本内容は研究室で行われる抄読会にて、学生が論文を読みまとめたものです。内容は必ずしも正しいものではなく、著者の見解と異なる場合もあります。
タイトル
Systemic inflammation is associated with myocardial fibrosis, diastolic dysfunction, and cardiac hypertrophy in patients with hypertrophic cardiomyopathy (全身性炎症と肥大型心筋症患者における心筋線維化、拡張期機能障害、および心肥大との関連)
雑誌名
American Journal of Translational Research
著者名
Fang L, Ellims AH, Beale AL, Taylor AJ, Murphy A, Dart AM.
発行年
2017年
書籍情報
PMID: 29218105,Fang L, Ellims AH, Beale AL, et al. Am J Transl Res. 2017;9(11):5063–5073.
論文の背景
肥大型心筋症(HCM)とは、左室肥大、錯綜配列、心筋線維化を特徴とする指定難病です。検査に用いられるMRIの遅延造影(LGE)は局所線維化を定量化するために、また造影後心筋緩和時間(T1)マッピングはび漫性線維化を評価するために用いられています。炎症性サイトカインのTNF-α、IL-1、IL-6はストレス応答として発現が誘導され、単球走化性タンパク(MCP)-1は左室内径短縮率と負の相関、左室拡張末期圧と正の相関があることが報告されています。先行研究ではC反応性タンパク、TNF-α、IL-1受容体拮抗因子(IL-1RA)の血中濃度が、最大LGE量と有意に相関があることが報告されているが、左室全体にわたる複数スライスを評価しておらず、心筋線維化量を正確に評価するには不十分であった可能性があります。そこで、本研究では50例のHCM患者および20例の健常対照から得られた血漿サンプル炎症性サイトカイン/ケモカインを測定し、LGE量とT1時間、収縮機能、左室肥大の程度と比較しました。
材料及び方法(研究手法)
研究対象はHCMによる非対称性中隔肥厚の患者50例(健常対照群として、20名の健康な被験者)です。局所性心筋線維化の同定にはLGEを用い、びまん性心筋線維化の定量にはT1マッピングシーケンスを用いました。また、MRI検査はHCM患者全例および健常対照7例において実施しました。 心エコー図検査では拡張機能の指標として、僧帽弁流入波形(E波/A波比)と僧帽弁輪速度(e’)を、左室拡張時圧の指標として僧帽弁E波/e’比を用いました。サイトカインはBioPlex法1を用いて、17種類を測定しました。
結果
HCM患者では、BMI、白血球数、好中球数、単球数は高値を示しました。心エコー図検査では心室中隔厚、中隔壁厚/側壁厚、左室質量、体表面積補正後の左室質量は高値を示しました。またMRI検査では左室駆出率の高値を示しました。これは心筋の過収縮が原因と考えられます。また、左室収縮末期用量の低値、LGEは主に心室中隔、右室自由壁挿入部に局在していました。さらに、心筋T1時間が有意に短縮していました。BioPlex assayの結果、サイトカインはTNF-αとIL-6、SAPが高値を示し、TGF-βは低値を示しました。炎症マーカーと左室流出路狭窄との関係はマーカーの濃度と有意な差はありませんでした。HCM群においてSDF-1、MCP-1はT1時間と負の相関、IL-4、IL-6、MCP-1、IL-10はLGEと正の相関がみられました。また、炎症マーカーと拡張機能障害の関係はSAP、IL-6、TNF-α、IL-10、MCP-1が正の相関、TGF-βは負の相関がありました。
まとめ
本研究では以下の3点が主な所見でした。HCM患者ではTNF-α, IL-6, SAPが上昇、TGF-β1が低下していました。TNF-α、IL-6はLGEで評価した局所性線維化や、ECVで評価したびまん性線維化と有意に関連しました。上記の関連性は、年齢、性別、BMI、家族歴で補正後も確認されました。また、本研究において上記のサイトカインがHCM患者のLGE量、ECVと相関していたことは炎症がHCMにおける心筋線維化の進行に関係している可能性があることを示唆しています。さらに、TGF-β1は線維化促進因子として知られていますが、本研究ではHCM患者においてTGF-β1濃度が低下し、心筋線維化指標との有意な関連は認められなかったことはTGF-β1濃度がTGF-βシグナル活性を必ずしも反映しない可能性または、疾患のステージによる影響があると考えられます。
抄読会担当者 5年次学生K
- BioPlex法: 微量かつ複数の抗原や抗体を一度に測定するマルチプレックスイムノアッセイ技術。蛍光色素で分類された磁気ビーズを用い、微量サンプルで自己抗体やサイトカインなどの項目を迅速・高精度に定量分析する。マルチプレックスアッセイとも ↩︎
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