食ビの人々

川手 督也 教授 Tokuya Kawate 担当科目:食と農の社会学、スローフード論、海外フードシステム現地研修

人を幸せにする農や食の世界を
プロデュースするために

現在の研究内容について、わかりやすく教えてください。

現在取り組んでいる主な研究は次の2つです。
1つは、学部のプロジェクト研究として実施している「日韓台における有機農産物のフードシステムに関する比較研究」です。これは、①有機農産物に対する消費者意識、②有機農産物に関する流通システム、③有機農業に関する政策の観点から、日本と韓国と台湾の国際比較を行い、今後の有機農産物のフードシステムや対応する政策のあり方について明らかにしようとするものです。韓国や台湾の大学や研究機関などの先生方にご協力を頂きながら、同じ食品ビジネス学科の佐藤奨平先生、国際地域開発学科の李裕敬先生と共同で研究を進めています。
もう1つは、研究室のテーマとして掲げている「こだわりの食ビジネスと地域活性化に関する研究」です。学科の卒業生を含め、研究室でお世話になっているいわゆるこだわりの食ビジネスに取り組んでいる方たちを対象として、経営理念や目的、目標、経営戦略や商品の企画・開発、マーケティング、取り組みの実際や課題、地域活性化や社会貢献のあり方などについて学ぶ、というものです。研究室の3年生と一緒に研究を進めています

現在の研究領域に興味を持ったきっかけは何ですか。

抽象的な言い方になりますが、もともと社会的存在としての人間に興味があったので、学問としては社会学を選びました。対象領域としては、農や食、環境に強い関心があったので、大学を卒業してから農林水産省の研究所(現在の農業研究機構)に就職し、食の基礎をなす農業・農村の現場を主たる対象として、農や食の変化とその要因、問題点とあるべき方向、新たな農や食を創造する人々の問題に関する研究に従事してきました。最近は、持続可能な農や食のあり方について、特に農業における生物多様性に焦点をあてながら、研究を深めたいと考えるようになりました。

研究の成果をどのように社会に活かしていきたいですか。

研究を進めるにあたっては、現地調査などで生産者や行政を含む関係機関の方など多くの方々にお世話になります。そのため、研究の成果については、学会などで研究発表するだけでなく、お世話になった方々に必ず報告するようにしています。役に立つ研究が出来るかどうかのポイントの1つは、お世話になる方々といかに良い関係を築くことができるかどうかであると思います。
また、研究の成果は、講義や演習、実習で学生に教える内容のもととなります。自分の仕事を社会に生かすという点では、社会科学を専門とする大学の教員は大変恵まれていると思います。

研究のやりがいや面白さを感じるのはどんな時ですか。

なぜそうした社会現象が生じたのかという原因や要因間の因果関係などについて的確な説明や理屈を考えついた時には、やったーと叫びたくなります。また、頭にひらめいた仮説や理論を実際にデータに照らし合わせて検証することができると、大きな充実感が得られます。

反対に、研究で苦労する点、努力する点はどのようなことですか。

大学の教員は研究だけを行っていればよいという仕事ではありません。しかし、良い研究をすめるためには、自分の研究テーマに関連する論文をきちんと読んで勉強することが大前提となります。また、私の研究スタイルは、現地に赴いて調査を行い、データを取る必要があるため、準備や段取りを含めて調査を行うための時間の確保が必要となります。その時間の確保が現実的にはなかなか難しく、いかに効率的に時間を使うかが課題となっています。

これから同じ専門領域を研究する学生に何を期待しますか。

持続可能な農や食のあり方に関する社会科学的研究は、社会的にこれからますます大切になってくるテーマです。是非、一人でも多くの学生にチャレンジしてほしいと思います。
また、研究に限らないのですが、少なくとも英語の勉強はしっかりしてください。仕事をしていく上で有利とか必要ということもありますが、それ以上に申し上げたいのは、自分の世界が格段と広がるということです。チャンスがあれば、是非、留学も考えてください。

食品ビジネス学科を目指す学生へメッセージをお願いします。

食品ビジネス学科のHPやパンフレットに明記しているように、私たちの学科の理念は、「食で人を幸せにしたい」であり、教育の目的は、「人を幸せにする食をプロデュースする人材を育てる」ことです。ここでいう「プロデュースする人材」とは、食に関する様々な専門家を束ねて、食ビジネスに関する企画を立案し、運営していく人と言うことになります。自ら専門家も兼ねるケースもありますが、まさに、食の世界を創造する中心的役割を担うので、「生み出す」という意味のプロデュースという言葉を用いています。
私たちの学科は、文理融合の学びの中で、これからの食のあり方を探究し、新たな食ビジネス、さらには人を幸せにする農や食の世界をプロデュースする人材育成のための教育・研究を行っています。関心のある方は、是非、門を叩いてください。

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