乳牛における乳頭口スコアとケラチンプラグ重量の関係

Ⅰ はじめに

 乳牛において、過搾乳等により乳頭口の角化が亢進し、乳房炎が発症することが知られている。乳牛の乳頭管内に形成されるケラチンプラグは、乾乳期において細菌の侵入を防ぐ重要な物理的バリアであり、泌乳期においても量は少ないが形成されている。本研究では、乳頭口の角化(乳頭口スコア)と、乳頭管のケラチンプラグ重量との関係について検討した。

Ⅱ 材料及び方法

 試験1:と場にて採取した搾乳牛18頭の乳頭60本を供試した。乳頭口の角化の程度により乳頭口スコア(スコア1:正常〜スコア4:重度に角化)を評価した。乳頭を乳頭洞から乳頭口までメスを用いて切開し、露出した乳頭管からケラチンプラグを採取し重量を測定した。また、乳房炎の原因として有意な菌(有意菌)を調べるため、乳汁の細菌検査を実施した。

 試験2:搾乳牛15頭の乳頭60本を供試した。分娩4週間後に、乳頭口スコアを評価し、タペストリー針によりケラチンプラグを採取し重量を測定した。また、乳汁を採取し細菌検査を実施した。

Ⅲ 成  績

 試験1:乳頭口スコア1(n=18)、2(20)、3以上(22)のケラチンプラグ重量は、それぞれ、7.9、9.9、9.9mgで有意な差はなかった。乳汁中の有意菌の有無別にみた場合も、乳頭口スコア別のケラチンプラグ重量に有意な差はなかった。

 試験2:乳頭口スコア1(n=28)、2(13)、3以上(19)のケラチンプラグ重量は、それぞれ、2.9、2.5、6.0mgで、スコア1及び2に比べてスコア3以上が有意に多かった(p<0.01)。また、乳汁中に有意菌がなかった乳頭では、それぞれ、3.2、2.9、5.9mgと、スコア1及び2に比べてスコア3以上が有意に(p<0.05)多く、有意菌があった乳頭では、それぞれ、2.6、2.0、7.2mgと、スコア1及び2に比べてスコア3以上が多い傾向にあった(p<0.10)。

Ⅳ 考  察

 生体の乳頭では有意菌の有無に関わらず、乳頭口スコアが高いとケラチンプラグ重量が増えていた。これは乳頭口の角化の亢進に伴って乳頭管の角化も亢進しケラチンプラグ重量が増えたのではないかと考えられる。いっぽう、と場の乳頭では乳頭口スコア別にみたケラチンプラグ重量に差はなかったが、これは最後の搾乳からと殺までの時間が牛ごとに異なるため、ケラチンプラグの蓄積にばらつきが出たためではないかと考えられる。

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