【抄読会】間葉系幹細胞由来エクソソームの炎症制御機序

本内容は研究室で行われる抄読会にて、学生が論文を読みまとめたものです。内容は必ずしも正しいものではなく、著者の見解と異なる場合もあります。

タイトル

間葉系幹細胞由来のエクソソームは、肺胞マクロファージのパイロトーシスを阻害することにより、急
性肺損傷を軽減する

Mesenchymal Stem Cells-Derived Exosomes Alleviate Acute Lung Injury by Inhibiting Alveolar Macrophage Pyroptosis

雑誌名

Stem Cell Translational Medicine

著者名

Liu P, Yang S, Shao X, Li C, Wang Z, Dai H, Wang C.

発行年

2024年

書籍情報

DOI: 10.1093/stcltm/szad094

論文の背景

世界中で毎年約 300 万⼈の患者が急性呼吸窮迫症候群(ARDS)1と診断されています。⼈⼯呼吸器による⼈⼯呼吸が主な治療法だが死亡率は依然として⾼い状況でした。従来の研究では肺胞マクロファージのパイロトーシス2は肺の炎症過程において重要な役割を果たしていることが⽰唆されています。そのため、肺損傷の治療の新たな標的となる可能性があります。これまでの研究では。間葉系幹細胞(MSC) 由来エクソソーム3は炎症を抑制し組織修復を促進する能⼒がありマクロファージの細胞⽣存率を向上させ、パイロトーシスを予防するのに効果的であることが明らかになっている。ですが、MSCs-Exo の影響は、依然として⼗分に解明されていません。これらの背景から、MSCs-Exo が 急性肺傷害(ALI) 4を軽減する効果を調査し、肺胞マクロファージのパイロトーシスに関する根本的なメカニズムを解明することが本研究の⽬的とされています。

材料及び方法(研究手法)

エクソソームの分離と特性解析
MSC は臍帯から分離され、培養し増殖させる。3 継代の細胞について幹細胞特性を検査し、細胞は Human MSC Analysis Kit の指⽰に従ってフローサイトメトリーを使⽤して幹細胞マーカーについて分析。また、分析前に細胞は MSC 陽性マーカーと陰性カクテルマーカーに対する抗体と共にインキュベートする。⽐較対象としてヒト胎児肺線維芽細胞である MRC-5 細胞をエクソソームを含まない完全培地で培養。そして、細胞培養上清を回収してエクソソームを分離する。マウス肺胞マクロファージ(AM)は 10%FBS を添加した DMEM 培地で培養する。

ALI モデルの開発とサンプルの収集
⽣後 10〜12 週間の C57BL/6 雄マウスを使⽤する。標準飼料を与え、温度 23℃〜25℃、湿度 60%〜70%、12 時間明暗サイクルで飼育し、イソフルランで⿇酔を⾏い、ALI モデルは 50μL PBS に溶解した 10mg/kg LPS を気管内投与することで誘発。対象マウスには同量の⽣理⾷塩⽔を投与。4 つの群(対照群、LPS 群、MSCs-Exo 療法群、MRC-5-Exo 群)を⽤意し、各群のマウスから組織サンプルを採取する。

その他
組織学的染⾊、肺損傷スコア、マイクロ CT、BALF、⾎清、および細胞上清の分析、ヨウ化プロピジウム、免疫蛍光染⾊およびフローサイトメトリー分析、ウエスタンブロット、Exo の miRNA シーケンス解析、Exo のプロテオミクス解析、統計分析を⾏う。

結果

LPS 誘発 ALI マウスモデルの組織病理学的所⾒には、び慢性肺胞損傷、肺組織構造の破壊、肺胞中隔の肥厚、炎症細胞浸潤、少量のピンク⾊の線維素沈着物が確認されたま。また、MSCs-Exo による治療は LPS 誘発性肺損傷を軽減しているのが確認された。しかし、MRC-5-Exo による治療はマウスに効果がなかった。また、MSCs-Exo による治療は⽤量依存的に LPS誘発性ALIを軽減し、⾼⽤量は中⽤量および低⽤量よりも効果的であることがわかった。他にも、LPS では⾎清および BALF 中の IL-1β および IL-18 の上昇が⾒られたが、MSCs-Exoの治療では、どちらも低下しているのが確認できた。乾湿重量⽐と総蛋⽩質も同様に MSCs-Exo では低下することが確認された。マイクロ CT では 48 時間後のLPS 誘発マウスの肺損傷を評価したが、LPS 群ではびまん性および部分固形病変が認められた。MSCs-Exo 治療は LPS誘発滲出性および斑状病変を軽減したが MRC-5-Exo 治療は効果がなかった。これらの結果は MSCs-Exo が ALI に対して治療効果を有することを⽰している。また、各マウス群の BALF 中の AM の割合を測定することによって MSCs-Exo の AM パイロトーシスへの影響を評価した。結果は、LPS 処理により BALF 中の AM の割合は減少したが、MSCs-Exo は BALF による処理はこの効果を逆転させることができたことを⽰している。これらの結果は、肺損傷後に AM がパイロトーシスを起こし、ALI の病態形成を促進する炎症促進因⼦を産⽣する可能性があり、MSCs-Exo は AM のパイロトーシスを阻害することで LPS 誘発性炎症を軽減する可能性があることを考えられる。

まとめ

MSCs-Exo には抗炎症作⽤があり、ALI に対する治療効果は⽤量依存的であることが⽰唆された。また、さらに AM のパイロトーシスが LPS 誘発性 ALI において重要な役割を果たしていることが分かり、 MSCs-Exo が AM のパイロトーシスを阻害することで炎症を軽減することが明らかになった。miRNA シーケンス解析およびプロテオミクス解析の結果から、 MSCs-Exo はカスパーゼ-1 を介した経路を標的とする miRNA および免疫調節機能を有するタンパク質を介してパイロトーシスを阻害する可能性があると⽰唆された。

抄読会担当者 5年次学生H

その他の抄読会データはこちらからご覧になれます。

抄読会(ジャーナルクラブ)

    1. 肺炎や敗血症などの重症疾患が原因で、短期間に両肺が炎症を起こし、急速に重症な呼吸不全に陥る症候群です。肺の血管から水分が漏れて肺胞に溜まるため、酸素を十分に取り込めなくなり、人工呼吸器などの集中治療が必要となる。 ↩︎
    2. 主に細菌やウイルス感染時にマクロファージなどの免疫細胞で起こる、炎症を伴うプログラム細胞死。[ガスダーミンD]というタンパク質が細胞膜に穴(孔)を開け、細胞が膨潤・溶解して死滅する過程で、炎症性サイトカイン(IL-1βなど)を放出して周囲に免疫反応を惹起する。 ↩︎
    3. 脂肪、骨髄、臍帯などのMSCから分泌される直径 30 〜 150 nmの小胞で、組織再生、抗炎症、血管新生を促進する。サイトカインや核酸(mRNA、miRNA)を内包し、美容(シワ改善、皮膚再生)から慢性疾患治療まで、高い組織修復能力を活かした次世代の再生医療として注目されている。 ↩︎
    4. 敗血症、肺炎、外傷などにより肺に急性炎症が起き、重度の低酸素血症をきたす呼吸不全。ARDSは急性肺傷害の重症例。血管透過性が亢進し、肺胞に水がたまる(肺水腫)ことで急激な呼吸困難が生じ、人工呼吸管理などの集中治療が必要となる。 ↩︎

    コメント

    タイトルとURLをコピーしました