最近の研究1:静的核物質の性質および中性子星の研究
テーマ1: |
相対論的平均場の運動量依存性とフェルミ速度 |
テーマ2: |
ストレンジ物質の研究 |
テーマ3: |
その他の中性子星関連 |
着眼点:従来の相対論的平均場理論(RMFT)ではHartree(H)近似で平均場の計算が行われ、本来フェルミ統計性から現れる平均場の交換項(F項)が無視されてきた。これは、核子の平均場の基本となる核子間力は短距離力であるため温度ゼロ・スピンゼロの核物質内でのフェルミ運動量程度ではF項のもつ非局所性がほとんど無視でき、H近似で結合定数等のパラメーターの値を調整するだけで、Hartree-Fock(HF)近似の結果と同じものを得られるということにすぎない。実際、陽子−原子核弾性散乱による光学ポテンシャルの入射エネルギー依存性から、相対論的平均場をH的な直接項とF的な交換項とに区別できる点に着目して分析した結果、従来考えられていたものと比べ平均場の交換項の効果は、特にベクター場に非常に大きいことが分かった。このことが高エネルギー重イオン反応で極めて重要であることは容易に分かるが、これを高密度ハドロン物質に適応させて考えるとき、従来の計算では見られないような新しい描像が浮かび上がってくる。我々は既に高密度核物質におけるストレンジ粒子の生成に対して交換項の効果が重要になることを指摘している。また、交換項の効果によって核物質がスピン偏極(強磁性)をおこすのではないかとの指摘もあり、中性子星の磁場の起源との関係で興味深い。そこで我々は、通常核物質密度での平均場の運動量依存性が核子‐原子核光学ポテンシャルのエネルギー依存性を再現するという条件下での、相対論的HF近似を用いた高密度ハドロン物質の研究を行っている。
テーマ1:相対論的平均場の運動量依存性とフェルミ速度
相対論的平均場(RMF)理論で現れる二つの平均場は通常、局所的で運動量依存性がほとんどないと考えられていた。確かに低エネルギー現象を見るならば非常に小さい、しかしながら、完全に無視できるというわけではない。我々はフェルミ速度が平均場の運動量依存性に非常に影響を受けることを示し、上記の仮定が全ての現象に当てはまるわけではないことを示した。
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“Isoscalar giant quadrupole resonance state in
a relativistic approach with the momentum-dependent self-energies”, T.Maruyama,
S.Chiba, Phys. Rev. C61 (2000) P037301-1‐037301-4.
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“Giant Quadrupole
Resonance in the Relativistic Approach with Momentum-Dependent Self-ennergies”
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“Fermi Velocity in the Relativistic approach
with the momentum-dependent self-energies”、
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丸山智幸
、基研研究会「不安定核の構造と反応」、京都大学基礎物理学研究所、1999年 11月10 - 12日
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「運動量依存Dirac平均場と双極子巨大共鳴」,丸山智幸、日本物理学会、島根大学,1999年9月23 - 26日
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「相対論平均場理論における運動量ディラック平均場の効果」、丸山智幸 (1999), 不安定核・ハイパー核合同勉強会、理化学研究所、1999年9月2‐3日
テーマ2:ストレンジ物質の研究
K中間子、ハイペロン等のストレンジ粒子の平均場は、交換項部分は非常に小さいと予想される。この分野の研究では交換項の存在を無視したH近似を用いたSU(3)への拡張で議論しているものをよく見かけるが、これは不充分である。実際、直接項と交換項を分離による考察を進めると、さほど高くない密度でハイペロンの自発的発生が起こること、およびそのために中性子星内部でK−凝縮が抑制されることが予想させる。これらのことを現実的なHF計算で明らかにするとともに、多数のストレンジ粒子が発生で問題となるのはストレンジ粒子間の相互作用を、中性子星質量の分布が太陽質量のほぼ1.4倍付近に局在するという事実から決定していく。
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“K+(K0)- Condensation in the Highly Dense Matter with
the Relativistic Mean-Field Theory
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“Kaon in Medium and Dilepton Production from
Strange Hadronic Matter
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“Equation of State with Kaon Condensation and
Neutron Stars
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”Strange Matter in Highly Dense System”、丸山智幸 、KEK 田無研究会「QCDとハドロン物理 --
現状と今後の課題 --」、高エネルギー研究所田無分室、1999年12月20〜22日
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”Strange Matter in Highly Dense System”、丸山智幸、第2回「極限条件におけるハドロン科学」研究会、日本原子力研究所、1月24‐25日
テーマ3:その他の中性子関連
“Equation of state of neutron-star matter and the isovector
nuclear optical model potential”、
“Quantum molecular dynamical approach to the nuclear matter
below saturation density