たった一枚のエントリーシートでも、
伝えられることはある。

ロッテ商事株式会社 執行役員

笹井 秀昭(1978年度卒業)

【業種】
卸・小売業

これまでの歩みについてお聞かせください

私の時代は決められた時期まで企業側と一切接触することが禁じられた「就職協定」があり、4年の10月に就職活動が解禁されてはじめて会社訪問をはじめました。就職を具体的に考え始めたのは、4年の夏休み頃。もちろん、当時はこうした懇談会の機会はなく、自分で学生課に行き、企業から届いているファイルを閲覧して、自分に向いていると思う企業があれば自分で連絡して、自分で会社訪問をしていました。最終的には20社ほど訪問しましたが、当時は就職難で“どこにも入れなかったらどうしよう”と悩んでいたことを懐かしく思い出します。就職活動をはじめて感じたのは、「あ、これはフィールドリサーチと同じだな」ということ。私は高崎に行って兼業農家の研究をしましたが、見ず知らずの農家に飛び込んで話を聞かせていただき、研究の結果を持ち帰ってみんなで発表し合いました。就職活動もフィールドリサーチと同じで、はじめて会う企業の人事担当者に自己PRをしながら、信頼関係を築いていく。結果を持ち帰って発表した時に身につけたプレゼン能力も、面接時はもちろん、社会に出てからも非常に役立ちましたね。相手が農家の方であろうと、企業の人事担当者であろうと、人を説得する力は不変。これは相手が一人であっても百人であっても同じです。大切なのは、丸暗記した言葉ではなく、自分の言葉で精一杯気持ちを伝えること。農家の方に追い返されたり、また縁側で麦茶をいただきながら話をしてくださったり、さまざまな経験を通して人に想いを伝える方法を学んだような気がします。

現在の仕事内容は?

入社以来、ずっと営業畑を歩いてきました。いわば現場の最前線にいたわけですが、去年本社に異動して今は営業企画の仕事をしています。営業は「売る」のが仕事ですが、営業企画は「どうやったら売れるか」を考えるのが仕事。市場をリサーチし、マーケティングの戦略を立てるのが主な業務です。私はたまたま営業の道を長く歩いてきましたが、企業にはいろいろな部署があります。だから皆さん、希望の部署でないところに配属されても決して落胆することはないですよ。どんな部署に配属されても与えられた場所にて全力で仕事をしていれば、会社は必ず皆さんを見ていて、次の機会に皆さんのやりたい仕事を選ばせてくれるはずです。もちろん、自分の判断で会社が合わないと思ったら転職するのも自由です。でも、会社にはいろいろな部署がありますし、自分が好きになった会社なら多分、定年までいたいと思うのではないかと私は思います。私は今50歳ですが、かれこれ28年間ロッテ商事にいます。皆さんもこれから出会う会社に、今までの人生で生きてきた以上に長い期間を過ごすかもしれません。そういう意味でも、自分に合った会社、好きになれる会社を選んで欲しいですね。

これから就職活動を開始する後輩たちにアドバイスをお願いします

現在の就職活動はたった一枚のエントリーシートからはじまるといっても過言ではありません。私は会社で若い人たちによく言うのですね。100ページ、200ページにも渡るどんな立派な企画書を持ってくるより、一枚でいいから想いを伝える企画書を書いて持ってこいと。一枚のエントリーシートの中で自分をアピールできないなら、100枚書いてもアピールできないと思います。皆さんも是非、エントリーシートには自分がその会社で何をやりたいか、何ができるかという想いを書いて、自分をPRしてほしいですね。私は企業の側から何度か面接に立ち会いましたが、その中におもしろい学生さんがいました。履歴書にうちの会社の球団の応援席で旛を持って応援している写真を貼ってきたのですよ。こういうアピール方法もあるのだなと思いましたが、それだけでは普通、採用されませんよね。するとその学生さんが、ロッテに入ったらお菓子業界と球団を結びつけて、子供に夢を与えるような仕事をしたいと言ったのです。それを聞いて、殺し文句だなと思いましたね。一つの例としてそういうアピール方法をあげましたが、そういう自分だけのPR方法をどれだけ持って、それをエントリーシートで表現できるか──それが実のある就職活動につながるのではないかと思っています。

(取材・撮影:2007年10月6日)

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