令和7年10月25日,国立感染症研究所 戸山庁舎で開催された第25回人と動物の共通感染症研究会において,5年次・清永千尋さんが口頭発表を行いました.今回の発表では,水族館で飼育されている鰭脚類におけるMycoplasma phocicerebrale の遺伝子解析および分離培養に関する研究成果を報告しました.本菌は,鰭脚類の口腔に常在していると考えられていますが,アザラシに咬まれたヒトの創部からも分離された例があり,人獣共通感染症のリスクになり得ることが報告されています.そのため動物園・水族館領域にとどまらず,ヒト医療の観点からも重要な意義をもつ菌種として注目されています.当日は,獣医師だけでなく医師や基礎・臨床研究者の先生方も参加しており,ヒト医学と獣医学の双方の視点から活発な議論が行われました.特に,現在問題となっているSFTS(重症熱性血小板減少症)を体験した小動物臨床の先生による講演は,現場の緊張感と危機感が伝わる非常に貴重なお話で,大きな学びとなりました.学術集会後の情報交換会では,医師の先生方や多分野の研究者の方々から質問や助言をいただき,研究をより発展させるための具体的なアイデアを得ることができました.医師と獣医師が一堂に会する本研究会ならではの刺激にあふれた時間であり、非常に有意義な経験となりました。なお,同じく日本大学から発表された獣医公衆衛生学/獣医食品衛生学研究室の野村さん,林さん,黒須さんの発表はいずれもとても丁寧で内容が濃く,大変勉強になる素晴らしい発表でした.同じ学科の先輩方・同級生として発表を拝聴し,とても良い刺激をいただきました. 最後に,本研究を進めるにあたり多大なるご指導・ご助言を賜りました先生方に,この場をお借りして深く御礼申し上げます.
発表演題
飼育下鰭脚類における Mycoplasma phocicerebrale の遺伝子解析と分離培養
〇清永 千尋 1 ,瀬川 太雄 1 ,岩尾 一 2 ,伊藤 琢也 1
(1 日本大学・獣医衛生学研究室, 2 新潟市水族館 マリンピア日本海)



