本当に自分に合う仕事は何か?
本当に必要としてくれる会社はどこか?
就職活動は振り出しが決め手。

株式会社伊勢丹

北澤 誠(1982年度卒業)

【業種】
卸・小売業

これまでの歩みについてお聞かせください

私が卒業したのは皆さんが生まれる前。当時は“就職活動は勝手にやってこい”というのが当たり前で、「就職懇親会」のような学科をあげてフォローしていただけるような場はありませんでした。しかも、企業で活躍する方の講演を聞く機会も多いとのこと。そういう意味でも皆さんは恵まれていて、いい環境の中で就職活動ができる。非常にうらやましいなぁと思います。学生時代のいちばんの思い出は調査実習、今でいうフィールドリサーチですね。私は当時、山形の農家でお米の生産組織について学びましたが、実習でトライしたことや人的対応力などは社会に出てからも役に立っています。フィールドリサーチの経験は、皆さんにとっても強みになると思いますので、プライドをもって就職活動をしていただければと思っています。

現在の仕事内容は?

食品経済学科卒ということもあり、入社以来ずっと食品畑を歩いてきました。その中で最も長く携わったのは、バイヤーの仕事。ショップの仕入れに対する権限を持った責任者です。生鮮にはじまり惣菜などいろいろ経験しましたが、私自身、いちばんおもしろかったのは食品の催事、物産展ですね。食品催事のバイヤーは何をするかというと、まず情報収集。現地に足を運んで、この商品はなぜ人気があるのかを目で確かめ、それを百貨店で売る場合どんな企画が立てられるのかを考える。ビジネスに立脚しているか、学術に立脚しているかの違いはありますが、これはまさにフィールドリサーチ。学生時代の経験が役立つとは想像もしていなかったので、当初は驚くと同時に感激しました。百貨店のバイヤーは、実は非常に泥臭くて、人間臭い仕事なんですよ。何がどの位売れたかを数字で判断するだけではなく、お客様やお店の人、取引先の人たちと話をして、現場の声を聞いて仕入れに生かしなさい、そういう感性を磨きなさいとよく上司にも言われました。分析をしつつもアナログの部分を加えながらビジネスを構築するのが私どもの仕事であり、そこに醍醐味があります。もし共感できる部分があれば、皆さんもぜひチャレンジしてほしいですね。

これから就職活動を開始する後輩たちにアドバイスをお願いします

伊勢丹では2007年度の採用は55名を予定しています。ちなみにエントリーシートを提出された方は8千人と聞いています。当社の新入社員は学部、学科の関係なく、全員が新宿にある本店の婦人服、あるいは紳士服売り場に配属になり、そこで百貨店の基礎を学びます。その後、宣伝・販促や経理、売り場などそれぞれの部署に配属されるわけですが、売り場に残った社員はセールスマネジャーやバイヤーになるための訓練期間としてアシスタント的な業務をこなすことになります。昇格試験を受けて、バイヤーなどの責任者になるまでの訓練期間は一般的に8年前後。いくら大学を出ていても、入社してすぐ売り場を仕切るセールスマネジャーになることはありません。ステップアップするためにはジョブローテーションで経験を重ね、キャリアを身につけることが不可欠です。最近の学生は就職後3年ほどで辞める人も多いと聞きましたが、企業の大小とか有名無名で選ぶのではなく、自分に本当に合う会社はどこなのか、そこで自分は何をしたいのか、本当に自分を必要としてくれる会社はどこかをしっかり見据えて就職活動をすれば、3年でつまらまくなって辞めるということは少なくなるのではないかと思っています。

(取材・撮影:2006年12月16日)

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