日本大学生物資源科学部

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PICK UP
2014.10.31

PICK UP 学科間連携研究

本学部には様々なプロジェクトや活動などが行われています。ここではさまざまな角度から学部の中身を紹介し、日本大学生物資源科学部を身近に感じていただける話題を提供いたします。

学科間連携研究-獣医学科と海洋生物資源科学科のコラボレーションでイルカの謎に迫る

profile

鈴木 美和(すずき・みわ)
海洋生物資源科学科 准教授
専門:生理学、鯨類

鯉江 洋(こいえ・ひろし)
獣医学科 准教授
専門:獣医病態生理学、循環器内科学

伊藤 琢也(いとう・たくや)
獣医学科 准教授
専門:獣医免疫学、獣医衛生学

 生物に関する多岐にわたる学問領域をカバーしている本学部では、特定のテーマのもと学科の枠を超えた教員同士のコラボレーションが生まれることがあります。なかでも3人の教員が長年にわたり強力なタッグのもと共同研究を進めているテーマが「イルカ」。そう、水族館で人気の海洋哺乳類です。誰もが知っている生きものにもかかわらず、まだまだ謎の多いイルカのナゾに挑む3人の研究者に話を聞きました。

声をかけていただいたおかげで、大好きなイルカの研究ができるようになり、感謝しています。(鯉江)

イルカの移送で個体の負担を減らす研究が
コラボのきっかけに
―いつ頃、どのようなきっかけでコラボレーションが始まったのですか?
鈴木 私は学生時代からずっとイルカの研究をしてきました。2006年に沖縄美ら海水族館のある海洋博公園で、イルカの輸送の際にどうすれば身体的・精神的なストレスを減らせるかを調べていました。そのときに、陸上動物の心臓の研究をしていた獣医学科の鯉江先生に協力を仰いだのがきっかけですね。
鯉江 沖縄に行けるというので(笑)、早速現地に行って心電図のとり方やそのデータの評価などの面で協力させていただきました。
伊藤 私もそのときに沖縄に共同研究者として連れて行って頂き、専門である免疫学の見地から協力しました。その少し前から、イルカなどの水生哺乳動物の免疫を調べるうえで水族館の方々と一緒に研究をする必要があり、鈴木先生や鯉江先生にご紹介いただいたりしていました。そうしたことからつながりができ、一緒に研究をするようになりました。
鯉江 私はイヌやネコを対象にした研究が主だったのですが、小さい頃からイルカは大好きでした。ただそれまでは、仕事には直接結びついていませんでした。鈴木先生に声をかけていただいたおかげで、大好きなイルカの研究ができるようになり、感謝しています。
 獣医学科ではさまざまな種類の動物を扱いますが、臨床研究をするためには現場が必要なんですね。イルカなどの海洋動物の場合は、その現場が水族館などになります。そこで鈴木先生に現場を紹介してもらい、そこからどんどん人脈が広がっていきました。その人脈をさらに伊藤先生に紹介して、といった流れで結びつきが強くなっていきました。
─3人のこれまでの共同研究による具体的な成果にはどのようなものがありますか?
鈴木 さきほどの、コラボのきっかけになった海洋博公園での研究ですが、結果として、硬いマットレスの上に低反発マットレスを敷くことで、イルカの心肺機能への負担を減らせることがわかり、2008年に論文として発表しました。これは具体的に現場に応用できる成果の一つですね。
伊藤 2010年に連名で論文発表した成果に、イルカの骨髄の研究があります。陸上で暮らす哺乳類の血液は骨髄で作られるのですが、イルカの場合、どこで血液が作られているのか、実ははっきりわかっていなかったのです。魚類は腎臓で作るので、イルカも同じだろうという説もありました。そこで、血液細胞の赤血球や白血球がどこで生まれるかを調べるために、鯉江先生に協力してもらい、本学の動物病院で小型のイルカの全身CTスキャンを取ることにしました。その画像を解析することをきっかけに、血液は腎臓ではなく骨髄で作られていることがわかったのですが、それを実験的に検証するために、培養用のサンプリングをするときに、鈴木先生に全面的に協力していただきました。

陸上動物の研究をなさっていた先生方の知見や経験、ものの見方はとても参考になります。(鈴木)

“外れた哺乳類”であるイルカに
広い視野から多面的にアプローチ
─イルカの研究で専門領域の異なる3人が協力するメリットは何でしょう?
鈴木 イルカは実験動物ではありませんので、学内で飼育することができません。私はこれまでの研究の過程で、水族館や水産庁などとのつながりを持たせて頂いたおかげで、研究材料を入手させて頂く機会も多い。そのことで、お二人の先生方にメリットを提供できている面もあるかと思います。一方で、病気に関することや、細胞培養などに関しては、先生方のほうが知識も技術もありますので、そういった面については助けてもらっています。
鯉江 私は動物の臨床をやっていたので、水族館や動物園から、動物が亡くなったときや亡くなりそうなときに連絡をもらえるんです。伊藤先生の研究で扱う骨髄などは新鮮なほうがいいので、水族館でイルカが亡くなった、という情報が入ったら、すぐに知らせるようにしています。このような貴重な材料から研究活動をすることによって得られた新しい学術的な成果は学会や論文などで積極的に公表し、その積み重ねが最終的には水族館のイルカの健康増進に役立つことを現場のスタッフの方にも理解して頂いているので、そのような情報を得ることができるのだと思っています。
鈴木 まだまだイルカについては、その特殊さゆえに学問的バックグラウンドがしっかりしていないんですよ。そこで、陸上動物の研究をなさっていた先生方の知見や経験、ものの見方はとても参考になります。
鯉江 同じ大学の同じ学部にイルカの研究者が3人もいるというケースはなかなかないですよ。3人いる大学もありますが、皆ずっとイルカ専門でやってきた人たちで、同じような研究をそれぞれやっている。コラボはしていないと思います。ここの3人は、それぞれ専門分野が違うので、より広い視野で、他の動物と比較しながら多面的にイルカを探究していけるのは、大きなメリットです。
鈴木 施設面でも、本学部の動物病院やその他の施設の充実ぶりは素晴らしいです。イルカの研究に、CTスキャンなどの最新の機器を使えることは、大きな強みだと思います。機器だけでなく、それぞれの研究室でもつ設備や実験手法を互いに供与し、サポートしあえることなど、協力し合うことによるメリットは数えきれないくらいあります。
─研究対象としてのイルカの魅力とは、どのあたりにあるのでしょう?
鈴木 魚類から両生類、は虫類、哺乳類と進化していくなかで、生物は海から陸上へと上がってきました。そこで再び海に戻った哺乳類は、とても限られています。そしてイルカやクジラは海洋環境にみごとに適応し、高次捕食者として海を支配している。形態的にも魚に似ている部分もあり、“外れた哺乳類”としての特殊性にはとても興味をそそられます。個人的にはあまり可愛いとは思わないんですけど(笑)。
鯉江 幼い頃に江の島水族館で見たイルカのショーは衝撃的でした。ショーができるくらいの社会性や賢さも魅力でしょうね。
伊藤 私は魚の研究も行っていたのですが、イルカと関わるようになって、同じ水中で生きる動物であっても、体の機能が微妙に異なるところに面白さを感じました。また、イルカは研究材料の入手が簡単ではないのですが、実は水族館の飼育員は一頭一頭と密に関わっているんですね。行動や習性などを日常的につぶさに観察しているのです。そういった現場の飼育員の方や獣医さんとコミュニケーションを図るところから、新しい発見を生み出す潜在性がある。そんなところも、研究対象としての面白さがあるのではないでしょうか。
  • 鯉江 先生
  • 写真
  • 鈴木 先生
  • 写真

学科間連携研究-獣医学科と海洋生物資源科学科のコラボレーションでイルカの謎に迫る

写真の背景に写っている骨格標本は、本学部付属博物館に展示されているイシクジラ。小型のイルカで、北太平洋一帯(日本海、ベーリング海も含む)に棲息する。

イシイルカ
海洋博公園による万全の協力も得ながら
大がかりな測定、実験も
─共同研究をされていくなかで、興味深いエピソードはありますか?
伊藤 沖縄の海洋博公園では、かなり大がかりな調査研究も行いました。鯉江先生や担当の獣医さんが連携している医療機器メーカーに大きな機械を持ってきてもらい、イルカのショーをやっている合間をぬって心電図をとったり。
鯉江 海洋博公園は、とても研究のしやすいところで、3人でよく行きました。多いときには年に4回行ったこともありましたね。イルカのプールの水を頻繁に全部抜いているんですよ。他では、なかなか全部の水を抜くことはできません。
鈴木 CTスキャンやレントゲン、血液性状の測定用機器など、海洋博公園は設備の面でも完璧ですね。(担当の)獣医さんも意欲的で、いつも万全の態勢で研究に臨める環境を整えてくださっています。
─何度も同じ水族館で研究をしていると、イルカもなついてくるのでは?
鈴木 それはないです(笑)。逆に「あの人たちが来ると何かやられる」と思われているんじゃないですかね。
鯉江 長い間ショーのスターに君臨しているオキちゃんというイルカがいるんですが、彼女の心電図がなかなか取れない。とても頭がいいので、他のイルカが測られているのを見て、逃げちゃうんですよ。
鈴木 ダマされることもありますよ。ある時、実験であるイルカからデータを取っている真っ最中に、調子がわるそうにして「もうダメです…」というような様子を見せたんです。心配になって実験を中止してプールに戻すと、途端に元気になってエサを要求した(笑)。個体によってはイタズラもよくするようですし、一頭一頭に個性があって、見ていて面白いですね。

イルカは、わかっていないことがたくさんあります。それだけ研究のタネが多く、可能性に満ちているわけです。(伊藤)

測定機器や細胞培養による
イルカの研究方法を確立していきたい
─今後、この共同研究をどのように発展させていきたいとお考えですか?
鈴木 とくにイルカやクジラなどの海洋哺乳類の場合、稀少種の保護や動物愛護の観点から研究がしづらくなっている面が現実的にあります。いきおい水族館で飼育している個体で測定、実験を行ったり、細胞のサンプルをとって培養するなどの方法が中心になります。でもイルカはその特殊性ゆえに、そうした研究方法が確立しているとはいえません。おふたりの先生方と一緒に研究することで、イルカの研究方法自体を確立し、発表していきたいと考えています。
鯉江 超音波プローブをどっちの方向から当てるのかなど、細かい検査方法に関して、実は決まりがあるわけではないんです。細胞培養するにしても、どういう条件で行うのとかも。そういったことをまとめた冊子が作れたらと思っています。今は、わりとピンポイントで研究を行っていることが多いのですが、いずれは、イルカの研究として体系づけていけたらいいですね。
─他の学科の先生方も巻き込んでいこうというお考えは?
伊藤 今も必要に応じて、躊躇せずにいろんな先生の協力を仰いでいます。ですので、より多くの人数でのコラボの可能性も十分にあると思います。
鈴木 他の学科で解剖学の知見をお持ちの先生や、バイオに関する研究を行なっている先生など、学部には幅広い専門の先生方がいらっしゃいますので、ご協力が得られればコラボの輪が広がっていく余地は十分あります。現状では陸上哺乳類に関する研究のほうがずっと先まで進んでいますので、その知見をイルカに応用していくために、コラボの範囲が広がっていくことは考えられますね。
─最後に、イルカやイルカの研究に関心をもっている高校生や一般の方々へメッセージを。
鈴木 研究に興味をもってくださる方や、イルカの研究をしてみたいという高校生や大学生も多いのですが、実のところ、イルカの研究は簡単ではありません。先ほど言いましたように研究方法が確立していないため、回り道や要らぬ苦労をすることもあります。そのあたりを創意工夫で乗り越えることに努力をいとわず、また生物としての彼らの特徴を解き明かすことに面白さを感じられるのであれば、ぜひチャレンジしていただきたいと思います。
鯉江 医学・生理学の面からイルカを研究するには、本学部は国内でも最高クラスの環境が整っています。生態や行動の面ではなく、海洋生物としてのイルカに興味のある人には、ぜひとも本学部の門をたたいてほしいですね。
伊藤 イルカは、進化の面からは先祖帰りした特殊な生物で、わかっていないことがたくさんあります。それだけ研究のタネが多く、可能性に満ちているわけですが、半面、鈴木先生が言われたように、研究しづらい対象でもあります。限られた条件から可能性を追求することに興味があれば、ぜひ飛び込んできてほしいと思います。
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