日本近海に生息するイルカにおける鯨類モルビリウイルス感染の広がりを示唆する共同研究論文が,Microbiology and Immunology誌に受理されました.

本研究は,D4年の田代楓さんが中心となり,東京大学大学院医学系研究科微生物学教室(竹田誠教授)および日本水族館協会と共同で実施されました.
本研究をご支援くださりました先生方,関係者の皆様に心より御礼申し上げます.

本研究では,アジア周辺海域での報告が極めて少ない鯨類モルビリウイルス感染症について,日本近海における潜在的な感染の広がりを強く示唆する知見を得ました.日本近海(野生)で生まれた国内の飼育イルカを対象に,過去のウイルス感染歴を反映する中和抗体の保有状況を解析した結果,40%以上のイルカが鯨類モルビリウイルス対する中和抗体を保有していることが明らかとなりました.
なお,鯨類モルビリウイルスはイルカやクジラに感染する病源体ですが,これまでヒトへの感染は報告されていません.また,本症は急性感染症であることから,現在の飼育イルカの健康状態には悪影響を及ぼさないと考えられます.

論文情報:
Tashiro K, Segawa T, Konishi K, Seki F, Katoh H, Ishibashi T, Takeda M, Itou T.
Serological evidence of cetacean morbillivirus infection in common bottlenose dolphins in Japan.
Microbiol Immunol. 2025: https://doi.org/10.1111/1348-0421.13207.
(日本のバンドウイルカにおける鯨類モルビリウイルス感染の血清学的証拠)