| 
         
          |  | 
               
                
|  |   
                | 
                    
                      |  |  
                      |  |  
                      |  |  
                      |  |  
                      | 
                          
                            |  |  | 別府 輝彦 |  |   
                      |  |   
                      |  |   
                      | 
                           
                            | 
                                 
                                  | 東京大学大学院化学系研究科博士課程修了 |   
                                  | 1994年 | 東京大学名誉教授 |   
                                  | 1994年 | 日本大学農獣医学部(現生物資源科学部)教授 |   
                                  | 1999年 | 日本大学生物資源科学部生命科学研究所所長(兼務) |   
                                  | 2003年 | 日本バイオインダストリー協会会長 |   
                                  | 受賞 |   
                                  | 1986年 | 日本農芸化学会賞 |   
                                  | 1990年 | 国際微生物学会(IUMS)有馬賞 |   
                                  | 1995年 | 米国工業微生物学会 チャールズ・トム賞 |   
                                  | 1996年 | 紫綬褒章 |   
                                  | 1998年 | 日本学士院賞 |  |  |   
                      |  |   
                      
|  |   
                      |  |   
                      | 
                           
                            
| 共生は自然界における生物の基本的な生態のひとつであり、それは微生物の世界においても同様と考えられる。特に、草食動物の反芻胃、セルロースを資化するシロアリの腸管、廃棄物処理のメタン発酵槽などに見られるような多種多様な微生物が密集して活動している複合微生物群集の中では、分散して存在する微生物細胞が種を越えて相互に増殖を支えあう共生関係が成立していると推測されるが、共生系を構成するメンバーの多くが固体培地上でコロニー分離による純粋培養ができず、従って純粋培養されたメンバーから共生系を再構成することが出来ないために、その解明は極めて立ち後れた状態にある。 
 
 こうした状況において、かつて我々が発見した好熱性共生細菌Symbiobacterium thermophilum(ST)とその増殖を支持する好熱性 
                              Bacillus 属細菌S 株(BS)からなる片利共生系は、微生物学的に明確に定義された構成員からなり、かつ実験室での培養操作において再構成可能な、極めて稀な単純化された微生物間共生系のモデルとして位置づけられる。STは、我々が独自に設計した2槽を膜で隔てた培養器(図1)を用いてBSと透析培養することによって単独で増殖することが判明したことから1)、BSとの間でやりとりされる膜を通過可能な低分子物質(群)がSTの増殖を支持する基盤となっていることが予想されていた。我々はCOEプログラムによってSTの共生依存の生理的性質を様々な角度から追究し、STは少なくとも3種の因子(ペプチド性物質/NH4+で置き換えられるカチオン/炭酸ガス)を要求し、それら全てが揃うことがその正常な増殖に必須であることを明らかにしようとしている。さらに、STは自己の増殖に阻害的な因子を生産し、それを除去することもこの菌の増殖を支える重要な要因となっていることも判りつつある。
 
 
 我々はさらに、文部科学省未来開拓学術推進事業との共同によってSTの全ゲノム配列の解読を完了した。3.7 
                              Mbの環状ゲノム(図2)には、これまでの微生物ゲノム情報ならびに系統分類学では説明できない性状が見いだされた。STは高いG+C含量(68.7%)と16S 
                              rDNAによる系統解析から現在Actinobacteriaに分類されているが2)、その蛋白質の多くはBacillusやClostridiumなどのFirmicutes(低G+Cグラム陽性菌群)にもっとも高い相同性を示した。さらに驚くべきことに、これまでFirmicutesにのみ知られていた内生胞子形成に関与する一連の遺伝子群が見いだされた。我々はこの発見にもとづいて改めてSTの胞子形成能を調べ、特定の培養条件で内生胞子様の細胞構造(図3)が形成されることを明らかにした。このことから、Firmicutesにはこれまでの微生物学の教科書には記載されていない高G+C含量の生物も存在することが実証された。
 
 
 このCOE研究は今後、いわゆる難培養とされる微生物群の生理に関する遺伝的背景を具体的に明らかにしていくものと期待される。特に、我々が絶対環境依存性と呼んでいる、複数のしかも正と負両面における要因を総体的に要求するというSTの特質は、メタン発酵をはじめとするいわゆる複合微生物群集における微生物間相互作用を理解する上で重要な鍵を提供するであろう。STにおける生理的諸性質とゲノム情報の相関に焦点を当てたこれからの研究は、微生物が生存する環境と集団を視野に入れた新しい微生物学に対して先駆的な役割を果たすものと期待している。
 | 
                                 
                                  | 
                                       
                                        |  |   
                                        | 図1 2槽式培養フラスコ |  |  
 
 
 
                                 
                                  | 
                                       
                                        |  |   
                                        
| 図2 S.thermophilumのゲノム構造 |  |  
 
 
 
                                 
                                  | 
                                       
                                        |  |   
                                        
| 図3 S.thermophilumの 内生胞子様細胞形態
 |  |  |  |   
                      |  |   
                      |  |   
                      |  |   
                      | 
 
                           
                            | 
                                 
                                  | 1 | 
| Ohno, M, Okano, I, Watsuji, T, Kakinuma, 
T, Ueda, K and Beppu, T. Establishing the 
independent culture of a strictly symbiotic 
bacterium Symbiobacterium thermophilum from 
its supporting Bacillus strain. Biosci Biotechnol 
Biochem 63:1083-90, 1999. |  |   
                                  | 2 | 
| Ohno, M, Shiratori, H, Park, M J, Saitoh, 
Y, Kumon, Y, Yamashita, N, Hirata, A, Nishida, 
H, Ueda, K and Beppu, T. Symbiobacterium 
thermophilum gen. nov., sp. nov., a symbiotic 
thermophile that depends on co-culture with 
a Bacillus strain for growth. Int J Syst 
Evol Microbiol 50:1829-32, 2000. |  |   
                                  | 3 | 
| Ueda, K, Saka, H, Ishikawa, Y, Kato, T, 
                                    Takeshita, Y, Shiratori, H, Ohno, M, Hosono, 
                                    K, Wada, M and Beppu, T. Development of a 
                                    membrane dialysis bioreactor and its application 
                                    to a large-scale culture of a symbiotic bacterium, 
                                    Symbiobacterium thermophilum. Appl Microbiol 
                                    Biotechnol 60:300-5, 2002. |  |   
                                  | 4 | 
| Ueda, K, Ohno, M, Yamamoto, K, Nara, H, 
                                    Mori, Y, Shimada, M, Hayashi, M, Oida, H, 
                                    Terashima, Y, Nagata, M and Beppu, T. Distribution 
                                    and diversity of symbiotic thermophiles, 
                                    Symbiobacterium thermophilum and related 
                                    bacteria, in natural environments. Appl Environ 
                                    Microbiol 67:3779-84, 2001. |  |   
                                  | 5 | 
| Androutsellis-Theotokis, A, Goldberg, N 
                                    R, Ueda, K, Beppu, T, Beckman, M L, Das, 
                                    S, Javitch, J A and Rudnick, G. Characterization 
                                    of a functional bacterial homologue of sodium-dependent 
                                    neurotransmitter transporters. J Biol Chem 
                                    278:12703-9, 2003. |  |  |  |   
                      |  |   
                      |  |   
                      |  |   
                      |  |   
                      | Copyright 2005 Nihon University 
                        All Rights Reserved. |  |  |  |