今年の冬は暖かく雪が少なく、雪解けが早く進み、植物の生長も例年より1週間から10日ほど早いようです。
雪解け後一番早く咲く花は昨年紹介したマルバマンサク・ダンコウバイです。その次に咲く樹木の花は観察日誌2で紹介したハルニレとオヒョウです。
![]() ハルニレ |
![]() オヒョウ |
ハルニレとオヒョウとも葉に先だって、花が集まって咲きます。
ハルニレの雌しべの先は2裂し、白い毛が密生します。
オヒョウの雌しべの先も2裂し、紅色を帯びます。
ハルニレ・オヒョウとも観察日誌2で紹介したように、6月には種子が結実し落下します。
ブナ属のfagusという属名はギリシャ語の「食用にする」という古語だそうです。古くは果実を食べていましたが、豚も好んで食べるので、中世の中部ヨ−ロッパでは養豚林として利用されていました。ドイツのbuch(本)は、古くはヨ−ロッパブナからはいだ樹皮に文字をしたためたため、buche(ヨ−ロッパブナ)から転化したそうです。
![]() 天然林 |
![]() 人工林 |
ブナは北海道黒松内低地帯から鹿児島県大隅半島まで本州・四国も含めて分布します。樹皮は平滑で、白はんがあり灰白色なのでシロブナの一名があります。温帯林を代表する極相林を構成する樹種です。ブナは年平均気温6〜13℃、湿潤で海洋的な気候下(年降水量1200mm以上)の地域に分布します。温度条件を垂直方向で見てみると、関東・中部地方では700m〜1600mにブナは分布します。また、太平洋側と日本海側で積雪の影響によって樹形・葉の大きさ・構成樹種に違いがあります。
ブナは広葉樹の中では最も蓄積が多い樹種ですが、材が腐りやすく建築材としての価値が認められていなかった木なので、木で無いと書いて橅(ブナ)という漢字があてられたほどでした。しかし薪炭材・農具の柄・挽物・一部建築材(山形県山寺など)として利用されていました。 第2次世界大戦後の木材加工技術の進歩によって、パルプ材・家具材・フロ−リング材などとして利用が増大し、伐採され減少してきました。近年自然保護運動の高まりにより、白神山地を初めとして保護策がとられるようになってきました。
ブナは結実の豊凶が激しく、また結実周期が長い樹種に分類されています。結実周期の理由はまだはっきり分かっていません。ブナの結実周期は過去の資料から5〜8年に1回と推定されています。
今年の春は2004年の春以来ブナの花が咲きました。2004年の時、種子はあまり結実しませんでしたので、今年こそ大豊作になって、秋に良い報告ができればと思います。
![]() 雄花序と雌花序が写っています |
![]() 一つの枝にたくさん花がついています |
雄花序は垂れ下がり、雌花序は次第に上を向いてきます。
ブナの芽吹きは高木の中では一番早く、若葉の淡い緑は幹の白さとあいまって大変美しいものです。ぜひ御覧になってほしい風景です。
![]() 遠景 |
![]() 林内 |
(2009年5月)