当然ですが作物は水がなければ育ちません。
そのため人類は、農耕を営むようになって以来、農地への水の供給=灌漑に知恵を絞るようになりました。灌漑には、水田のような『湛水灌漑』、高圧で散水する『スプリンクラー灌漑』などがあり、水資源の乏しい乾燥地帯では、配水管やチューブなどで作物の根元に少しずつ給水する『点滴灌漑』も重視の技術。
しかし点滴灌漑には高度な技術や十分なエネルギー源が必要で、途上国では維持することが難しいという問題も指摘されています。
そこで国際環境保全学研究室のロイ キンシュック教授が着目したのは、古くから行われてきた『壺灌漑』でした。これは、作物の周囲に安価な素焼きの壺を埋設し、透水性のある壁面を通してゆっくりと水を供給しようというもの。
研究室では学生が陶芸教室に通い、さまざまな形状やサイズの壺を制作。水がどのように浸透するかなど、壺灌漑の有効性に関する科学的な研究を進めています。
ロイ教授は「日本の技術を途上国に持っていくだけでは、地域の人たちが自発的な取り組みを続けていくことはできません。現地でも使っている壺だからこそ、続けることができるのです」と、壺灌漑の持続可能性に大きな期待を寄せています。