともに投与35分後に低下したが、DMK群では低下は一時的で35分以降には上昇がみられたのに対し、DEX群では観察期間中は低い状態が継続した。また、DEX群では35分・60分後に乳酸値の上昇が見られたが、DMK群では抑えられた。コルチゾール濃度については、どちらの群においてもベースラインからの有意な変化は認められなかった。これは、この用量のDEXが犬の基礎コルチゾール分泌を劇的に変化させない、あるいは測定時間の範囲内では影響が顕在化しなかったことを示していると考えられる。

まとめ

本研究の結果から、末梢性α2受容体拮抗薬であるMK-467は、デクスメデトミジンが引き起こす高血糖、インスリン分泌抑制、および代謝の変動(乳酸やNEFAの変化)を有意に消失させることが証明された。ただし、コルチゾール値に関しては今回の実験条件では変化が見られず、DEXが視床下部-下垂体-副腎軸に与える影響については、外科手術などのストレス負荷状態でのさらなる検証が必要であることも示唆された。MK-467はDEXの代謝的副作用を軽減し、周術期の管理をより安全にする薬剤として有望であると結論付けられる。

抄読会担当者 4年次学生A

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