今年のお正月は暖かい日が続きました。その後寒気が南下して寒い日が続き、冬型の気圧配置も強まり大雪になりました。その一方関東地方では2月17日に春一番が吹くなど寒暖の変化が激しい冬になりました。今回は冬季の樹木観察方法を紹介します。
前回は主芽と副芽の関係・その他の冬芽の名称を紹介しましたが、今回は特徴のある葉痕・果実等を紹介します。
葉痕の形や中にある維管束痕の形を動物に例えると面白いです。特徴のある葉痕は樹種判別の材料になります。
![]() オニグルミ葉痕と維管束痕 |
![]() キハダ葉痕 |
オニグルミの葉痕と維管束痕はヒツジまたはサルの顔に見えませんか。キハダの葉痕は馬のひづめに見えます。
![]() ハリエンジュ葉痕とトゲ |
![]() ウワミズザクラ落枝痕 |
ハリエンジュの葉痕とトゲはコウモリに見えます。ウワミズザクラは頂芽と頂芽に近い側芽から芽吹いた枝を除きほとんどの側枝が脱落します。芽吹きと脱落を繰り返すので、節くれだった特徴のある枝になります。
特徴がある果実は樹種判別の材料になります。
![]() チドリノキ果実 |
![]() ケンポナシ果実と果軸 |
2個の果実が合わさってプロペラ形をした果実はカエデ科の判断材料になります。写真のチドリノキは一般的なカエデ科の葉のような切れ込みのない楕円形の葉をしています。
ケンポナシの丸い果実はふくらんだ果軸の先につき独特な形をしています。ふくらんだ果軸は霜が降りるころに甘くなり食べられます。
![]() サワグルミ果穂と果実 |
![]() オオバボダイジュ果実 |
サワグルミの果実には翼状の2枚の小苞葉があり風散布されます。果穂の長さは30pぐらいあり目立ちます。
オオバボダイジュの花序の柄には苞葉がついていて風散布されます。飛散距離は10〜20mぐらいです。シナノキ属の果実は苞葉がついた独特の形をしています。
冬まで果実が残っていると樹種判別しやすくなります。
![]() ヤシャブシ |
![]() ヤマハンノキ |
カバノキ科ハンノキ属の樹木は冬まで果穂が残っています。ヤマハンノキは葉・雄花序・雌花序の冬芽が見られます。
![]() アカシデ果穂 |
![]() ヌルデ |
カバノキ科のシデの仲間(クマシデ属)は果穂がよく残っています。シデ(四手・紙垂)はしめ縄から垂れている稲妻形の紙のことを言います。アカシデの別名シデノキは垂れ下がった果穂を四手に見立てて名前がつきました。種子は果苞に包まれて風散布されます。
ヌルデの果実は熟すと白粉を分泌します。戦後塩のない時に代用品としてなめたことがあると先輩から聞きました。円錐状花序の果軸・果実は冬まで残っています。
![]() ツルアジサイ |
![]() イワガラミ |
ユキノシタ科のツルアジサイは装飾花が4枚で、イワガラミは装飾花が1枚です。装飾花が残っていればすぐ分かるのですが、冬芽と樹皮の模様にも違いがあります。
![]() ツルアジサイ(左)とイワガラミ冬芽 |
![]() ツルアジサイ(左)とイワガラミ樹皮 |
ツルアジサイの冬芽は紡錘形で先がとがっています。イワガラミは卵形で毛が密生しています。ツルアジサイの樹皮は紙状にはがれます。
![]() ツルウメモドキ |
![]() キリ |
花材に利用されるツルウメモドキの果実は冬まで残っていて、橙色の仮種皮は遠くからも目立ちます。
キリは裂開した果実が冬まで残っています。また特徴ある花芽が同時に見られます。
![]() リョウブ |
![]() タニウツギ |
まだら模様の樹皮・芽鱗の形がナポレオンハットの形に似ているなど特徴の多いリョウブですが、裂開した果実も冬まで残っています。
タニウツギは主に日本海側に分布します。裂開した果実が冬まで残っています。
![]() ハリエンジュ |
![]() フジ |
マメ科の樹木果実は冬まで残る樹種が多いです。
(2017年3月)