微生物共生系に基づく新しい資源利用開発 日本大学21世紀COEプログラム
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研究員と研究内容
計画研究班員 細野 邦昭
東京大学大学院農学系研究科農芸化学専攻博士課程修了
1974年 通産省(現経産省)工業技術院微生物工業技術研究所
(現独立行政法人産業技術総合研究所)研究員
1992年 国際ヒューマンフロンティアサイエンスプログラム推進機構(フランス)
研究グラント部長
1993年 通産省工業技術院生命工学業技術研究所 分子生物部長
1995年 通産省工業技術院生命工学業技術研究所 生体物質部長
1997年 通産省工業技術院生命工学業技術研究所 生物反応工学部長
1998年 通産省工業技術院生命工学業技術研究所 特許微生物寄託センター長(併任)
2001年 日本大学生物資源科学部教授
メタン発酵槽内における複合微生物群の構造解析と制御
  都市下水や産業廃水、農畜産廃水等に含まれる有機物は、微生物を利用した生物学的処理により分解・除去される。有機性廃棄物は嫌気条件下で嫌気性微生物群により加水分解され、最終的にメタン発酵によりメタンガスに変換される。そこで有機性廃棄物から効率よくメタンガスを得るため、メタン発酵槽内における複合微生物群の菌相解析を行い、廃棄物の種類や処理槽の運転条件等により変動する菌相を制御することが重要となっている。このため、セルロース系廃棄物を原料とする分解処理槽をモデルとして、PCR法やDGGE法等の分子生物学的手法により微生物動態をモニタリングする解析技術を確立し、メタン発酵槽内の複合微生物群の制御技術の開発を目指す。


 メタン発酵槽における微生物群集の菌相解析を目的に、完全混合型メタン発酵装置により古紙を主原料に中温(35℃)および高温(55℃)条件下で約1年間運転した。継時的に採取した汚泥サンプルの微生物群集からDNAを抽出し、真正細菌用ユニバーサルプライマーとClostridium属特異的プライマー、メタン生成細菌用ユニバーサルプライマー、硫酸還元菌用ユニバーサルプライマーを用いて16SrDNAを増幅した。増幅断片についてDGGE解析を行い、糖質分解およびメタンガスの発生量と相関する複数のバンドが検出された。各バンドに対応する16SrDNA配列の系統解析から、それらはClostridium thermocellumC. stercorariumなど既知のセルラーゼ生産菌に高い相同性を示す配列とClostridium属に近縁な未同定の細菌に相同性を有する配列であることが明らかになった。また、メタンガス発生量と相関が見られる複数のバンドが検出され、それらは水素資化性のMethanobacteriumMetanospirillum、硫酸還元菌っであるDesulfovibrioに属する菌群であった。


 メタン発酵槽で偶発的に生じる発酵不良を人工的に再現して、そのメカニズムを解明するため、高温メタン発酵槽(55℃)に生ゴミ系廃棄物の投入を変化させ人為的に負荷変動を与えて連続運転を行った。負荷変動により一時的にメタンガスの発生が停止する発酵不良に陥ったが、その後に回復が観察された。この発酵槽より採取した汚泥中の微生物群集の菌相構造をメタン生成菌、真正細菌の各16SrDNA配列を標的にPCR-DGGE法により解析した。また、DGGEの各バンドに対応する塩基配列を決定して微生物種の同定と系統解析を行い、ガス発生量と関連していたのはMethano-bacterium属、Methanoculleus属のメタン生成菌であった。さらに、pHの低下にはLactococus属細菌、セルロース分解により生じる糖質量の変化には一部のClos-tridium属細菌が関連していた。


 半連続培養系によるメタン発酵性微生物群の人為的構築を目的に、発酵槽汚泥由来の微生物群を様々な条件下で連続培養し、培養過程での発酵状態と微生物群集の菌相構造を比較した。古紙分解系メタン発酵槽(55℃)の汚泥を種とし、密閉バイアル瓶で液体培地に粉末ろ紙を1日1回投入する培養では、バイオガス発生量とpHが培養開始後約40日でほぼ安定した。また、この安定期における微生物群集の菌相構造はほとんど変動しないことが、16SrDNA配列によるPCR-DGGE解析により明らかになった。



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メタン生成細菌を検出するためのプライマー及びそれを用いた検出方法等(特願2003-056081)
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