春は花見の季節です。花見と言えば桜が対象とされ、各地の開花予想が発表されるほどです。また、日本大学の校章には桜が使われています。今回は国の花である桜についてお話ししたいと思います。
桜と言えば、ソメイヨシノやヤマザクラを思い浮かべます。ソメイヨシノはオオシマザクラとエドヒガンの雑種と言われています。江戸末期から明治初期に江戸の染井村の植木屋が吉野桜の名前で売り出しましたが、吉野山のヤマザクラと間違えやすいので、染井吉野と名付けました。ソメイヨシノは接ぎ木で増やしたクローンですから、一斉に花が咲きますので、北海道南部・本州・四国・九州で開花予報の標本木に指定されています。
日本に野生する桜はエドヒガン・チョウジザクラ・マメザクラ・タカネザクラ・カンヒザクラ・ヤマザクラ・オオヤマザクラ・カスミザクラ・オオシマザクラの9種です。ソメイヨシノが栽培される以前の花見の対象はヤマザクラでした。花見で有名な吉野山の桜はヤマザクラで、麓の下千本で4月上旬から咲き始め、中千本・上千本と標高を上げながら咲き出し、奥千本の4月下旬まで花見が楽しめるそうです。
残念ながら、水上演習林にはソメイヨシノとヤマザクラはありません。しかし、山桜グループのオオヤマザクラとカスミザクラが分布します。山桜グループの特徴として葉の展開とともに花が咲き、新葉と花との対比が魅力的なことです。
オオヤマザクラは北海道北東部で桜開花予報の標本木に指定される木です。ヤマザクラが主に関東から西に分布するのに対し、オオヤマザクラは主に東北地方から北海道に分布しますので、エゾヤマザクラの別名があります。また、ヤマザクラの花がふつう白色なのに対し、オオヤマザクラの花は淡紅色をおびることから、ベニヤマザクラの別名もあります。秋田県角館の有名な樺細工はオオヤマザクラの樹皮を使っています。
![]() 花 |
![]() 花時 |
ヤマザクラ同様、花柄と葉柄には毛がありません。冬芽が展開した鱗片は粘ります。
![]() 花柄は無毛 |
![]() 鱗片は粘る |
カスミザクラもオオヤマザクラとほぼ同じ温帯の山地に生育します。花の色はふつう白色で、花の様子を霞にたとえ、カスミザクラと言う名前がつきました。
![]() 花 |
![]() 花時 |
花柄と葉柄にはふつう毛があることからケヤマザクラの別名があります。
![]() 花柄 有毛 |
![]() 葉柄 有毛 |
4月16日夕方から降り出した雨が17日未明から雪に変わり、水上実習所で15pの積雪になりました。東京でも降雪が観察され、41年前(1969年)の最も遅い降雪日と同記録になりました。実習所の周りのソメイヨシノはまだ開花していませんでしたが、沼田市や旧月夜野町ではソメイヨシノに雪が積もった景色が観察できました。午前中には天気が回復し、一瞬の出来事でした。
![]() ソメイヨシノに冠雪 |
![]() 旧月夜野町(4月17日) |
今年の春は天候不順で、暖かい日が続いたと思えば真冬のような寒さが続き、実習所の周りのソメイヨシノは開花が遅れ、開花したのは4月21日でした。
水上駅前から見える山桜は本数も多く、霞がかかったように見えます。隠れた観察スポットです。
演習林の山桜が開花したのは4月30日でした。見ごろは5月10日ぐらいからで、水上駅前ほどたくさん本数はありませんがきれいに咲きました。
![]() 水上駅(5月8日) |
![]() 水上演習林(5月14日) |
(2010年05月)