演習林情報

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水上演習林観察日誌15

 今年の樹木の果実は順調に育ってくれました。その中で人や動物にとって関心の高いブナを中心に話をしたいと思います。

ブナ

 ブナの花は水上演習林観察日誌5に、雌しべについては同7に書いてありますので読み返してください。ブナの果実は9月下旬ごろから殻斗が割れ、中の堅果(どんぐり)が落下し始めました。演習林のブナは豊作のようです。森の動物にとってブナの実は久しぶりのごちそうです。

大量の殻斗
大量の殻斗
顔を出した堅果
顔を出した堅果
落下した堅果
落下した堅果
3稜形の堅果
3稜形の堅果

 ブナの実は殻斗の中に2個の堅果が入っています。堅果はクリの実を小さく細長くしたような3稜形でソバの実に似ています。そこでブナのことをソバグリとも言います。堅果は長さが10〜16o、生重が120〜370rで、脂肪を28〜32%含む栄養価の高い種子です。ナラ類に含まれるタンニンを含んでいないため、人が食べてもおいしく感じられます。堅果は豊富な貯蔵養分のため、ツキノワグマ・ネズミなどに大量に食べられてしまいます。 ブナの実は大型種子のため、樹冠の縁から5m、風下側で最大30mまでしか飛散しません。しかし、ネズミ類やカケスなどの鳥類は後で食べるため、種子を土の中に貯蔵する性質があるので、豊作年においては貯蔵種子の食べ残しが翌年の春にまとまって発芽し散布の手助けもしています。

ツノハシバミ

 ツノハシバミの実も大量になりました。果実の総苞の先が筒状に長く伸び、ツノのような形をしていることからツノハシバミの名前が付けられました。果実の写真からも分かるように総苞には刺毛が生えていますので、中の堅果を取り出す時はゴム手袋をしないと毛が刺さってしまいます。

ツノハシバミの株
ツノハシバミの株
果実
果実
上の株から採れた果実
上の株から採れた果実
果実の中の堅果
果実の中の堅果

 ハシバミ属の堅果は古くから食用にされてきました。ツノハシバミの堅果も生食できるほどおいしいです。ヘーゼルナッツと言われているのはセイヨウハシバミの堅果のことです。


紅葉

 今年の紅葉は気温の高い日が続いているため10日間ぐらい遅いようです。

谷川岳10月27日
谷川岳10月27日
7月末の豪雨で濁ったままの藤原湖(演習林11月1日)
7月末の豪雨で濁ったままの藤原湖(演習林11月1日)

高崎市染料植物園

 高崎市の染料植物園(高崎市染料植物園は、古くから伝えられてきた日本の染織文化やその魅力を多くの人々に伝えるために造られた植物染色のテーマパークです。園内には染料植物の道をメインに、昔から衣服などを染める原料に使われてきた代表的な染料植物が、たくさん植えられています。染色工芸館では染織品を展示し、草や木から染められるさまざまな色を見ることができます。また、草木染・藍染の講習会や染色体験では、自然の織りなす色を肌で感じ、時を超えた彩りの世界を楽しむことができます。以上ホームページより)は自前の藍ガメを持ち、ハンカチやバンダナを輪ゴムで縛り、絞り染の体験が2時間でできます。この藍染体験の面白さ・難しさにはまって、月1回は通っています。藍染のほかにも草木染の染色体験もできます。また、いろいろな講習会が企画されていますので、興味のある方は高崎市染料植物園のホームページ (http://www.city.takasaki.gunma.jp/soshiki/senryou/)を御覧ください。

園内の解説板の一部を紹介します。

ウワミズザクラの染色解説板
ウワミズザクラの染色解説板
オニグルミの染色解説板
オニグルミの染色解説板
キハダの染色解説板
キハダの染色解説板
アイの染色解説板
アイの染色解説板
一番初めの作品
一番初めの作品
イメージ通りできた作品
イメージ通りできた作品

 園内には160種類・約17,000本の染料植物が植えられています。植物には名板が付いています。更に約90種類の草本・木本植物には染色解説板が設置されています。染色体験以外にも園内の樹木を観察するだけでも面白いと思います。

(2011年11月)