環境適応生物を活用する環境修復技術の開発 日本大学21世紀COEプログラム
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メコンデルタ(ベトナム)
 メコンデルタはベトナム南部に位置し、ベトナムのコメ生産量の約5割を生産する穀倉地帯である。当COEプログラムでは、カントー大学農学部のDr. Nguyen Bao Ve教授を中心とするグループの協力を得て、土壌学、作物生産・植物学、微生物・植物相互作用、社会科学の各分野の研究者が共同して研究を行う拠点を形成した。すなわち「土壌学的見地から同地域の作物生産性の問題点をとらえ、耐性植物や有用微生物を見出して酸性硫酸塩土壌の作物生産性の向上を図る『自然科学的研究』」と、「環境修復技術の社会経済評価と技術移転条件に関する『社会科学的研究』」とが同一地域で同時進行している。メコンデルタは双方の研究を融合して酸性硫酸塩土壌の修復の試みを実践する場といえる。
 当拠点の主要な研究サイトは、HauGiang省HoaAn村のカントー大学農学部試験農場(Center of Experimental Research and Biodiversity)を中心としたエリアと、KienGiang省HaTien郊外の農地である。後者では、RachGia農業普及所の協力も得ている。


◎カントー大学農学部試験農場(生物多様性研究実験センター)
 農場は、キャンパスのあるカントー市から約40キロ南西のHauGiang省HoaAn村に位置する(写真1,2)。低生産性のために放置されている同農場内の区画を研究対象地とし、その土壌は酸性硫酸塩土壌であることが既に確認された(写真3)。ここの土壌は強い酸性であるにもかかわらず、何種類かの雑草が繁茂している。これまでの研究から、それらの雑草は特殊な生理的機構を備えることにより大きな酸性耐性能をもつことが明らかにされつつある(「研究内容」のページの「酸性硫酸塩土壌適応植物の探索とその適応機構」参照)。今後、これらの植物種が酸性硫酸塩土壌修復のキーとなる可能性がある。
 農場周辺の農家では、酸性硫酸塩土壌対策として、圃場の水管理の重要性が認知されている。農家へのインタビュー調査の結果、適切な水管理にリン酸施肥を併用する等の酸性硫酸塩土壌対策を行い、7t/haを超える収量(11月−1月作付)をあげているとする農家もあった。その一方で、粗放的な栽培をしている農家では、3t/ha程度の収量しか得られておらず、生産性向上のためには、酸性硫酸塩土壌対策技術が重要な役割を果たすと考えられる(写真4)

(写真1)カントー大学農学部試験農場(乾期5月初旬)

(写真2)カントー大学農学部試験農場(雨期8月中旬)

(写真3)研究サイトでの土壌サンプリング

(写真4)農家インタビュー調査


◎KienGiang省HaTien郊外
 CanTho省の西隣のKienGiang省はカンボジア国境に接する地域であり、西側はタイ湾に面している。省内には縦横に大小の運河が張り巡らされている。国境の街HaTien近郊のPhuMyでは稲作が行われているが、著しく低い生産性のために耕作放棄されている土地が存在する(写真5)。RachGia農業普及所の協力を得て、ここをメコンデルタでの2ヶ所目の研究対象地に選定した(写真6)。調査の結果ここの土壌も典型的酸性硫酸塩土壌であることが確認された。耕作放棄後同地にはイ(イグサ)とカヤツリ類が進入しており、フトモモ類の潅木も確認された。酸性耐性能の大きな植物種の探索や、植物栽培試験がこれから実施されるところである。
 メコンデルタでは、コメ生産をやめて、耐酸性のあるメラルーカ材の栽培やエビ養殖に切り替える農家も各地で見られる(写真7,8)。前者は土壌制約によるものだが、エビ養殖への切替は、主に経済的動機による。メコンデルタにおける酸性硫酸塩土壌対策技術は、メコンデルタ農業の発展方向との調和にも、配慮して検討する必要があると考えられる。

(写真5)HaTien近郊の調査サイト

(写真6)RachGia農業普及所

(写真7)メラルーカ材の集積

(写真8)沿岸部のエビ養殖池

(野口章、松本礼史)


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