<オオミジンコの化学物質暴露に対する雌雄差>

 オオミジンコ(Daphnia magna)は日本では外来種だが、大型で扱いやすく化学物質に対する感受性が他のミジンコ種と比較して高いため、化学物質の環境への影響評価のモデル生物として広く用いられている。オオミジンコは通常メスのみの単為生殖で繁殖する(図1)。しかし、日照時間の短縮や餌密度の減少など生息環境が悪化すると、親は遺伝的に同一のオスを産んで有性生殖し、耐久卵を産出する(図2)。耐久卵は丈夫な殻(鞘)で包まれており、過酷な環境を乗り越え、種を保存するための生存戦略であると言われている。オオミジンコのメスの化学物質に対する感受性についての報告は多数あるが、環境悪化時に出現するオスについての知見は乏しいのが現状である。本研究では、オオミジンコの雌雄差を分子生物学的および環境毒性学的に明らかにすることを目的とている。


図1.ミジンコの単為生殖.通常、オオミジンコは、メスがメス仔虫を産む単為生殖によって増殖する.オオミジンコは、8日齢に初産を迎え、その後3日に1度産仔する.


図2.ミジンコの有性生殖.ミジンコは環境の悪化によりオス仔虫を産仔する.産出されたオスと有性生殖を行うことにより、耐久卵を産出し、環境変化に耐えることが知られている.


図3.オオミジンコの実態顕微鏡写真.上段左:成熟したオス;上段右:雌雄仔虫(左がメス、右がオス);下段左:成熟した雌雄(左がメス、右がオス);下段右:成熟した雌雄(左がオス、右がメス).


 オオミジンコのオスは遺伝的には親と同一でありながら、体長が小さい、大きな第一触角を持つ、また豊富なヘモグロビンを持つため体色は赤いなどメスと大きく異なる(図3)。このことからオオミジンコのオスとメスは、遺伝子の発現部位が大きく異なることが予測される。
 水系食物連鎖の一次消費者として重要な位置を占めるオオミジンコで、環境悪化時に現れるオスについて知見を深めることは、種の保存および環境の保全の観点から重要であると考えられることから、図4のような飼育装置でオオミジンコを飼育し、様々な試験を行っている。


図4.オオミジンコの飼育の様子.大きな水槽に20℃の水を循環させることで水温を一定に保ち、各ビーカにミジンコを収容している.




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