食ビの人々

清水 みゆき 教授 Miyuki Shimizu 担当科目:食と農の経済史、食の経済学、食料政策

数値で図れない損失は
どうしたら埋められる?

現在の研究内容について、わかりやすく教えてください。

現在の研究の中心は食品表示です。消費者は商品選択という経済行動によって社会に大きな影響力を及ぼしますが、自分の食べる物を自分で選ぶ、そのために一番身近に在る情報源が食品表示です。消費者にとって有用な表示の在り方を研究することは、消費者の権利を保障することにもなります。また、食品ロスを減らすためにも、日付表示の在り方を検討する必要があります。期限だけでなく製造年月日も併記されていると、その期間の長さによっては期限後の廃棄行動が変化する可能性があります。その他アレルギー表示、地理的表示、機能性表示、原料原産地表示など、表示には非常にたくさんの情報が凝縮されています。消費者にとって有効な表示を考えています。

現在の研究領域に興味を持ったきっかけは何ですか。

公害で被害者となった人たちが、病気の保証金などの手当があったとしても、精神的に受けたダメージは保証されないばかりか、周囲の対応の仕方によってはますます傷が深まる場合があります。食で被害を受けた場合も同様で、今でいうと「風評被害」などもそれにあたると言えます。そうしたいわれのない人権侵害に対する回復に興味を持っていました。

研究の成果をどのように社会に活かしていきたいですか。

学会発表や媒体等を通じて研究成果を公表するとともに、行政、民間等の委員会や消費者講座などの場でも積極的に発言するようにしています。また、食品表示というのは消費者にとってとても身近な問題なので、学生とも一緒に議論し、一緒に考えるようにしています。これから社会に出る学生達の心のどこかにその議論がインプットされることで、将来のための何らかのタネになることを期待してやみません。

研究のやりがいや面白さを感じるのはどんな時ですか。

社会科学系の研究分野では、日常生活の様々な出来事や情報が、自分の研究領域と「関わり」を持つ場合が多々あります。「関わり」というより、「視点」と言い換えても良いかもしれませんが、そうした自分では考えられなかった知見が、自分の研究領域に侵入して来る時(または発見した時)のワクワク感と、それを論文に組み込んで表現できたときの達成感があるからこの仕事を続けられているのだと思います。情報源としての新聞を周りにガサガサ置いていたので「リスか?」と言われた時期もありました。

反対に、研究で苦労する点、努力する点はどのようなことですか。

民間企業のデータが手に入り難い、という壁が第一でしょうか。また、自分がワクワクしたことを、文章で表現しなくてはなりませんが、その過程は決してスムーズではない場合が多いことです(産みの苦しみとも言います)。加えて、研究だけに没頭できる状況でない場合も多く、最終的には自分の時間管理に一番苦労しているのかもしれません。

これから同じ専門領域を研究する学生に何を期待しますか。

自分の主張や研究成果を人に伝えるためには、どうしてもデータが必要です。そうでなければ単なる作文、感想文になってしまいます。データを用いてレポートを書く、データを用いてプレゼンテーションをするというトレーニングを是非積んで欲しいと思います。それと、質問はとっても重要な成長のタネです。質問をどんどんして、たくさんタネを準備して欲しいと思います。

食品ビジネス学科を目指す学生へメッセージをお願いします。

食べるという行為は避けることができません。自分で食べる物を自分で選ぶ、そんな当たりまえの消費者行動のために、どんなことが必要か、どんなことが障害となっているか。是非一緒に考え、学び、全ての人に食品選択情報を保証できる社会を目指しましょう。

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