今年の1月は昨年の冬同様に冬型の気圧配置が続き、寒い日が続きました。今回はみなかみ町の山と冬季の樹木観察方法を紹介します。
谷川岳の氷河地形について観察日誌12でお話ししましたが、一ノ倉沢の駐車場に解説板が設置されていますので、解説文を付記しておきます。
![]() 対岸から見た一ノ倉沢 |
![]() 解説板 |
皆さんが立っている場所の標高は約890mで、一ノ倉沢最上部の標高は約1,900mあり、標高差約1,000mの断崖となっています。 この地域は古い時代には陸地でしたがその後沈降を始め海になっていきました。海の時代は600万年ほど続きましたが、次第に地盤の隆起と激しい侵蝕作用を繰り返しながら、谷川岳を中心とする初期の山脈が誕生したと思われます。その後、地下に石英閃緑岩のマグマが生まれ、マグマは硬い岩石より軽いためゆっくり上昇し、上にあった花崗岩(6,500万年前)や、またその上にあった蛇紋岩の層を持ち上げました。このため石英閃緑岩が一番下になっているのです。この重なり方が谷川岳の誕生の経過を物語っています。 標高1,400m付近より低い所に灰色っぽく見られるのが石英閃緑岩で、逆に1,400m付近より高いところに黒っぽく見える岩が蛇紋岩です。この蛇紋岩は、土壌になりにくく、ニッケルや鉄、マグネシウムに富み植物の成長を阻害するため、ほとんどの植物が入ってこられませんが、この岩場でしか見られないめずらしい植物もあります。(久保誠二) 一ノ倉沢の岩壁は、7万年前から1万年前までの最終氷期に、谷を埋めていた氷河の侵蝕で山腹がえぐりとられて形成されました。削り取られた岩屑は氷河の末端まで運ばれて堆積し、モレーン(※)をつくりました。駐車場の背後一帯の高まりがモレーンで、氷河は当時ここまで流れ下っていました。モレーンはマチガ沢や幽ノ沢にもあります。(小畴尚) 現在日本で氷河地形が確認されている場所は、谷川岳の他、日本アルプス、日高山脈、飯豊連峰、越後三山付近などとなっています。 ※モレーン(moraine:堆石とは、氷河で削り取られた岩石・岩屑や土砂などが土手状に堆積した地形。)
湯檜曽川に面する谷川岳東面のマチガ沢、一ノ倉沢、幽ノ沢は、いずれも道路が横切る海抜900〜1,000mのところでは幅は狭いのに、その少し上流から上で谷幅が広がり、谷を囲む壁が急な崖になっていて、断面がU字形を呈しています。これは1,000m付近を境にして谷の上流側が、川ではなく氷河によって侵蝕されたことを物語っています。
マチガ沢、一ノ倉沢、幽ノ沢にはU字状の広い谷の下部、海抜1,000m付近に大きな岩塊を含む堆積物が、谷を塞ぐような形で分布しています。堆積物は粘土から岩塊まで、さまざまな大きさのものが乱雑に混ざっていて、川が運んできたものではないことが明らかです。堆積物の分布範囲と中身から、これは氷河によってもたらされたモレーンと判断できます。
![]() 谷の形株 |
![]() モレーン |
解説板の拡大図も添付しましたが、鮮明に見えないようですので、興味のある方は一ノ倉沢まで観察に出かけてみてください。
上越線後閑駅改札口の反対側に見える山頂が平らな山が三峰山です。その先、上牧駅の利根川の向こう側にも山頂の平らな山が見えます。こちらの山が大峰山です。どちらもテーブル状の地形をしています。山頂は約600万年前に噴出した火砕流よってできた溶結凝灰岩の堆積物からできています。三峰山と大峰山は同じ溶結凝灰岩でできていますので、同一平たん面だったと考えられています。この溶結凝灰岩は硬い火山岩ですが、その下には軟らかい層があり、利根川などの侵食に耐えた結果としてテーブル状に残ったものです。ギアナ高地のテーブルマウンテン・アメリカ南西部の乾燥地帯にできるビュートも構造・でき方は同じといえます。
![]() 三峰山 |
![]() 大峰山 |
冬季の樹木判別方法の一つとして、樹形も判別材料になります。
ほうき形・扇形の樹形としてケヤキを挙げることができます。但し、公園や街路樹に植えられているものに限られます。林の中ではほうき形になるとは限りません。
主軸が伸びて輪生状に枝が伸びるマツのような枝張りをするものとしてミズキを挙げることができます。
![]() ほうき形のケヤキ |
![]() 階層状のミズキ |
枝の太さも判別材料になります。枝の太い樹種としてオニグルミ・キリ・ホオノキ・トチノキを挙げることができます。
![]() オニグルミ樹形 |
![]() 太い枝 |
![]() ホオノキ |
![]() トチノキ板 |
(2012年2月)