私たちは、構造決定・機能評価・定量を基軸として、以下に示す「新たな食資源・有効成分の探索」「未利用資源の有効活用」「食品及び食品添加物の分析法の開発」に取り組んでいます。これらの多くの研究は、他研究室、他学科、他大学、公的研究機関、企業と共同で実施しています。
大学院生の入学も歓迎していますので、興味がある方は是非お問い合わせください。
新たな食資源・有効成分の探索
ゴマ葉中の有用成分の探索と生合成機構解明
湘南ゴールドみかんの色素・香気成分分析
未利用資源の有効利用
食品廃棄物系バイオマスからの新規蛍光物質への変換プロセス
ゴマ葉中の有用成分の探索と生合成機構解明
ゴマ種子やゴマ油は食生活になじみ深く、関連する研究も数多く行われていますが、ゴマ葉についてはあまり知られていません。中薬大辞典によると、下痢や痢疾の病人が飲料として用いると刺激や緩和する作用があることや、筋肉や関節の痛みを緩和する風痛疾痺、子宮出血(崩中)や吐血の治療に用いられるとされています。 私たちは、(株)わだまんサイエンスとの共同研究で、ゴマの若葉にはアクテオシドというポリフェノールが乾燥重量で1.2%も含まれることを明らかにしました。
アクテオシドは種々の薬用植物に含まれていますが、その含量が0.002~0.08%と少なく、ゴマ葉のように多く含む植物は稀有であること、またアクテオシドは抗酸化性や肝保護作用、抗炎症作用、鎮痛作用などさまざまな生理作用を有し、免疫抑制剤、抗アレルギー剤、抗糖尿病剤としての応用が期待されていますが、難合成であることが知られています。
このようなことから、アクテオシドを豊富に含むゴマ葉の有効利用が期待され、その局在部位や、生合成経路について研究しています。
食品中の食品添加物分析法の
開発及び性能評価
日本では、食品衛生法に基づいて、厚生労働大臣の指定を受けた食品添加物(指定添加物)のみを原則として使用することができます。このため、食品添加物の使用基準や食品の使用表示の適合性および日本では許可されていない食品添加物(指定外添加物)の使用を監視するための分析法は、食品添加物のリスク管理、ひいては消費者の健康や食品添加物の安全性の確保において非常に重要です。私達は食品添加物に関する公的な分析法の更なる精度等の向上に向けた研究の一環として、食品中の食品添加物分析法の開発や既存の分析法の性能評価に関する検討を公的研究機関などと共同で実施しています。
定量NMRを用いた食品中の
化学物質分析法の開発
1H-NMRを用いた定量NMR(1H-qNMR)は、2つの化合物間のシグナル面積強度比が「各化合物のモル濃度×各置換基上の水素数」に比例する原理を利用した定量法です。一般的に、NMRは原子核を対象に測定を行うため、これら2つの化合物は同一の化学構造である必要はありません。従って、本法は、認証標準物質のような1つの標品を内標準物質として用いることによって、様々な測定対象化合物の国家標準へとつながる定量値を得ることができます。また、1H-qNMRはシグナルの分離機構がクロマトグラフィーとは根本的に異なるため、クロマトグラフィーで分離が困難な測定対象化合物についても、本法で定量が可能となるかもしれません。特に、食品のような夾雑成分を多く含む試料では、測定対象化合物を迅速かつ精確に定量できる有用なツールの1つとしてその威力を発揮することが期待されます。私達は、このような 1H-qNMRの特長を生かして、本法を利用した食品中の化学物質分析法の開発など、食品分析の更なる向上へむけた研究を行っています。