演習林情報

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水上演習林観察日誌


水上演習林観察日誌39

 気象記録の多い季節でした。10月19日の東京都心の温度は12.3℃となり、1957年10月20日以来60年ぶりの低い気温になりました。強風域が半径800q以上の超大型台風21号は10月23日に1991年観測以降初めて静岡県に上陸しました。秋雨前線と相まって各地に土砂崩れや浸水被害が出ました。今回は紅葉と自動撮影装置で撮影された動物を紹介します。

紅葉

 樹木は落葉樹と常緑樹に分けることができます。落葉樹は春に芽吹き、秋に一斉に落葉します。常緑樹も落葉しますが、落葉前に新しい葉が準備されていて常に緑の葉がついています。一般的には落葉樹が葉を落とす前に色づくことを紅葉と言いますが、葉が色づくことを指すこともあります。常緑樹もクスノキのように落葉前に紅葉する木もあります。またカナメモチのように芽吹き後の新葉が紅葉する木もあります。紅葉するのはクロロフィルを太陽光から守るためと言われています。紅葉は秋になって光合成能力が落ちることよって、葉の維持が難しくなりクロロフィルが分解され始めることによって起こります。気温が8℃以下になると始まると言われ、日中の天気が良く昼夜の寒暖差が大きいと色づきが良くなると言われています。落葉樹の紅葉は赤くなる紅葉(こうよう)、黄色くなる黄葉(こうよう・おうよう)と褐色になる褐葉(かつよう)に分けることができます。

 紅葉は葉の中にあるクロロフィル(緑色の色素)とカノチノイド(黄色の色素)が分解され、アントシアン(赤の色素)が作られることによって赤く見えます。

メグスリノキ
メグスリノキ
ハウチワカエデ
ハウチワカエデ

 黄葉は葉の中にあるクロロフィルとカノチノイドが分解される際、クロロフィルの方が先に分解されるので黄色の色素が目立つようになります。

オオバクロモジ
オオバクロモジ
ダンコウバイ
ダンコウバイ

 同じ樹種でも紅葉するものと黄葉するものがあります。樹齢や生育環境等によっても変化します。

ヤマモミジ
ヤマモミジ
ヤマモミジ
ヤマモミジ

 褐葉は葉の中にあるクロロフィルとカノチノイドが分解され、タンニン系の物質が作られるために起こると言われています。代表する木としてブナ・コナラ・ケヤキ等を挙げることができます。

 紅葉の山と言えば北アルプスの涸沢が有名です。

涸沢
涸沢
涸沢
涸沢

自動撮影装置

 ハクビシンが子供をくわえている写真が8月23日に3回撮れました。3回とも同じ方向を向いていました。反対方向を向いた子供をくわえていない写真が1回写っていました。巣穴の引っ越しではないかと思われます。巣穴の引っ越しは危険を感じた時に行うと言われています。8月23日前に大きな気象現象は観測されていません。動物間のトラブルでもあったのでしょうか。1頭目の子供は2頭目3頭目の子供より大きく見えます。

2017/8/23 19:47
2017/8/23 19:47
2017/8/23 20:09
2017/8/23 20:09
2017/8/23 20:16
2017/8/23 20:16
2017/8/23 20:55
2017/8/23 20:55

 日本大学 生物資源科学部森林資源科学科 森林動物学研究室の中島啓裕先生から下記のコメントを頂きました。

 「ハクビシンに関してですが、確かに子供をくわえて運んでいますね。野生のハクビシンがどこで子育てするかという情報はほとんどないのですが、中国での報告では樹洞や岩の割れ目などが使われているそうです。そういう場所に危険が迫っていると親が判断した時、子供を移動させることがあるようです。 私もアフリカのジャコウネコの仲間のジェネットという種類で同様の観察をしたことがあります。サバンナの岩陰に3頭の子供がいたのですが、翌日にはいなくなっていました。我々が発見したことに気づいて、親が運んだんだろうと思っています。 ハクビシンが最初に大きい個体を運んでいたことも興味深いと思いました。鳥類や哺乳類などの子育てをする動物では、より大きい個体を優先して守る傾向があることが分かっています。それまでの育児投資量が大きいので、死んだ場合の損失が大きくなるからだと考えられています。今回のハクビシンも1例だけではありますが、親が適切な判断をしたということかもしれません」。

 ニホンツキノワグマの親子のじゃれあう姿が面白いので見てください。この動画に関しても中島先生からコメントを頂きました。

 「めちゃくちゃかわいいですね。親子の遊びの姿が撮られることはツキノワグマでは稀なので、非常に貴重に映像だと思います」。

ニホンツキノワグマ親子動画

動画(1)

(2017年11月)