日本大学生物資源科学部付属演習林は、森林資源科学科の実習教育と研究フィールドとして全国4ヶ所に設置されています。
北から、亜寒帯の八雲(北海道)、冷温帯の水上(群馬県)、温暖帯の君津(千葉県)、都市環境保全林の藤沢演習林(神奈川県)と、我が国の気候帯分布に沿って全国各地に設けられており、その総面積は2600ヘクタールに達し、私立大学の中でも最大級の規模を誇っています。
各演習林は、地況、気候などの立地条件や植生などが異なるそれぞれの特徴をもっており、これらの立地の特性を活かした基礎的・応用的実験・研究が行われているだけでなく、学生の実験・実習の貴重なフィールドとしても活用されています。
八雲演習林では、広大なエゾマツ・トドマツの針葉樹人工林の育成や広葉樹天然林の保護が行われ、水上演習林では野生動物生態調査、CO2循環などの地球環境の観測、昆虫の分布・分類やブナ原生林の保護の教育・研究が行われています。
また、湘南キャンパス内では、キノコの栽培をはじめ、里山・雑木林の保護の実験が進められています。
八雲は夏季、水上では四季ごとに各種の実習が行われ、学生は自然環境に直接触れる授業に参加することが出来ます。なお、水上には、森林内の観測小屋と天然温泉つきの実習センター・宿泊施設があります。
昭和18年 | 農学部設置 藤沢および北海道長万部演習林設置 |
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昭和22年 | 北海道八雲演習林設置 |
昭和23年 | 水上演習林設置 |
昭和27年 | 農獣医学部創設 |
昭和41年 | 君津小坂沢演習林設置 八雲演習林の大部分を保安林に編入 |
昭和43年 | 君津下ノ原演習林設置 |
昭和45年 | 八雲演習林の分収造林事業開始 |
昭和47年 | 水上演習林実習所完成 |
昭和51年 | 八雲演習林実習所完成 |
昭和53年 | 八雲演習林機械実習室・資材格納庫完成 八雲演習林の団地造林事業開始 |
昭和55年 | 藤沢演習林苗畑を現在の見本園へ移転 |
平成8年 | 農獣医学部を生物資源科学部へ改組 |
平成9年 | 八雲演習林実習所閉鎖 |
平成18年 | 藤沢演習林見本園一部道路建設用地売却 |
北海道八雲演習林は、北海道渡島半島の太平洋海岸に面する八雲町の富咲および山崎地区にあります。同町中央を流れる遊楽部川以北と、その支流のトワルベツ川東部に位置します。傾斜は、全般に西向きの中、急斜面によって占められます。
海抜は、80mから300mに位置し、場所によっては小規模な崩壊地が見られます。地質は硬質泥岩を主としており擬灰岩および砂岩で、八雲層群に属します。土壌は壌土および砂壌土が主であり、深度は浅いのが特徴です。
本演習林面積は2406haであり、昭和22年に徳川氏より購入しましたが、取得後20数年間は、施業計画の実行されないまま放置されたこともありました。この時期に無計画に伐採されたこともあり、荒廃が著しく、度重なる河川の氾濫を引き起こす原因ともなっていました。昭和41年には、保安林に指定され、水源かん養保安林855ha(全林分の36%)、土砂流出防備保安林1284ha(同54%)、合計2140ha(同90%)が制限林に組み込まれ、整備が進められました。
この時期の森林状況は、人工林194ha(全林分の8%)、天然林1747ha(同73%)、無立木地458ha(同19%)となっていましたが、昭和45年より、森林開発公団、森林組合、日本大学の三者による分収造林が開始されました。現在では、本事業や団地造林事業が進められたことにより、大幅な林相の改良が図られ、豊かな森林となっています。
昭和18年の農学部設置にあたり、農学科および林学科共通の付帯施設として寒冷地実習牧場および実習林として長万部町から購入したものです。演習林として約45ヘクタールを所有していますが実習林の8ヘクタールにトドマツを植栽し、残り箇所には亜寒帯広葉樹林の造成が進められています
本演習林は、上越国境を代表する谷川岳の東に位置し高平山(標高985m)を中心に、その山腹に広がる面積158ヘクタールに及びます。標高は650mから985mの間で、地形は変化に富んでいて地勢は急峻です。この地域の気候は年平均気温10度程度であり、年降水量は1600mmに達します。日本海側気候の様相を呈し、夏季には良く晴れますが、雷雨の発生しやすい地域です。
植生は落葉広葉樹林が主体ですが、暖温帯気候にも近く、その中間温帯林のコナラ・クリと、冷温帯を代表するブナ・ミズナラが混在して出現しています。この様な特殊環境下に位置することから、森林生態学上興味深く貴重な演習林といえます。
君津演習林は千葉県君津市に位置し、久留里駅から南西4kmのところに下ノ原演習林14ヘクタールがあり、さらに南側に小坂沢演習林22ヘクタールがあります。
本演習林は、年平均気温14.6度で、暖かい地域に分布する暖帯林に属します。下ノ原演習林は、比較的緩傾斜にあり、スギ、ヒノキの人工造林とコナラ、クヌギ林に竹林を残し、天然林はカシ、ナラその他照葉樹林で構成されています。
小坂沢演習林は、房総山系に属する大塚山(標高279m)の北側に位置し急峻な地形で、平坦地はありません。本地区には造林木はほとんどなく、カシ、ナラを主体とする天然林で占められています。
演習林に関する宿泊施設等はなく、利用頻度はあまり高くありませんが、湘南キャンパスから比較的近くに位置しますので、今後の活用が望まれます。
藤沢演習林は小面積ですが、キャンパスの外周部に当たる箇所に位置し、大学における教育研究に身近な演習林といえます。学生が森林になじめるよう、樹木見本園を設置し、多くの学生が利用しています。演習林内には、クヌギ、コナラを主とする広葉樹林をはじめ、クリ、エゴノキ、ムクノキ、エノキなどが混在し、林床にはアズマネザサのほかに、アラカシ、シラカシなども生育しています。この他にも、クロマツ林、ヒノキ林を所有し、都市近郊林としての機能を発揮しています。本演習林の歴史は古く、地域住民による燃料採取林として繰り返し利用されれてきましたが時代と共に変化してきた里山とも呼べます。