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生命農学科通信 vol.08「学会賞受賞-岩野秀俊教授-」
岩野秀俊特任教授は、2018年3月19日~20日に名古屋大学農学部にて開催された平成30年度蚕糸・昆虫機能利用学術講演会(日本蚕糸学会第88回大会)にて、平成30年度の日本蚕糸学会賞を受賞されました。受賞研究題目は、「家蚕微粒子病における感染発現と病原性の遺伝的多様性の解明に関する研究」です。
カイコの微粒子病は、ウイルス病や卒倒病(細菌病)、硬化病(カビ病)などと共に、古くから蚕糸製造業の重要な疾病の一つとして知られており、かつて19世紀には欧州で大流行して養蚕業に壊滅的な被害をもたらしたこともあります。微粒子病を引き起こす病原体として Nosema bombycis という原生動物(微胞子虫)が関与していることがわかっていました。
微粒子病に感染したカイコ幼虫体内では、各組織や器官に多数の胞子が形成されて組織的破壊が起こり、最終的に死に至りますが、体内における N. bombycis の感染増殖の詳細な機構については、主要な疾病にも拘わらずすべてが解明されないまま残されていました。また、カイコや野外昆虫から発見される N. bombycis の中には病原性の弱い株なども含まれており、これらの株と宿主との関連性などについても、不明な点が多かったわけです。
岩野秀俊特任教授の研究の専門分野の一つは昆虫病理学ですが、これまで行ってきた以下の3つの研究課題について明らかにすると共に、多くの研究業績や功績などが評価されて今回の受賞となりました。
1.家蚕微粒子病病原体 Nosema bombycis の生活環の完成と体内感染伝播機構の解明
2.Nosema bombycis 系統における病原性との相関
3.微胞子虫のゲノム解析手法による系統識別
岩野先生の今後益々のご活躍を祈っております。
2018年5月15日