本研究室で行っている、食品づくりに関わる研究の一端を紹介します。
近年、熱に代わる食品の加工手段として圧力を利用した方法が注目されています。圧力処理は、さまざまな食品成分の分子の化学結合ではなく、分子間力に影響するが、加熱処理は、共有結合などの化学結合の分解に作用します。すなわち、圧力は低分子化合物を変化させず、高分子化合物を変化させることができる処理手段です。したがって、食品の香り、色、栄養成分や機能性成分など、加熱処理により分解されやすい成分は、圧力処理を利用することにより、その変化や減少を抑えることができます。さらに、圧力処理は、食品内部まで瞬時に伝わるため、加熱処理のようなムラが発生せず、一度、処理レベルまで圧力が到達すれば、簡単に圧力レベルを維持できる方法です。常に熱エネルギーを与える加熱処理と比較すると、省エネルギーな加工手段と考えられます。本研究では、加熱処理の欠点を補うとともに、付加価値を高めた食品づくりを探求しています。

日本大学生物資源科学部は、湘南エリアにキャンパスを置き、また、富士山の麓に教育センターをもつ学部です。湘南エリアは、人口が多い首都圏に位置するとともに、海・川・山と自然豊かな地域でもあります。湘南エリアおよび教育センターがある静岡県東部は、特徴的でユニークな食品素材が多く存在しています。本研究室では、キャンパス近辺にある食品素材の性質を求めるとともに、その加工特性を調べ、食品づくりへの応用を検討しています。例えば、富士山の麓で採取できるキノコに含まれる酵素を抽出し、その性質を調べることで新たな食品づくりを試みたり、湘南地域の新規特産物である湘南ゴールドの加工特性を調べたり、ニジマスを用いた魚醤油の熟成機構を解明したりしています。
