本学科は、2010(平成22)年に「食で人を幸せにしたい」を基本コンセプトとし、「食をプロデュースする人材を育てる」ことを教育の目的に掲げ、食品経済学科から食品ビジネス学科へと名称変更を行った。2023年現在、本学科卒業生は1万人を超え、食品関連業界を中心に各界で活躍している。食品ビジネス学科では、「食料資源・環境」、「食品産業」、「食文化・食品科学」の3分野を柱に、経済学、経営学、社会学、栄養学、調理学など多彩な視点を取り入れ、食に関する幅広く深い学びについて試行錯誤しながら知見を積み重ねてきた。
第1部の記念式典では、学部執行部ならびに学部校友会から温かいご祝辞を賜った。第2部の記念講演では、学科卒業生である塚越英弘氏(伊那食品工業株式会社代表取締役社長)より「人と事業が育つ風土をつくる年輪経営」と題して熱いメッセージをお贈りいただき、食品ビジネス界のリーダーを志す学生の心に火を灯した。記念シンポジウムでは、本学科に特徴的と言える教育方法が明確化しつつある中で、学科創設80周年、さらには学部改組にあたって本学科のさらなるグレードアップを図るため、「食に関する幅広く深い、新しい学びを探る」をテーマに報告とディスカッションを行った。
第1部 記念式典(13:00~13:40)
開式挨拶 実行委員長 食品ビジネス学科 教 授 清水みゆき
学科主任 食品ビジネス学科 教 授 小野 洋
来賓祝辞 日本大学生物資源科学部 次 長 山室 裕 様
日本大学生物資源科学部校友会 副会長 長島武志 様

閉 式
第2部 記念講演・シンポジウム(13:40~16:00)
〇記念講演「人と事業が育つ風土をつくる年輪経営」
伊那食品工業株式会社代表取締役社長 塚越 英弘 氏(1990年卒)
(*「食ビの人々」ゲストスピーカー事業:記念講演のダイジェスト版は食ビチャンネルでご覧いただけます)
〇記念シンポジウム 「食に関する幅広く深い、新しい学びを探る」
・座 長 食品ビジネス学科 教授 川手督也
【演題・報告者】
・報告1「PBL型の授業導入の試み-食品企業経営学の立場から-」
食品ビジネス学科 専任講師 佐藤奨平
・報告2「PBL型の授業導入の試み-フードコーディネート論の立場から-」
食品ビジネス学科 准 教 授 谷米温子
・報告3「文系出身学生に配慮した食品科学の講義と実習・実験」
食品ビジネス学科 教 授 若林素子
食品ビジネス学科 専任講師 清水友里
・報告4「デジタル化に対応したアクティブラーニングの試み」
食品ビジネス学科 准 教 授 久保田裕美
【コメンテーター】
・学 生 食品ビジネス学科 4年生 越永 美音
・卒業生 株式会社ニッスイ 松原 晋(1988年卒)
・教 員 食品ビジネス学科 教 授 高橋 巌
(*記念シンポジウムで報告された論稿については、学術誌『食品経済研究』(第52号、2024年3月)に掲載)
〇「学科に期待すること」
食品ビジネス学科校友会 会長 青木 泰祐 様
〇特別表彰
食品ビジネス学科校友会 顧問・前会長 横川 屹 様
〇記念写真撮影
【寄稿】食品ビジネス学科ブランドの構築に向けて―私のコメント―
株式会社ニッスイ 松原 晋(1988年卒業)
このたびは学科創立80周年を迎えられ、誠におめでとうございます。
私は1988年の元号最後の世代、昭和63年の卒業生でございます。
本日は諸先輩方が多々いらっしゃる中で大変僭越ではございますが、学科校友会からのコメンテーターとしてこの壇上におりますことをたいへん光栄に感じております。
80年の長い歴史の中では、卒業して35年目の私はまだまだ若輩者だと存じております。
一方、生まれた時点でインターネットがあった世代、いわゆるジェネレーションZ世代の皆さんから見れば、私は皆さんの親御さんと近い年齢ではないかと思いますので、シニア世代のひとりであり、そういった意味では世代間のギャップが各世代において存在しているのかもしれません。
シニアは何歳からという明確な定義はないそうですが、私自身は自分のことをシニアだとはまったく自覚しておりません(会場は笑い声)。
むしろ、私はまだまだ青二才で知らないことがたくさんあることを自分自身で自覚しております。
古代ギリシャの先人の教えに由来する教えで「無知の知」という言葉がありますが、自分の無知を認識し、謙虚な姿勢で学ぶことが重要であるという考え方です。
一般論ではございますが、世の中には寒くもないのにポケットに手を入れて高圧的な態度の人も存在したりしなかったり。
一方、実れば実るほど頭(こうべ)をたれる稲穂のように、地位や名誉を手にしても謙虚な姿勢の方も数多くいらっしゃいます。
いま、世界では貧困や紛争、地球温暖化の問題など様々な社会課題が存在しております。
日本においては少子高齢化や人口減少、人手不足の問題など課題も山積していますが、「食」をキーワードとして社会課題を解決するテーマのひとつに「健康寿命の延伸」があります。
食品ビジネス学科における「食に関する幅広く深い新しい学び」は、社会課題の解決にもつながると確信しており、世代間のギャップも乗り越える実践的な学びの場だと感じております。
一般的には、企業は雇用を守るため、会社を存続させるために売上と利益を確保することが必要です。
しかし、売上至上主義で不正を行い、さらにはそれを隠すような隠ぺいなどがあれば会社はあっという間に消滅するでしょう。
私は20代の頃は世の中にヒット商品を出す仕事にかかわりたいと思っており、自分が開発に関わった家庭用冷凍食品「発芽玄米ひじき焼きおにぎり」が店頭に並んだ感動は今でも覚えておりますが、今ではロングセラー商品こそが持続可能な価値ある商品であることを再認識している次第です。
世の中の多くの皆様に商品のことを知ってもらい、長くご愛好いただくことにより信頼の絆が生まれます。
この歴史の積み重ねで構築できる価値を一言で申し上げますと、これは「ブランド化」となります。
いま、食品ビジネス学科はまさにブランド化さえも可能な歴史を積み上げているのではないでしょうか。
食品ビジネス学科ブランドには、多くの食品ビジネス学科らしさが存在していると思われます。
そのため、他の大学がカリキュラムだけを模倣しようとしても、簡単に追いつくことはできないでしょう。
また、食品ビジネス学科では学科公式ロゴが完成しております。
さらに2022年4月に学科公式キャラクターフードッグが誕生していますので、ブランド構築の観点ではフードックは単なるキャラクターではなく、「ブランドシンボル」となります。
強いブランドを構築するためには、3段階のステップがあると言われています。
まずはそのブランド知っていただく認知、次に信頼、そしてそのブランドに対する愛着の感情です。
母校に関わるご縁と絆は、食品ビジネス学科の恩師をはじめ、同じ学科の仲間、研究室やサークル活動における先輩、同期、後輩など様々ありますが、これからも持続可能な絆と生涯を通じた学びさえも可能である母校に末永く寄り添い続けたいと考えております。
本日は誠におめでとうございます。
2023年11月25日