骨の博物館

■新着情報

2023/8/31
★北国に帰らないウミウ

神奈川県内では、夏期に
冬鳥のウミウを見ることは
やや稀ですが、今年は比較的
多く見られます。
多いといっても三浦半島周辺の
各ねぐらで、
稲村ヶ崎に2羽(8/27)
葉山に2羽(8/28)
城ヶ島に8羽(8/26)
合計12羽です。

同じエリア内での冬期には、
約1,200羽いるため約1%が
北国への渡りをせずに滞在しています。



ウの仲間は羽衣の色の違いにより、
おおまかな年齢が判ります。
ウミウの若い個体は、
背面がやや赤みを帯びた褐色で
腹側が白色やぼやけた薄い褐色です。
一方成鳥は顔の周りを除き、
ほぼ全身黒色です。

ウミウとカワウの顔

城ヶ島では、冬期にみる
ウミウの若鳥の割合は全体の
2割程度ですが、今夏に滞在
しているウミウはすべて若鳥です。
約99%のウミウは子育て等の
ために北国に渡りますが、
帰らない個体の多くは繁殖に
参加しない年齢層の一部の様です。



2023/8/23
★タコノアシの花

大学西側の引地川には
遊水地があり、アシや
ヤナギ類を優占種とする
湿地植生が見られます。

ここでは、植生に配慮しながら
アシの草刈りが行われており、
様々な湿地の植物を観察できます。
夏の湿地はすごく
蒸し暑いのですが、そんな中で
タコノアシという植物の
花を咲かせています。

大庭遊水地の景観
タコノアシ

名前の由来は、
花序(花のついた枝のまとまり)が、
蛸(たこ)が足を広げているように
見えることです。
秋には、枝全体が紅葉して
いっそう蛸の足の様に見えます。

タコノアシ
イワダレソウ

ひと昔前までは、ベンケイソウ科に
分類されていましたが、
遺伝子解析による新分類
(APG植物分類体系)では
タコノアシ科という新しい科
が設けられました。
属も1つだけ、属の中の
種も2種だけ、すなわち
2種しかいない科のようです。

タコノアシ科 PENTHORACEAE
タコノアシ属 Penthorum
タコノアシ  Penthorum chinense
ペントルムは5本のおしべの意味、
キネンセは「中国の」の意味の形容語です。
参考文献「改定新版 日本の野生植物2巻」平凡社


2023/8/9
★網走港のカワウとウミウのコロニー

北海道の網走港には,冬期の
流氷から港をまもるための
大きな消波ブロック
(テトラポッド)の列があります。
テトラポッド

ここでは、多数のカワウが
集団繁殖していますが、
その中に少数のウミウの営巣も
認められています。
写真は、今年6月下旬の
このコロニーの様子です。
現在、この2種が同所で繁殖
している場所は他にありません。
またカワウのコロニーは
水辺に面した樹林に作られる
ことが多いため、営巣環境の
面からもこのコロニーは
変わっています。  

ウミウの繁殖している場所
をみると、主に5段くらいに
積み上げられたテトラポッドの
中腹付近に営巣しています。
一方カワウはウミウの繁殖
している高さと同じ高さか
それよりも上部で営巣しており、
一番上の面はすべてカワウの
巣に占められています。
営巣場所の好みが違うのかも
知れません。


画面中央のみウミウの巣と親子。
それ以外はカワウの親子。
ウミウの親は、顔の周囲の
白い部分が目立ちます。

当地では、ウ類は冬期には
すべていなくなります(夏鳥)。
このコロニーでの雛の成育を
見る限り、カワウの方が進んで
いる様に見えます(カワウの方が
早く繁殖をスタートしたかも
知れません)。

博物館の海鳥展示コーナー
テトラポッド



2023/8/2
★ヒメイワダレソウ

境川遊水地公園に沿った路上で
見知らぬ草※に出会いました。
地面を這う生え方が、海岸植物
のイワダレソウの雰囲気に似て
います。
でもイワダレソウよりも小ぶり
ですが、花だけは大きくかわい
らしい印象の草※でした。
もしかしたら新参の外来植物
かもしれないと思い、標本用
として枝先を持ち帰りました。

ヒメイワダレソウ
ヒメイワダレソウ

ヒメイワダレソウ

イワダレソウ
イワダレソウ

イワダレソウ


神奈川県植物誌2018で調べ
たところヒメイワダレソウと
いうペルー原産の植物である
ことがわかりました。
解説にはグラウンドカバー
プランツとして植栽された
ものから逸出とあります。

ヒメイワダレソウの標本
イワダレソウ

分布図を見ると既に県内の
東部や南部を中心に各地で
見つかっているようです。
インターネットでヒメイワ
ダレソウを検索すると多数
の園芸のHPがあがるほど
広く栽培される植物のようです。


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