生命農学科の魅力と取組みを発信
生命農学科通信 vol. 42「花の老化」
本日は花の日(8月7日)ですね。
花の魅力は何といってもその美しさ
しかしながら、その美しさは永遠ではありません・・・。
生物はいずれその命が尽きてしまいます。
花も、いずれは萎れてしまったり、散ってしまいます。
農水省の調べによると、消費者が花を購入するときに重要視することの一つに「花の日持ち性」が挙げられるようです。
やはり、できるだけ長くその花を見ていたいというのが消費者の願いです。
せっかく購入するなら、できるだけ長く楽しみたいですよね。
そんなわけで、これまでに多くの研究者・生産者さん・市場の人たち・お花屋さん・・・色々な人たちが花の延命に尽力してきました。
花の老化の原因を明らかにして、その老化原因を極力除くことによって、花の寿命を延ばすことができます。
お花は色々な種類がありますが、近年切り花の消費量が増加しているダリア!!
ダリアは花の形、色のバリエーションがとっても豊富で、超大輪の品種もあります。
その大きくて華やかな花の姿は、多くの人の心を魅了してきました。
まさに、魔性の花です。
(『プロフェショナル仕事の流儀』に出演したダリアの神様鷲澤さんの言葉を引用しました。)
この美しすぎる花ダリアは、寿命が短いということが最大の欠点です。
前置きが長くなってしまいましたが・・・
生命農学科では、ダリアの花の寿命を延長するという研究を進めています。
これまでの研究成果では、ダリアの切り花の老化の一つの要因は生け水内における細菌の増殖であることが明らかになりました。
増殖した細菌は茎の導管に詰まってしまい、それによって水揚げが悪くなってしまうということが考えられています。
そのため、抗菌剤を処理すると、生け水内の細菌増殖が抑えられて、老化は抑制されます。
さらに、抗菌剤に加えて糖質を処理すると、花の色の退色が抑えられる等の品質保持効果が見られます。
これらの研究成果はThe Horticulture Journal(2019年)に掲載されました!
(上記の論文タイトルをクリックすると論文の掲載ページにいけます)
花の老化に関わる植物ホルモンとしては、『エチレン』が有名です。
花の種類によっては花の老化に伴ってエチレン生成量が上昇し、それによって劇的に老化が進行するものもあり、代表的なものだとカーネーション等が挙げられます。
このような花ではエチレンの作用・合成を阻害する薬剤を処理することによって、花の老化を抑制することができます。
一方で、キク科の花は花の老化にはエチレンがあまり関与しないということが言われていました。
ダリアもキク科の植物なので、花の老化にはエチレンがあまり関与しないと考えられてきました。
しかし!ダリアの場合には、品種によっては花の老化にともなって、エチレン生成量が大きいものも存在し、エチレン処理された花では老化が促進する品種が多く存在したのです。
ダリアはキク科の植物でありながら、ある程度花の老化にエチレンが関与していることが分かりました。
この研究成果はScientia Horticulturae(2020年)に掲載されました!
(上記の論文タイトルをクリックすると論文の掲載ページにいけます)
☆上記の研究はJSPS科研費(若手研究B)【17K15227 】の助成を受けたものです。
現在は、なぜダリアの花の寿命は短いのか?老化を促進する遺伝子があるのではないか?という仮定のもと、老化に関与する遺伝子の探索を行っています。
これまでに、他の植物で老化を促進することが明らかにされている遺伝子に類似した遺伝子がダリアにも存在することが分かっています。
現在、生命農学科の4年生が卒業研究として、その遺伝子の解析を進めています。
日持ちが短いと言われているダリアですが、今後色々な技術で日持ちが延長できるかもしれないですね。
大学での学び(研究)において教科書の知識は使いますが、重要なのは自分で何かを発見すること、そしてそれを探求すること。
日本大学生物資源科学部生命農学科には、そんな研究環境・設備が整っています。
一緒に新しいことを発見する研究をしてみませんか?
生命農学科で行っている研究は『生命農学科公式HPの研究室紹介』でも紹介しています。
Informationや生命農学科通信でも随時研究成果を更新していますので、是非チェックしてくださいね。
2020年8月7日