厚労省の人口動態統計によると、日本人の死亡原因のトップは、男女ともに悪性新生物(がん)。高齢化の進展とともに、その比率も年々上昇しています。

そんながんに対し、外科療法、化学療法、放射線療法に続く、新たな治療のアプローチとして注目を集めているのが、がん免疫療法です。

そもそもがん細胞は人体にとって異物であり、本来であれば人間が生まれながらに持っている免疫システムが発動し、攻撃されてしまうはずのもの。ところががん細胞は、自分の周囲に住み心地のいい『がん微小環境』をつくり、成長の足場にしています。その中で、免疫細胞についても自分を攻撃しないように教育を施しているというのです。

「そこをどう潰していけば、再び免疫細胞が働き、がんを攻撃してくれるようになるのか、それが私の大きな研究テーマになっています」と話すのは、分子免疫生物学研究室の中西祐輔助教。「もちろんここは医学部ではないので、研究がすぐ治療法に結びつくわけではありません。

しかし生物学としてがんや免疫を研究していく中で、いつか治療にも役立つような知見が得られるであろうと考えています」医学や薬学を支える基礎研究が、意外にも応用という名を冠したこの学科で開花する、その日が楽しみです。

生物学、農学、医学、薬学および工学など、幅広い分野を支える最先端のバイオサイエンスとバイオテクノロジーを生かして、微生物や動植物細胞の構造、代謝および機能にかかわる多様な研究に取り組み、生命の不思議を総合的に解明しています。