日本大学生物資源科学部
森林学科 森林生態学研究室
安部 哲人(教授)
森林エコシステム分野
[相互作用と多様性]
地球上の生物は互いに関わり合いながら生きています。植物を中心とした生物間の相互作用を通じて生物多様性の意味を考えます。相互作用による適応度の変化を明らかにし、自然選択の過程を理解することで、森林の生物多様性保全の考え方を身につけます。
経歴
広島大学 総合科学部総合科学科 卒業
2016年04月 - 2022年03月
森林総合研究所、九州支所、 森林生態系研究グループ長を経て
2022年04月より現職
専門
保全生態学
島嶼生態学
絶滅危惧種保全
外来種対策
森林動態、攪乱
植物の繁殖戦略
送粉系
主な担当科目
森林生態学、造林学、森林生態学実習
研究テーマ:外来種対策
海洋島・小笠原では到達した数少ない種が環境に適応して固有の生態系となりました.しかし,競争相手が少ない環境に適応したため,外来種に対して脆弱です.ここで外来種から生態系を保全できれば,世界中どこでも守ることが可能になります.アカギから固有の原生林をどう守るか?グリーンアノールから送粉昆虫をどう守るか?送粉昆虫がいなくなった固有植物はどのように繁殖するのか?ノヤギやクマネズミの食害から固有絶滅危惧植物をどう守るか?更にこうした小笠原での知見を一般化することで,本土で問題になっているタイワンリスやトウネズミモチといった外来種の対策にも応用できます.
研究テーマ:絶滅危惧種保全
絶滅危惧種の多くはもともと個体数が少なかった種が人為的攪乱により絶滅リスクが高まったものです.従って,環境に適応してない種が多く,その保全は一筋縄ではいきません.また,極端に数が少なくなった種は自生地を守るだけでは,それ以上増えません.人工繁殖から個体群復元,生息地復元までを視野に入れた研究・保全対策が必要です.当研究室では人知れず絶滅しそうになっている地味な植物種にも焦点をあて,個体群の現状や生活史を明らかにすることで,保全対策を探ります.
研究テーマ:植物の繁殖戦略
自ら交配相手を探して動くことのできない植物は,様々な繁殖のための手段を進化させてきました.顕花植物は白亜紀には送粉昆虫との共進化により大規模な適応放散が起こったと考えられています.特に雄と雌が別個体である雌雄異株性の進化には仮説が多いものの未だその検証は不十分です.花弁サイズなどの花形質と花粉の持ち出し・持ち込みといった雌雄の適応度パラメータの関係を明らかにして,この問題に迫ります.
研究テーマ:森林動態
森林の動きは普段は実感としてわかりにくいものであり,長期間データを蓄積して初めて明らかになるものです.しかし,攪乱が起こった直後は光環境等の変化に伴い急速に動くことがあります.海洋島・小笠原で侵略的外来樹種の侵入と駆除が進む原生林や新燃岳の2011年噴火跡地といった特徴ある森林において外来種・火山噴火という攪乱後の森林動態を継続観測し,その動態を研究しています.
研究テーマ:演習林の生物多様性
手近な大学演習林においても外来種トウネズミモチや絶滅危惧種のキンラン,全個体毎木調査による森林動態研究に加えて,一般的にあまり注目されない土壌動物相の解明や森林復元のための植栽苗に対するツリーシェルターの効果など,生物多様性保全に寄与する研究を進めています.