TEACHER

教員紹介

岩佐真宏 教授

INTERVIEW

動物の謎を「発見」し、
その謎を「解明」する。
動物学科には皆さんの知的興味を満たし、 論理的思考力を鍛える学びがあります。

岩佐真宏 教授

動物の「謎」に挑む、唯一の基礎研究系学科

動物学科は、生物資源科学部で唯一、基礎研究を担う理学系の学科です。基礎研究には、直接社会に貢献するという目的や、緊急に解決すべき課題などはありません。動物学科のねらいは、知的好奇心をくすぐる多種多様な動物の「未知の世界の謎」を探究すること自体にあります。今ある教科書や書籍には、これまで明らかになった事実しか書かれていません。むしろ自然界はわからないことばかりです。つまり教科書には書かれていない動物の謎を「発見」し、その謎を「解明」することが私たちの使命といえます。もちろん純粋に「へー、おもしろい!」「こんなこと知らなかった!」という感動に出会えるのも、基礎研究ならではの醍醐味でしょう。こうした成果はいつの日か何らかの形で、大きな発展を遂げる可能性を秘めています。

岩佐真宏 教授

社会人の武器になる、動物学科の論理的思考

基礎研究を学んで役に立つことはあるのか。もちろんあると私は考えています。そもそも大学の学びは、技術や知識を得ることが目的ではありません。本来は、ものの考え方、つまり優れた論理思考を養うことを目的としています。例えば、仕事で前例のないトラブルが発生したとしましょう。社会人なら自分でその原因を見つけ、解決法を立案しなければなりません。そのために必要なのは、既存のマニュアルを読み解く力ではなく、未知の問題を発見し、解決する論理的な思考能力です。これは多くの謎に挑む基礎研究のプロセスでこそ磨かれるものでしょう。動物学科で得た能力は、社会のどんな分野に進んでも役に立つ、人生の宝物になると私は信じています。

岩佐真宏 教授

STAFF教員一覧

動物生理分野

  • 山室裕[神経・行動特性]

    動物の毛色はその性質を想像させます。斑色のオオカミは野生的で狂暴、淡い色のウサギは穏やかで飼い易いなど。しかし、ヒトを含め動物の性格は“脳”で決まります。実は、毛色を決定する遺伝子は脳でも働いています。その関係を明らかにしようとしています。

  • 西村知良[昆虫の生活史]

    昆虫は、厳しい自然の中でも生き残り子孫を増やそうとして、環境にうまく適応し行動しています。その行動のしくみや生態学的意義を明らかにするために、生理学、神経組織学、行動学、生態学などの方法で個体レベルの研究を行っています。

  • 相澤修[エピジェネティクス]

    生後に獲得した能力や性質は基本的に子孫に伝わらないというのが生物学の定説でした。しかし、現在ではその考え方も覆りつつあります。マウスなどのモデル動物を用いて、個体を取り巻く環境要因が子供や孫など次世代に及ぼす影響について研究しています。

  • 園田豊[情報伝達]

    動物の生体機能調節は、様々な組織からの情報によるコミュニケーションで成り立っています。特に内分泌系は成長や繁殖などの生理調節やその維持に重要な役割を果たすため、繁殖活動に伴う内分泌と行動との関係について追究しています。

動物細胞・免疫分野

  • 加野浩一郎[細胞の運命決定]

    動物の体は多種多様な働きをもつ細胞で構成されています。たった一つの受精卵から発生するそれぞれの細胞がどのようなしくみで特殊な働きをもち、組織をつくるのか、組織が損傷すると細胞にどのような変化が起こり、再生するのかについて研究を進めています。

  • 高橋恭子[免疫と腸内細菌]

    腸管には生体最大の免疫システムが存在する一方で、攻撃対象となるはずの非自己である腸内細菌が大量に生息します。この共生関係が成立するしくみを分子・細胞レベルで解明し、アレルギーなど免疫が関わる疾患や炎症をコントロールすることをめざしています。

  • 中西祐輔[腫瘍免疫]

    がん細胞は自分にとって都合のいい環境( 腫瘍微小環境)を構築し、免疫細胞に攻撃されないように様々な細工をしています。そのがん細胞の施す細工の正体を突き止め、再び免疫細胞ががんを攻撃するよう仕向ける方法を開発することをめざしています。

  • 沖嘉尚[生命現象と情報]

    生命科学の進展によって、動物の生命現象に関わる大量の実験データが集められ、巨大なデータベースに日々蓄積されています。それらの膨大なデータをコンピュータで解析し、生命現象を「見える化」することによって、新たな生命現象の発見に挑戦しています。

動物自然史分野

  • 岩佐真宏[「種」とは何か?]

    ネズミ類やモグラ類という、身近だけどあまりよく知らない哺乳類を対象に、分布と地理・地史・環境の関係から進化のプロセスを推定し、併せて形態や生態、ゲノムを調べ、私たちが普段使っている「種」という単位がどういうものなのかを追究しています。

  • 細谷忠嗣[昆虫の動物地理]

    生物地理の境界地域である琉球列島において、コガネムシ上科甲虫の生物多様性の把握、生物地理的なパターンや島の生物相の形成史の解明を目的として、野外での分布・生態調査や実験室での形態比較、DNAによる遺伝的解析を用いて研究を行っています。

  • 中井静子[海岸生物の多様性]

    海岸生物の種組成や個体数を継続的に調査し、大災害が生物群集や絶滅危惧種に与える影響を明らかにしています。またアクアリウムの貝類・無脊椎動物・水草の種組成や生態を調査し、外来種のリストアップと国内や野外への侵入経路の推定を行っています。

  • 明主光[小型哺乳類の進化]

    日本列島における小型哺乳類の進化史がテーマです。日本各地のフィールド調査で標本を収集し、遺伝子・染色体・形態の解析から多様性を理解すること、さらにこの多様性の背景にある進化のプロセスやメカニズムを解明することをめざして研究しています。

動物生態・保全分野

  • 岸田拓士[動物の進化と集団史]

    『地球の歴史は地層に、生物の歴史は染色体に描かれている』遺伝学者・木原均博士の言葉にある通り、生物の歴史は染色体―ゲノムに刻まれています。ゲノム解析や古代DNA解読などを通して、イルカなど羊膜動物の進化や遺伝的多様性の変遷を研究しています。

  • 畠山吉則[動物・昆虫の感染症]

    昆虫も人間と同様にウイルスや細菌などに起因する感染症にかかります。ミツバチなどの益虫を保護するためにも病原微生物の研究は欠かせません。その一方で昆虫に感染する微生物を活用して農業害虫や外来性昆虫の駆除に活用する研究を行っています。

  • 中島啓裕[大型哺乳類の生態]

    大型哺乳類の生態を研究しています。アジアやアフリカの熱帯雨林でフィールド調査を行い、オランウータンやゾウなどの大型動物と植物の関係について調べてきました。最近は、最先端の調査・解析手法を用いた動物の分布・個体数推定にも取り組んでいます。

  • 三谷奈保[野生動物との共存]

    野生動物と人が共存する未来を実現するには、外来種や農林業被害だけでなく、市街地への出没や感染症との関係といった新しい課題もあります。これらを解決するため、フィールドや実験室で野生動物の生態や対策に関する様々な研究を行っています。

  • 金澤朋子[飼育動物の行動生態]

    飼育下の野生動物の観察研究は、出生仔の身心の成長・発達や母子関係の変化、育仔行動など未解明な部分が多い生態情報を知る一助となります。また、適切な飼育環境づくりに必要な、各動物種の生活リズムや外的要因による影響の研究も進めています。