本内容は研究室で行われる抄読会にて、学生が論文を読みまとめたものです。内容は必ずしも正しいものではなく、著者の見解と異なる場合もあります。
タイトル
オウム目 ・ 猛禽類 ・ フクロウ目におけるBNPおよびNT-proBNPの解析
Analysis of the B-Type Natriuretic Peptide and the Aminoterminal-Pro-B-Type Natriuretic Peptide in Different Parrot, Raptor and Owl Species
雑誌名
著者名
Hennig A, Mohr L, Fehr M, Legler M.
発行年
2022年
書籍情報
論文の背景
B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)およびNT-proBNPの血漿濃度は、心疾患の診断や予後予測に非常に有用なマーカーとなっている。しかし、鳥類医療における心疾患診断は主に画像診断に依存しており、多くの鳥種においてBNPのアミノ酸配列の決定やその臨床的活用も進んでいない。本研究は、鳥類の心血管疾患の診断・モニタリング手法を開発するための基礎データとして、主要な鳥種のBNP配列を明らかにすることを目的としている。
材料及び方法(研究手法)
【供試動物】
患者として病院に持ち込まれた、あるいは剖検目的で送られた19個体を対象とした。
(オウム目12種、タカ目2種、ハヤブサ目1種、フクロウ目3種、およびハト1種)
【サンプリング】
死亡または安楽死後24時間以内に心臓を摘出し、冷凍保存した。
【遺伝子解析】
心臓組織からRNAを抽出し、RT-PCRを用いてcDNAに変換した。ハトのBNP用に設計された
プライマーを用いてPCR増幅を行い、得られた約480 bpの産物を電気泳動で確認した。
【配列決定と評価】 サンガー法により塩基配列を決定し、アミノ酸配列に翻訳した。既知のニワトリやハトの配列と比較・解析し、系統樹を作成して種間の親縁関係を評価した。
結果
【mature BNP領域】
活性を持つ29個のアミノ酸配列は、調査したほとんどの鳥種で一致しており、極めて高度に保存されていることが確認された。例外として、オーストラリア原産種であるセキセイインコとナナクサインコにのみ、末端付近でのアミノ酸置換が認められた。
【シグナル配列およびNT-proBNP領域】
全140個のアミノ酸のうち約69%は全種共通だったが、残りの31%に種やグループ特有の置換が見られた。コンゴウインコ、ボタンインコ、オウム、フクロウなどの同科・同属間では、共通の置換パターンを共有している事が判明した。
【配列長の例外】
通常は140aaで構成されるが、タカ目のイヌワシとズキンハゲワシのみ、70番目のアミノ酸が欠損し139 aaとなっていた。同じ猛禽類でもハヤブサ目のチョウゲンボウにこの欠損はなく、進化過程での違いが示唆された。
まとめ
本研究により、オウム目、フクロウ目、タカ目、ハヤブサ目の計18種の鳥類において、BNPおよびNT-proBNPの特定に成功した。mature BNPが種を問わず高度に保存されているという結果は、多くの鳥種に共通して利用できる心疾患の検査手法(ELISAなど)を開発できる可能性を強く示唆している。今後、臨床現場での実用化に向けて血液中の生理学的濃度の決定や、診断マーカーとしての有効性を評価するためのさらなる研究が期待される。
抄読会担当者 6年次学生O
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