演習林情報

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水上演習林観察日誌


水上演習林観察日誌28

 今年の降雪は早く12月6日から根雪になり、その後降雪も続き例年を超える積雪になりました。今回は冬季の樹木観察方法と平成26年度の自動撮影カメラの結果を報告します。

冬季の樹木観察7

 冬季の樹木識別として冬芽は判別材料の主役になります。今回から冬芽に注目してみます。

冬芽の名称

 冬芽は葉の変形した魚の鱗状の芽鱗に包まれている鱗芽(りんが)と芽鱗に保護されていない裸芽(らが)に分けることができます。また冬芽は葉になるものだけでなく、花になる冬芽もあります。葉になる冬芽を葉芽(ようが)、花になる冬芽を花芽(かが)と言い、花芽の方が丸くて大きい形をしています。さらに混芽(こんが)と言って葉と花の両方が入っている冬芽もあります。冬芽は鱗芽が多く、鱗芽の形態よる分類は難しいので冬芽図鑑に任せるとして、ここでは特徴のある冬芽を紹介します。

1.革質の鱗芽
 革質の芽鱗に包まれている樹種としてホオノキ・タムシバの葉芽等を挙げることができます。

2.毛皮状の鱗芽
 毛皮状の芽鱗に包まれている樹種としてタムシバの花芽等を挙げることができます。

ホオノキ
ホオノキ
タムシバの葉芽(左)と花芽
タムシバの葉芽(左)と花芽
3.裸芽
 芽鱗に包まれていない裸の芽を付ける樹種として葉芽はオニグルミ・ムラサキシキブ・クサギ・ムシカリ・ヤマウルシ・ハクウンボク等、花芽はクマシデ属を除くカバノキ科の雄花序・ヤマハンノキ雌花序等を挙げることができます。数が限られるので慣れてくると樹種が判別できるようになってきます。

オニグルミ
オニグルミ
ムラサキシキブ
ムラサキシキブ
 クマシデ属を除くカバノキ科は筒状の特徴的な雄花序の冬芽(裸芽)を付けます。樹種は特定できませんがカバノキ科の樹種と言うことが分かります。
シラカンバ雄花序(裸芽)
シラカンバ雄花序(裸芽)
ツノハシバミ雄花序(裸芽)
ツノハシバミ雄花序(裸芽)
4.葉・雌花序・雄花序の冬芽を付ける樹種
 ヤマハンノキは葉芽・雌花序の花芽・雄花序の花芽の全てを付ける樹種です。このような樹種はカバノキ科ハンノキ亜属の樹種が当てはまります。

冬芽全体
冬芽全体
葉芽(鱗芽)
葉芽(鱗芽)
雌花序の冬芽(裸芽) 
雌花序の冬芽(裸芽) 
雄花序の冬芽(裸芽)
雄花序の冬芽(裸芽)
5.裸芽になりやすい樹種
 芽鱗が剥がれ裸芽になりやすい樹種としてリョウブ・サワグルミ・マルバマンサク・エゾアジサイ等を挙げることができます。 リョウブはナポレオンの帽子のような芽鱗を付けます。

リョウブ(鱗芽)
リョウブ(鱗芽)
リョウブ(裸芽)
リョウブ(裸芽)
サワグルミ(鱗芽)
サワグルミ(鱗芽)
サワグルミ(裸芽)
サワグルミ(裸芽)
6.花芽が目立つ樹種
 花の冬芽に特徴があって目立つ樹種としてキブシ・ムシカリ・キリ・ニワトコ等を挙げることができます。 キブシの花芽はたくさん集まってふさ状になってぶら下がります。 ムシカリの花芽はしばしば葉芽(裸芽)を伴ってウサギ又はネコの頭のように見えます。

キブシ(ふさ状)
キブシ(ふさ状)
ムシカリ(ウサギの頭・葉裸芽)
ムシカリ(ウサギの頭・葉裸芽)
 キリの花芽は僧侶が持っている錫杖(しゃくじょう)の頭部又はシャンデリアのようにたくさん集まってつきます。 ニワトコはしばしば葉芽と混芽が対生につきます。
キリ(錫杖の頭) 
キリ(錫杖の頭) 
ニワトコ(左が混芽)
ニワトコ(左が混芽)
7.冬芽の形・色が目立つ樹種
 冬芽の形や色に特徴のある樹種としてトチノキ・フジキ・ヌルデ・ミズキ等を挙げることができます。 トチノキは寒さや乾燥・虫害から守るためベトベトした樹脂で冬芽を覆っています。 フジキは白い膜質の袋で覆われています。

トチノキ(樹脂で保護)
トチノキ(樹脂で保護)
フジキ(白い膜質の袋)
フジキ(白い膜質の袋)
 ヌルデは黄褐色の軟毛で覆われています。 ミズキは光沢のある濃紅紫色の冬芽をつけます。
ヌルデ(黄褐色の軟毛)
ヌルデ(黄褐色の軟毛)
ミズキ(濃紅紫色の光沢)
ミズキ(濃紅紫色の光沢)

自動撮影カメラ

 平成26年度は5月7日から12月10日まで自動撮影カメラを設置しました。この間に写った動物は哺乳類15種アカネズミ・コウモリsp・トウホクノウサギ・ニホンアナグマ・ニホンイノシシ・ニホンカモシカ・ニホンザル・ニホンツキノワグマ・ニホンリス・ハクビシン・ホンシュウジカ・ホンドイタチ・ホンドキツネ・ホンドタヌキ・ホンドテン、鳥類12種アカゲラ・カケス・キジバト・クロジ・クロツグミ・サシバ・シロハラ・トラツグミ・ビンズイ・フクロウ・マミチャジナイ・ヤマドリを数えました。
 今年度は10月にニホンツキノワグマがコナラ・ミズナラのどんぐりを頻繁に食べに来たようで、写った回数が急激に増えました。コナラ・ミズナラのどんぐりは不作と言われていましたが、演習林では豊作でした。カメラに興味を持ちイタズラをされました。その他の傾向としてニホンイノシシとホンシュウジカの写った回数が増えてきました。

ニホンツキノワグマ鼻
ニホンツキノワグマ鼻
ニホンツキノワグマまつげ
ニホンツキノワグマまつげ
ニホンツキノワグマ親子
ニホンツキノワグマ親子
ニホンツキノワグマ親子
ニホンツキノワグマ親子
ホンシュウジカ雄
ホンシュウジカ雄
ホンシュウジカ雌親子
ホンシュウジカ雌親子
ニホンイノシシ
ニホンイノシシ
ニホンイノシシ泥浴び
ニホンイノシシ泥浴び

(2015年2月)