骨の博物館

2022/5/25
★クスノキの秘密

正門と博物館の間に
クスノキの大木があります。
今、クスノキは花期で、枯れ落ちた花が
毎日地表を覆います。
クスノキ

クスノキの花

ある日の朝、多量の枝が落ちていました。
クスノキの落枝

しかし、前日に特に風が強いことは
ありませんでした。
不思議に思い、落ちている枝の基部を見ると、
どれも半球状のなめらかな面が見られました。
クスノキの枝

クスノキ

また枝の途中には、半球状のものが
はまっていたとみられる
受け皿の様な構造がみられました。
クスノキ

これまで、樹木の枝の落とし方など
気にしたことがありませんでしたが、
風など外からの作用ではなく
機械的に枝を落とすことがちょっと驚きでした。

クスノキの様な枝に離層を形成し
枝を落とすことを、専門用語で
「自己剪定」という様です。
このような構造、なぜクスノキにあって
他の樹木にはないのでしょうね。

参考:日本植物生理学会ホームページ
https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=2352


  2022/05/18
★ 北国のウミウ

博物館のウミウ標本は、一つは若鳥、
もう一つは繁殖羽をまとった成鳥です。
ウミウは神奈川県では主に冬鳥で、
既に多くの個体は北国へ渡り、
若い個体はまだ少数みられます。

ウミウ

ウミウの成鳥

幸いウミウの渡る先は、
太平洋側では東北以北の海岸です。
繁殖地での様子も国内で観察することができます。

北海道の知床半島は、ウミウの国内有数の繁殖地です。
自然遺産地域の玄関口にあたる斜里町ウトロには、
オロンコ岩という大岩があり、カモメ類に加えて
5年前からウミウも営巣をしています。
オロンコ岩

岩の上に登ると、
眼下を海鳥が飛び交っています。




ここがウミウのコロニーです。
ヒトや獣の立ち入れない断崖です。
ウミウたちは、頭部に白髪様の羽根と
太ももにポケット様の飾り羽根をつけています。
皆、成鳥です。


各々が営巣場所を決め、
巣材運びや抱卵する個体などがいました。
ウミウは一年を通し、ほとんど鳴きませんが、
日常的に様々な仕草で会話をします。
繁殖期初期には、尾をたて、首を後ろに向け、
翼をぱっぱっと開くディスプレーがみられます。



ウミウは雄が巣材運び、雌が巣づくりをします。


ウミウの抱卵期間は約34日、
雛は約40日で巣立つといわれています。
今後が楽しみです。
※観察は2022年4月25~27日に行いました。


2022/05/11
★土の中で鳴くカエル

三浦半島の谷戸の田んぼでは、
4月から5月に田起し、
くろ塗り、代掻きなどの田植え準備が始まります。
田起しは、「まんのう」という4つ歯の鍬(くわ)で
田の表面の土を雑草ごとひっくり返しますが、
この頃にシュレーゲルアオガエルが鳴き始めます。

鳴いている時、眼を凝らして探しても、
見つけることが出来ません。
このカエルは、土の中で鳴くのです。
反響するのだといわれています。
田起しをしていると、
しばしば土の中から慌てて飛び出してきます。



本種のように緑色をしたカエルには
アマガエルがいますが、
眼から鼻先にかけて黒く太い線が
あるので容易に識別できます。
シュレーゲルアオガエル

種名のシュレーゲルは、
オランダの王立自然史博物館の学芸員です。
江戸時代に来日して鳴滝塾を開いたシーボルトは、
オランダに大量の生物標本を送りました。
シュレーゲルは、館長のテミンクと共に
これらの標本を元に「日本動物誌」の執筆をしました。

生物資源科学部博物館では、
カエルの液浸標本を展示しています。
指先に大きな吸盤を持った近縁の
モリアオガエルもあります。
シュレーゲルアオガエル

モリアオガエルは樹上に泡の巣を作り
産卵することで有名ですが、
本種は土の中泡の巣を作り産卵します。
シュレーゲルアオガエル

形が崩れていますが本来、
土の中にあって球形です。
シュレーゲルアオガエル


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