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2024.06.28 研究ニュース
本学獣医学専攻2年の池田光宏氏、本学獣医学科の近藤広孝准教授および渋谷久教授、東京農工大学大学院農学研究院動物生命科学部門の村上智亮准教授および岩出進氏、東京農工大学スマートコアファシリティー推進機構の伊藤喜之特任准教授により実施された研究成果が、Scientific Reports誌に掲載されました。
近年、本邦ではイヌやネコ以外の家庭飼育下動物であるエキゾチックアニマルの飼育頭数が増加傾向にあります。それに伴い、多様な疾患に遭遇する機会が増えたものの、疾病解明研究は未だ発展途上です。本学獣医病理学研究室で実施している病理組織学検査の中で、我々はヒョウモントカゲモドキにおいてアミロイド沈着が生じていることを発見しました。アミロイドとは、生体内の蛋白質が誤って折りたたまれることよって生じる異常蛋白質のことです。アミロイドが全身ないしは特定の臓器に沈着する病態は、ヒトに加えて、様々な哺乳類や鳥類で報告されています。アミロイドを形成する蛋白質は、これまでヒトでは42種類知られている一方で、動物では20種類ほどしか知られていません。また、爬虫類におけるアミロイド沈着については、その原因蛋白質はこれまで知られていませんでした。
本研究では、病理組織学的検索に加えて、質量分析法を用いたプロテオーム解析により分析しました。その結果、アポリポ蛋白Eという脂質代謝に関連する蛋白質がアミロイドの原因蛋白質として同定されました。これまでアポリポ蛋白Eは様々なアミロイド沈着と共存する蛋白質として知られており、アポリポ蛋白E自体が生体内でアミロイドを形成することはヒトでも知られていませんでした。本研究は、アポリポ蛋白E自体のアミロイド形成性を哺乳類の祖先である爬虫類で裏付けるものであり、比較病理学的研究に新たな知見をもたらします。