今年の1月は冬型の気圧配置が続き、降雪と寒い日が続きました。今回は谷川岳と冬季の樹木観察方法を紹介したいと思います。
観察日誌8で紹介しました谷川岳は標高(1977m)のわりに遭難者が多く、魔の山と呼ばれています。これは日本三大岩場の一つである一ノ倉沢で代表されように岩場が多いこと、日本海と太平洋の分水嶺であることから天候が急変しやすいこと、また冬の季節風が強く多雪地域であることなどに因るものです。
谷川連峰の特徴として稜線が非対称地形になっていることが挙げられます。つまり、西の新潟県側(写真の左側)が緩く、東の群馬県側が急峻な岩壁になっていると言うことです。
また亜高山帯の針葉樹林(シラビソ・オオシラビソ)が欠如し、灌木やササ原が生育していることです。この灌木やササ原が高山帯の植生のように見えることから偽高山帯と呼ばれています。
![]() 非対称地形 |
![]() 偽高山帯 |
谷川岳登山の拠点谷川岳ロープウェイ土合口駅から、国道291号が湯檜曽川に沿って一ノ倉沢まで続いています。明治18年に開通した国道で、新潟県の清水部落まで続いていました。雪崩によって道が崩壊し、今は一ノ倉沢まで車で行くことができます。車で行くことができますが、ブナ林の気持ちの良い林が続いていますので、ハイキングもかねて歩いて欲しい道です。
谷川岳に氷河があったかどうかについてはいろいろ議論されてきました。1999年小疇らによって、マチガ沢・一ノ倉沢・幽ノ沢でモレーンが確認され、氷河があったことが実証されました。
谷川岳ロープウェイ土合口駅から歩き始めると、まず群馬県谷川岳登山指導センターがあります。入口にはおいしい水が引かれ、中には資料が飾ってありますので立ち寄ってから出発して下さい。約30分でマチガ沢に着きます。マチガ沢は谷川岳のトマの耳とオキの耳の間の沢です。出合に5〜6mの岩場があり(写真の右側)、山岳警備隊がクライミングの練習に使っています。また、5月連休後には雪渓でスキーの練習が行われています。
![]() マチガ沢 |
![]() 新雪 |
マチガ沢から約30分で一ノ倉沢に着きます。途中には国道建設時の石垣が残っています。最後の大きなカーブを曲がると、一ノ倉沢の岩壁と雪渓が眼前に圧倒するように広がっていて、アルプス的な雄大な景色です。
谷川連峰は冬の季節風に直面する地形であることから、風下側(一ノ倉沢側)に雪庇や吹きだまりができ、それらが雪崩となって落下し、谷底に雪が貯まり厚さ60mにもなることがあり、秋まで残雪として残り、越年雪渓になる年もあります。
雪渓の上部には雪崩地形のアバランチシュート(樋状の急斜面・滑り台)が発達しています。
ロッククライミングの場として有名ですが事故も多く、1960年の骨落事故では、遺体収納に自衛隊が出動して話題になったそうです。
![]() 一ノ倉沢の雪渓(2006/9/30) |
![]() 一ノ倉沢出合(2011/1/24) |
冬季の樹木判別方法の一つとして、つる植物かどうかと言うのが一つの手がかりになります。
樹木に自分で巻きつくものです。巻きつく方向は樹種によって決まっています。右巻きと左巻きに関していろいろな説がありますので、ここでは右ネジ(時計回りにねじを回すと奥に進む)タイプと左ネジタイプに区別します。
右ネジタイプの樹種
ツルウメモドキ・サルナシ・アケビ・マタタビ・ヤマフジ等を挙げることができます。
左ネジタイプの樹種
フジ・マツブサ・クマヤナギ・チョウセンゴミシ等を挙げることができます。
![]() ツルウメモドキ(右ネジ) |
![]() サルナシ(右ネジ) |
![]() アケビ(右ネジ) |
![]() フジ(左ネジ) |
巻きひげを出して他の植物に絡みつきます。このタイプの樹種としてブドウ属(ヤマブドウ・サンカクヅル・ノブドウ等)・トゲを持つサルトリイバラ等を挙げることができます。
![]() ヤマブドウ |
![]() サルトリイバラ |
気根を出して他にへばりつきます。このタイプの樹種としてイワガラミ・ツルアジサイ・ツタウルシ・ツルマサキ(常緑)・キヅタ(常緑)等を挙げることができます。
![]() イワガラミ |
![]() ツタウルシ |
![]() ツルマサキ |
![]() ツルマサキ常緑 |
(2011年2月)