骨の博物館

2023/11/29
★オギの原っぱ

大学の近くの大庭遊水地では、
オギがふわふわの冠毛をつけています。
たくさんある植物ですが、
近縁のススキと比較して
名を知らない人が多いようです。

オギの群落
オギの群落

植物は皆、生育環境を選んで生育しています。
とても素直です。オギは湿り気のある
陽当たりの良い環境を好み、大群落をつくります。

ススキはやや乾燥した環境を好み、
一ヶ所に密集した株を形成します。
間隔をおいてかん(茎)をのばす
オギとは対照的です。

ススキ
スズキ

大庭遊水地では、オギ群落に隣接して
アシの群落があります。

アシ
アシ

アシの穂は、オギと比較して
穂が小さめです。引地川の堤防に
立つとそれぞれの広がりを確認できます。

中央がアシ、手前と奥にオギが生育
景観


2023/11/22
★博物館実習(2期)

博物館では、夏と秋の2回に分けて
博物館実習を行いますが、
2回目(2期)がはじまりました。

11月15日と16日には、実習生8名と
他館実習で日数の少なかった2名の合計10名で
化石標本のレプリカ作りを行いました。
講師として、教職・学芸員課程の
野村正弘先生のご指導を戴きました。

説明をされる野村先生
実習風景1

一日目は、型枠がわりの紙コップの底に
粘土を敷き詰めレプリカの元となる
アンモナイト標本を固定しました。
そしてその上にシリコンゴムを流し入れ
気泡を除去しました。

粘土の上にアンモナイト(実物)を固定
実習風景2

シリコンを流しいれる
実習風景3

二日目は、硬化したシリコンゴムをはがし
水に溶いた石膏を流し入れました。

石膏を水で溶く
実習風景4

シリコンの型に石膏を流しいれて作製したレプリカ
実習風景5

石膏の固まるまでの時間、野村先生による
群馬県立自然史博物館で培われた経験談、
特に小学生を対象としたレプリカ作りを通した
博物館教育についてお話を聞きました。

レプリカは、一点しかない貴重な化石を
複数の博物館での研究や展示を可能にし、
実物標本の保存に寄与するなど大切な役割があります。

レプリカの用途によっては、非常に高い技術によって
実物と見分けのつかないような着色を施したり、
重さを実物に合わせたりする場合があるようです。

作製したシリコンゴムに石膏などを流せば、
さらに複製可能です。また石膏には、水彩絵の具で
着色ができるというメリットもあります。


2023/11/15
★イソギクの開花

私の今年のイソギク開花の初認日は、11月3日稲村ヶ崎です。
イソギクは、その名の通り海岸に生育するキクで
特に江の島や稲村ヶ崎などの崖や陽当たりのよい
草地などに大きな群落をつくります。

藤沢から三浦半島にかけての海岸で、
普通に見られますが国内でも
犬吠埼(千葉県)から御前崎(静岡県)に
生育する関東南部の固有植物です。

イソギクに似た分布を示す種として、
同じキク科のワダンがあります。

イソギク(2023年11月黒崎の鼻)
(薄紫色の花はノコンギク)
イソギク

ワダン(2023年11月城ヶ島)
ワダン

「日本の植物区系」を著した前川文夫先生は、
南関東や伊豆諸島,富士山などに
固有に分布する植物が生育する区域に
フォッサマグナ地区という呼び名を与えました。

博物館前に植栽されているオオシマザクラや
伊豆諸島名産のアシタバ、アジサイの原種とされる
ガクアジサイも同地区の固有植物です。

彼らは地球全体からみたら小さな点の様に
狭い地域にだけ生育しています。
大切にしたいですね。

アシタバ(2023年11月長者ヶ崎)
(今が花の時期)
アシタバ


2023/11/8
★ケヤキの種子散布

学内には大きなケヤキが多数植栽されていますが
ちょうど今落葉をしています。ケヤキにとっては
種子散布(植物が種子をばらまくこと)の時期でもあります。

校内の落ち葉
校内の落ち葉

落ちているケヤキの葉をよく見ると
大きな葉だけのものと
小さな複数の葉+果実+枝のセットがあります。
このセットになっている方の小さな葉と枝(散布体)は
果実をばらまくための役割を持っています。

ケヤキの散布体(左)と落葉(右)
ケヤキ

博物館の前で拾うことのできる葉は
大半が葉+果実+枝のセット(散布体)です。
博物館の入り口付近は、最も近いケヤキの
植栽木から30mほどあります。

ケヤキにとって、葉はどこに落ちてもよいのですが
果実のついた枝は遠くに飛ばす必要があります。
博物館前でケヤキの散布体の方が多く
拾える理由の一つは、散布体の方が葉だけよりも
遠くに飛ぶからかも知れません。

同様に博物館の周辺で観察のできる
風散布の樹木はイヌシデ(カバノキ科),
イロハモミジ(カエデ科)などがあります。

イヌシデの散布体(左)と落葉(右)
イヌシデ

果実をつけたイロハモミジ
イロハモミジ


2023/11/1
★スリップ注意

ウ類は、餌の魚を食べた後、よく休みます。
休む場所には好みがあり、特に夜間の長い休みには
個々の種における最も安全と思う環境を選んで休みます。

葉山沖合約700mにある名島では
3種のウ類が夜を過ごしますが
それぞれ別の場所を選んで眠っています。
ここでは、カワウは主に(※)大きな鳥居の上
ウミウは岩礁の小高い場所
ヒメウは、岩礁の傾斜のきつい斜面にとまります。




城ヶ島では、10/29に北国から渡ってきた
ばかりのウミウとヒメウがとまり
場所を選んでいるようにも見えました。

ここで事故が起きます。

ヒメウは普段とまっている崖よりも緩やかな場所にいましたが
油断してしまったのでしょうか。下に落ちてしまいます。




この個体は海に落ちる前に羽ばたいて難を逃れました。
他のウ達はその様子をちらりと見ていましたが
平然としていました。彼らにとっては下の海に落ちても
潜れるのでたいしたことではないのかも知れません。

※例外の個体もおり、岩礁で夜間休むカワウや
クロマツの樹上で休むウミウなどの例もあります。




2023年10月 博物館便り

2023年9月 博物館便り

2023年8月 博物館便り

2023年7月 博物館便り

2023年6月 博物館便り

2023年5月 博物館便り

2023年4月 博物館便り

2023年3月 博物館便り

2023年2月 博物館便り

2023年1月 博物館便り


2022年 博物館便り

2021年 博物館便り

2020年 博物館便り

2019年 博物館便り

2018年 博物館便り

2017年 博物館便り

2016年 博物館便り

musium