2024/6/5 海岸に打ちあがるハシボソミズナギドリ

博物館だより

海岸の波打ち際で黒っぽい鳥が死んで漂着しています。

5~6月頃によく見る光景ですが、
死んでいる鳥の多くはハシボソミズナギドリです。

(2024年6月2日 稲村崎)

本種は生涯のほとんどの時間を外洋で暮らし、
長距離の渡りをすることでも知られています。

オーストラリア東南部のタスマニア島周辺の島々で繁殖後、
赤道を越えてオホーツク海ベーリング海まで渡りをします。

親鳥は、4月初旬に雛を残し北へ渡ります。

残された雛は、雛だけの群れでは4月下旬に旅立ちます。

日本近海を渡る個体の多くはその年に巣立った若鳥です。

渡り時にはほとんど絶食のため、
巣立ち前に脂肪の蓄積が十分でなかった鳥が弱って死んでしまうと考えられています。


博物館の海鳥コーナーには、本種の他オオミズナギドリフルマカモメ剥製と、
オオミズナギドリの骨格標本を展示しています。

オオミズナギドリは、日本の近海だけで繁殖をする種で、
各地のコロニーが天然記念物に指定されています。

フルマカモメは、北方の海域に分布し神奈川県ではやや稀です。

現在、博物館では学芸員実習での動物標本作製で、
本種の遺体を使用し仮剥製の作製を行うことがあります。
ハシボソミズナギドリの皮は丈夫で、比較的作りやすいのです。


参考文献
「太平洋を北へ南へと渡る」(岡 奈理子,1991)週刊朝日百科「動物たちの地球」

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