日本大学生物資源科学部

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FACULTY
2014.12.18

FACE OF FACULTY

本学部の教員には、それぞれの専門分野に対する深い造詣やユニークな研究テーマを持ち、かつその分野にとらわれない幅広い活動を展開しています。ここではそうした教員の研究や活動などのエピソードについて紹介。彼らの素顔も垣間見られるかもしれません。そして私たちの身近なところにも教員たちの成果が息づいているかも。

食と農と人をつなぐ TOKUYA KAWATE

profile

日本大学生物資源科学部食品ビジネス学科教授。1960年生まれ。東京大学文学部第4類行動学・社会学専攻課程卒業。博士(農学)。1985年農林水産省入省。東北農業試験場主任研究官、農研機構東北農業研究センター研究室長など歴任。2005年日本大学生物資源科学部助教授に就任。2011年から現職。専門は農村社会学。食と農と環境を守る国際的な市民運動であるスローフードの国内組織であるスローフードジャパンの「味の箱船」学術委員会で委員長も務める。

食品ビジネス学科 教授
川手 督也

 私たちの生活の中で、「食」と「農」のつながりが見えにくくなっています。ふだん食卓に並ぶ食材が、どこで、誰によって作られ、どこで加工され、どういった流通経路をたどり、最終的に私たちの口に入るのか。それを意識している人は少なく、そこから派生する問題に危機感を抱く人もほとんどいないのではないでしょうか。
 食品ビジネス学科の川手督也教授は、そうした「食」と「農」の関係について、社会学的見地から研究を進めています。研究のキーワードの一つが「フードシステム」。これは、農産物や水産物が生産され、流通し、加工され、消費されるまでの一連の仕組みや流れを指します。

「現代社会では、フードシステムが経済性・効率性重視になりすぎています。それが原因となり、食に関するさまざまな問題が生じています。そうした問題を解決していくためには、フードシステムを変革していく必要があります」

 今、日本では、世界中の多種多様な食べ物を、季節を問わずいつでも食べられます。それは、フードシステムの経済性や効率性が高められた結果です。しかし、それが行き過ぎた結果、食や農の画一化が起きているという現状があります。生産性や経済性のよい品種を大量に生産して加工し、流通にのせる。それがもっとも効率的で無駄のないフードシステムだからです。
 行き過ぎた経済性・効率性追求を改め、画一化を防ぐにはどうしたらいいのでしょうか。川手教授は、消費者に本当の意味で生産者の顔が見えるようにするべきと考えます。

「たとえば、農的な暮らしを都市生活に取り込むようにしてはどうでしょうか。具体的には、市民農園やベランダのプランターでの野菜の栽培などがあげられますが、“ホームファーマー”をつくるというのがお薦めです。すなわち、農家が、ホームドクターのように、都市に住む一人ひとりの“かかりつけ農家”になるのです」

 ここで川手教授が強調するのは、「生身」の農家と直接触れ合うことの大切さです。生産者や生産地の情報は、インターネットなどで得ることもできます。スーパーの生鮮食品売り場などには、商品に添えてあるバーコードを携帯電話で読み取ることで、食品の生産履歴、さらには生産者の写真やプロフィールなどが表示される仕組みになっているところもあります。
 しかし、こうした情報があまりにも豊富であり、その一方で農や食に関する基本的な知識や経験がないため、かえってそれを理解するのが難しくなっている、と川手教授は指摘します。ホームファーマーをつくることなどにより、生身の農家と直につながることで、農や食に関する基本的な知識を自然と学び、実感を通した、よりリアルな情報が得られるのです。

学生とともに一坪農園で作物を育てる

 川手教授は、学生たちにも生身の農家とつながる機会を与えています。

「私の担当するゼミでは、一坪農園で種から野菜などを育てて、それを収穫して食べるという取り組みを行っています」

 「一坪農園」というのは、同ゼミが本学部の敷地内に借りた小さな畑です。そこでトマトやサツマイモ、エゴマ、スイカなどを育て、収穫した作物は自分たちで調理して食べます。ちなみに、この活動を行う7人の学生たちに川手教授を加えた8人のチームは、自分たちを“畑”の頭文字を取った「HTK8」と呼んでいます。

「農水省の研究所から本学部に来て10年になろうとしています。その間、学生と触れ合うなかで、もっと農業や食について自分が考えていることを学生に伝えなくてはいけないと思うようになりました。そのための方法として辿り着いたのが、学生たちにリアルな体験を積み重ねてもらうことです。そうした体験を通じて、学生には、フードシステムの“川上”にあたる生産の現場と、そこで働く“人”を知ってほしいと思っています」
生物多様性を高める「スローフード」

 川手教授は、農林水産省に在籍した頃、「スローフード」のムーブメントに出会います。スローフードとは、イタリア発祥の食と農と環境を守る国際的な市民運動です。画一化した食である「ファストフード」への危機感から食文化を見直すことを概念として「スローフード」を掲げています。その理念に基づく活動の主なものの一つとして、地域の食文化の核となる家畜や作物の在来種やその加工品にもかかわらず消滅の危機にあるものをリストアップし、守り育む取り組みがあります。
 例えば、日本には100品種を大きく越える在来種のダイコンが存在します。ところが近年、経済効率を優先するため、青首ダイコンへの画一化が急速に進んでいます。青首ダイコンは茎に近い部分が地上に出ているため収穫しやすい。また肥料をやればやるほど大きく育つ、輸送性がよいなどの特長があるからです。そのあおりを受け、地域の食文化の基礎をなす多くの在来種が絶滅の危機に瀕しています。

「いま世界的な課題といえる『生物多様性』をめぐる議論は野生種が中心です。しかし、最も身近な生き物である家畜や作物の生物多様性も、ものすごい勢いで失われているのです。さらにそれに伴い、“味”の多様性も失われています」

 川手教授は、スローフードの活動ともかかわりを持ちながら、農と食の多様性を守るための学際的な研究を進めています。そして、一般にも、この問題の存在をもっと知ってもらいたいと話します。

「まずは、多くの人がこうした問題意識を共有すべきだと思います。研究や、学生への教育を通じて、この問題を社会に広く伝えていくのも、私の使命だと思っています」
  • 川手教授が主宰する「産業社会学研究室」の一坪農園。畑をデザインするところから学生たち自身で行っている。

    川手教授が主宰する「産業社会学研究室」の一坪農園。畑をデザインするところから学生たち自身で行っている。

  • 日本在来種のダイコンの一部。日本には実に様々な色や形の異なるものがあるが、今日ではほとんどは私たちの口に入ることはない。

    日本在来種のダイコンの一部。
    日本には実に様々な色や形の異なるものがあるが、今日ではほとんどは私たちの口に入ることはない。

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