未利用バイオマス資源を原料とする
バイオ増炭+触媒脱炭素によるC4化成品合成
ー脱石油・循環型社会の構築に向けてー
未利用バイオマス資源を原料とする
バイオ増炭+触媒脱炭素によるC4化成品合成
ー脱石油・循環型社会の構築に向けてー
日本における基幹化成品は、シェールガス革命によるナフサ由来のエチレン製造のコスト競争力の低下およびナフサ生産縮小による製造能力低下が懸念されている。特に炭素数4のC4化成品はシェールガスからの変換が難しく、国内ナフサクラッカーの競争力低下に伴う高騰が予想されている。C4化成品から製造される塗料、ゴム、プラスチック、ウレタンなどの機能化学製品は、日本の経済を牽引する自動車や電機産業を支える主要化学製品であり、この点においてもC4化成品の供給を安定・維持することは、我が国の国際的ポジションにも影響する重要な課題である。
昨今、環境負荷が低く経済性のある代替原料として、未利用バイオマスである廃グリセリン(C3)の利用が期待されている。我々は、C3グリセリンを微生物変換技術によってC4化合物であるエリスリトールに増炭し、さらに炭素―酸素結合の水素化触媒によって高付加価値のC4化成品群を生産するための、一貫工業プロセスの確立に取り組んでいる。微生物変換技術の長所は、生物が本来持つ生合成経路を有効に利用した炭素数増加反応(増炭反応)が可能な点であり、逆に触媒変換技術の特長は転換速度の速さと、多種の生成物が作り分け可能な点であり、両技術が得意とする要素技術を抽出・融合し、価格競争力を有する一貫工業プロセスを確立予定である。
我々は廃グリセリンを原料として、まずC4の多価アルコールであるエリスリトールを発酵生産する。このエリスリトールは触媒反応によって、モノアルコール・ジオール・ブタジエン・テトラヒドロフランなどの基幹化合物への変換が可能である。特にジオールは、ヒドロキシル基の置換部位の違いにより、1,2-ブタンジオールは塗料に、1,3-ブタンジオールは化粧品に、1,4-ブタンジオールは樹脂のモノマーとして使用されており、C4化成品群として幅広い展開が可能である。
本技術開発は、未利用バイオマスを原料とした単一生産性に強い微生物変換技術による骨格化合物製造と同じ基質から様々な官能基変換できる触媒変換技術の掛け合わせによる多品種製造という極めて特徴ある技術である。
共同研究者:(株)ダイセル、東北大学、日本大学
引用文:第18回グリーン・サステナブル・ケミストリー賞奨励賞受賞ポスター