2023/7/26
★境川遊水地公園のツバメの集団ねぐら
鳥が夜に眠る場所を
ねぐら(塒)とよびますが、
ムクドリやウミウなど
幾つかの種では毎日夕方に
集団で集まって眠ります。
繁殖を終えたツバメもそうです。
大学の東側を流れる
境川の遊水地はツバメの
集団ねぐらが知られており、
観察に行きました。
境川遊水地は、境川沿いに
南北に長く広がりますが、
北側の今田遊水地で観察しました。
遊水地内には水が溜り、
その縁と中央部にアシやガマ類
の湿生植物群落が広がっています。
鳥にとって、繁殖や眠る時は
最も外敵から無防備です。
このため営巣場所やねぐらには、
外敵の近寄れない安全な
場所を選びます。
鳥の気持ちになってみると、
この中央にある浮島状の
アシ原などは獣などが近寄れず、
最も安全な環境に思えました。
今田遊水地

アシ群落

ヒメガマ群落

ツバメの集団ねぐら観察
(2023年7月19日)。
17:45、上流(北)側アシ群落の周辺を
10羽ほどのツバメが飛び回っており、
そのうちの数羽がアシにとまりました。
まだ幼鳥で、尾が短く嘴の基部が黄色でした。
親鳥が時々訪れて給餌をしていました。
でもしばらくツバメが集まる気配は
ありませんでした。
日の入時刻は18:55です。
19:00を過ぎるとうっすらと
暗くなり始めました。
先のアシ原にはツバメが
集まり始めました。
19:15頃 とまりはじめました。
あちらこちらを飛んでいる
ツバメ群を数えることは、困難です。
アシへとまりはじめたツバメは、
付近を通過したコサギに向かって
一斉に飛び立ち、集団で攻撃を
しかけました(モビング)。
この時に飛んだのは約200羽でした。
この間ヨシにとまっていた個体も
少数いたので、全体で200から
300羽ほどいたのではないかと
推測しました。
19:30には飛んでいるツバメも
いなくなりました。
今日のねぐら入りの観察はおしまいです。
博物館のツバメ

2023/7/19
★花の傘をさす植物
大学の近くの大庭遊水地の
湿地でセリの花をみつけました。

セリは茎の一点から枝分かれした
先でさらに枝分かれして
小さな花をたくさんつけます。

花のつき方や花のついた
枝のまとまりを花序(かじょ)と
呼びますが、セリの様な
花のつき方を(複)散形花序と
よびます。
セリは、草丈もせいぜい
ひざ丈ほどで小さな花の傘を
広げていますが、
高原などには人の背丈を
超えるような大きな花の傘を
広げる種もみられます。

セリ科は日本に約80種が
生育すると言われています。
個性的な草が多く、
生育環境も様々で
観察していて楽しいグループです。
藤沢の海岸砂丘には、
人の背丈よりも高くなる
ハマボウフウも見られます。

身近なセリ科の仲間には、
ニンジン,パセリ,セロリ,
アシタバ,パクチーなど
よい香りのする草が
たくさんあります。
2023/7/12
★サンカクイ
大学を西側に下ると、
引地川の低地が広がります。
引地川には洪水時に河川の
氾濫を防ぐための遊水地があり、
湿地に生息する動植物を
観察することができます。

遊水地でサンカクイが
小穂をつけていました。

サンカクイはその名の通り、
茎の断面が三角形をした
イ(藺草)に似た植物です。
小穂より上部は包葉(ほうよう:
花の基部につく変形した葉)で、
鋭く尖ります。
このため、サギノシリサシ(鷺の尻さし)
という別名があります。
サンカクイはカヤツリグサ科の植物です。
カヤツリグサ科は全体細長い葉や茎を持ち、
小さな花の穂をつけるところが
イネ科に似ていますが、
茎が三角形(葉を3列につける)
特徴を持っています。
この科の特徴を知っておくと、
植生調査の時には役に立ちます。

同所にはイ(イグサ科)も
生育しています。
イは畳表の材料となる植物です。
栽培されたイが使用されます。

2023/7/5
★オナガサナエ
博物館前で見慣れないトンボが
死んでいたので調べました。

黒と黄の縞模様をみて、
ヤンマ科かサナエトンボ科か
オニヤンマ科と思われましたが、
複眼(左右の大きな眼)が
完全に離れているので
サナエトンボ科とわかりました。
(複眼が長い線でつながる→ヤンマ科、
一点でつながる→オニヤンマ科)。

ここからは、検索表にある絵合わせで
見比べながら調べました。
サナエトンボ科の同定では、
翅胸とよばれる翅のついている
胸部の柄が重要な様です。
その結果、オナガサナエ
であることがわかりました。




藤沢市発行の小冊子「藤沢のトンボ」
によるとオナガサナエは
大和市域の引地川で
最近観察されたとされています。
「神奈川県昆虫誌」では、
藤沢市内の採集記録が
ありませんでしたので、
拾っておいてよかったと思いました。
アリにも食べられ穴も開いていた
ぼろぼろの死体ですが、
記録標本としての価値がありそうです。
オナガサナエでは、文献によると
河川中流域に生息するとあります。
博物館から最も近い河川は
引地川で900m程です。
何かの理由で大学まで飛んできて、
命を落としてしまったのだと
思われます。
参考文献 日本産トンボ幼虫・成虫検索図説(石田他,1988)
土佐のトンボ(浜田,1991)
神奈川県昆虫誌(神奈川昆虫談話会,2004)
藤沢のトンボ(藤沢市まちづくりみどり推進課,2013)