夜陰に乗じてガブリ!ユニークな顔をしたこの動物は、ブラジルなど中南米に生息する吸血コウモリ。

まるで映画のドラキュラ伯爵のように、牛や馬、時には人間に噛みつき、血を舐めるという習性があります。
厄介なのは、その際に狂犬病のウイルスを媒介してしまう場合があるということ。狂犬病は一旦発症すると有効な治療法がなく、全世界で毎年5万人以上が死亡している大変に怖ろしい病気です。

獣医衛生学研究室の伊藤琢也教授は、ブラジルの研究者とも協力。吸血コウモリの持つ狂犬病ウイルスのRNA配列などを調べ、その系統関係などを明らかにする研究を行っています。
「狂犬病ウイルスが、どのような動物で媒介されるのか、それを調べる疫学的な研究は、病気の予防対策のためにも極めて重要です」その一方で伊藤教授は、研究者としてコウモリ自体の面白さにも惹かれているといいます。

「調べていくと、コウモリ由来の伝染病は少なくありません。狂犬病ウイルスの祖先もおそらくコウモリ由来。エボラ出血熱やSARSなどもそうではないかといわれています。

あまり人間とはなじみがありませんが、謎だらけでとても面白い動物だと思いますよ」犬や猫、家畜だけではなく、獣医学のフィールドは、こんなにも多様に広がっています。

動物医療を通して、動物とヒトの福祉に貢献することをめざし、生命活動のメカニズムや、疾病の診断・治療・予防、公衆衛生、野生動物の保護と環境保全など広範囲な領域を、最先端の学習環境・体制のもとで学びます。